著者
木村 敏之 樽 創 蔡 政修
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.37-45, 2023-09-30 (Released:2023-10-09)

This study describes a previously undescribed fossil physeterid from the Pleistocene of Tokyo. This fossil physeterid was recovered from the Early Pleistocene, Fukushima Formation (ca. 1.60‒1.77 Ma), Kazusa Group in 1971 and has long been known as “Hino Kujira” without detailed descriptions. The specimen consists of fragments of the left maxilla, and we estimate the original size of the maxilla can reach at least 3 m long, suggesting an individual at least 11.5 m long. The maxilla is dorsoventrally thick (eroded, but at least 188 mm), and such a thick maxilla clearly differs from that of mysticetes but is similar to that of the modern sperm whale, Physeter macrocephalus. In addition, the average size of each pore on the spongy bone under the compact bone layer is prominent (10 to 15 mm in diameter), consistent with the macroporous structure of the maxilla of modern Physeter macrocephalus. We then provisionally make the taxonomic assignment of this Pleistocene specimen as Physeter sp. Besides, we review seventy-three documented fossil cetaceans from the Pleistocene of Japan, suggesting that the known paleodiversity of the Japanese Pleistocene cetaceans (12 genera) is much lower than that of modern composition (26 genera). This evident discrepancy likely results from the research effort that currently only produces an inadequately known fossil record of cetaceans.
著者
鷲見 みゆき 大泉 宏 三井 翔太 崎山 直夫 鈴木 聡 樽 創
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-7, 2023-11-20 (Released:2023-11-30)

スジイルカStenella coeruleoalbaは,世界中の熱帯から温帯の海域にかけて広く分布するハクジラ亜目に属する小型鯨類である.本研究では,本種の食性解明のための基礎的知見を得ることを目的として,2019年1月から2021年5月までに相模湾の神奈川県沿岸に漂着した10個体の胃内容物を調査した.その結果,6個体の胃から頭足類(カギイカ,ホタルイカモドキなど5科3種)の顎板,魚類(ハダカイワシ,オオクチイワシなど2科3種)の耳石が確認された.魚類・頭足類ともに日周鉛直移動を行う中・深層性の種が主体であったことから,漂着したスジイルカ6個体が索餌のため中・深層まで潜水したか,或いは夜間に表層へ浮上した小型遊泳動物を採餌していたことが示唆された.
著者
中島 礼 伊藤 光弘 兼子 尚知 樽 創 利光 誠一 中澤 努 磯部 一洋
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.225-230, 2004-06-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

茨城県つくば市東部を流れる花室川の中流域から,<i>Palaeoloxodon naumanni</i> (Makiyama)の臼歯が発見された.産出層準は,最上部更新統である桜川段丘堆積物に相当する緩斜面堆積物で,約2.7万年前より新しい年代を示す.歯種は左上顎第3大臼歯であり,歯冠長は331mm,咬板数は1/2・22・1/2と,これまでに報告された臼歯の中でも大型であり,特に咬板数は最大であることがわかった.この標本の産出は,<i>P.naumanni</i>の時代的な形態変異を明らかにする上で重要である.
著者
岡崎 浩子 兼子 尚知 平山 廉 伊左治 鎭司 加藤 久佳 樽 創 高桑 祐司 百原 新 鵜飼 宏明
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.359-366, 2004-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
27
被引用文献数
10 12

調査地点は千葉県袖ヶ浦市吉野田で,中部更新統下総層群清川層の露頭である.最近,調査地点において,シカ,カメ,ナウマンゾウなど多数の陸生脊椎動物化石や淡水生貝類化石および植物化石などが発見された.これらの化石を含む地層は河川の氾濫原堆積相(厚さ約1m)で,大きく分けて下位よりA,B,Cの3つの堆積ユニットが認められる.ユニットAは植物片を多く含む塊状粗粒シルト層からなる.ユニットBは淘汰の悪い泥質砂層からなり,木片や陸生脊椎動物の骨片・歯が密集する.この泥質砂層には砂層がレンズ状に複数挾まれ,平行層理や級化層理,粗粒デューンなどが認められる.ユニットCの下部は塊状シルト層で,上部はシルト層と極細粒~細粒砂層との砂泥互層からなる.このユニット中には,原地性を示すカメ化石や淡水生貝類化石などがみられる.これらの堆積相と化石群から,ユニットA~Bは河川の増水時に氾濫原に侵入してきた洪水堆積物で,自然堤防や堤防決壊堆積(クレバススプレイ)などを形成していたと考えられる.ユニットCは,その後,氾濫原に形成された湖沼の泥底とそこに氾濫時に流入した砂層の堆積物より構成される.