著者
中島 礼 伊藤 光弘 兼子 尚知 樽 創 利光 誠一 中澤 努 磯部 一洋
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.225-230, 2004-06-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

茨城県つくば市東部を流れる花室川の中流域から,<i>Palaeoloxodon naumanni</i> (Makiyama)の臼歯が発見された.産出層準は,最上部更新統である桜川段丘堆積物に相当する緩斜面堆積物で,約2.7万年前より新しい年代を示す.歯種は左上顎第3大臼歯であり,歯冠長は331mm,咬板数は1/2・22・1/2と,これまでに報告された臼歯の中でも大型であり,特に咬板数は最大であることがわかった.この標本の産出は,<i>P.naumanni</i>の時代的な形態変異を明らかにする上で重要である.
著者
岡崎 浩子 兼子 尚知 平山 廉 伊左治 鎭司 加藤 久佳 樽 創 高桑 祐司 百原 新 鵜飼 宏明
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.359-366, 2004-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
27
被引用文献数
10 12

調査地点は千葉県袖ヶ浦市吉野田で,中部更新統下総層群清川層の露頭である.最近,調査地点において,シカ,カメ,ナウマンゾウなど多数の陸生脊椎動物化石や淡水生貝類化石および植物化石などが発見された.これらの化石を含む地層は河川の氾濫原堆積相(厚さ約1m)で,大きく分けて下位よりA,B,Cの3つの堆積ユニットが認められる.ユニットAは植物片を多く含む塊状粗粒シルト層からなる.ユニットBは淘汰の悪い泥質砂層からなり,木片や陸生脊椎動物の骨片・歯が密集する.この泥質砂層には砂層がレンズ状に複数挾まれ,平行層理や級化層理,粗粒デューンなどが認められる.ユニットCの下部は塊状シルト層で,上部はシルト層と極細粒~細粒砂層との砂泥互層からなる.このユニット中には,原地性を示すカメ化石や淡水生貝類化石などがみられる.これらの堆積相と化石群から,ユニットA~Bは河川の増水時に氾濫原に侵入してきた洪水堆積物で,自然堤防や堤防決壊堆積(クレバススプレイ)などを形成していたと考えられる.ユニットCは,その後,氾濫原に形成された湖沼の泥底とそこに氾濫時に流入した砂層の堆積物より構成される.
著者
町山 栄章 兼子 尚知 石村 豊穂
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

時代的・空間的に広範な分布を示すコケムシについて、海洋環境指標として利活用できるか否か、その検証を行った。MART指標(群体を形成するコケムシの個虫サイズが水温と逆相関の関係にあることを利用して、群体が成長した期間における海水温の平均年較差を算出する)の検証の結果、個虫サイズと平均水温の年較差との関連が実証された。また、対象としたコケムシ骨格の酸素同位体比が平均水温変化と調和していることから、コケムシ骨格は古海洋環境復元指標として有用であると結論づけられる。