著者
森本 元 高橋 佑磨 鶴井 香織
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.39-46, 2015-03-30 (Released:2017-05-20)
参考文献数
44
被引用文献数
2

クラインは、生物の形質の進化や適応のメカニズムを検討可能な興味深い現象である。この現象には古くから多くの進化学者・生態学者が魅了され、さまざまな経験的一般則が発見されてきた。量的形質である体サイズや体重のクラインを扱ったベルクマンの法則は、その代表例である。ただし、これらの法則は、優れた視点を有すると同時に、その定義に曖昧な部分も多い。クラインとは空間的なパターンのことであるが、それを生み出すメカニズムは一つではない。それゆえ、観察された現象へ与えられる名称と、その現象を説明するメカニズムは、区別して扱われるべきである。しかしながら、現状ではこの点について混乱もある。ベルクマンの法則の適用範囲が拡大していく中で、アレンの法則や温度-サイズ則といった温度勾配を背景とした法則とベルクマンの法則との関連性および相違点を改めて確認し、整合性を与える必要も生じている。そのためには、量的形質のクラインが地理的な環境要因の勾配に応じた可塑的応答と、量的遺伝を基盤とした適応進化の地理的差異によって構成されることを再確認することが第一歩となる。本稿では、量的形質のクラインにおける基礎的な考えと量的形質のクラインに関する法則の問題点を整理することで、マクロな視点から生物の一般則を導く「クライン研究」がさらなる進展をするための基盤整備を目指す。
著者
岩谷 靖 鶴井 香織 本間 淳
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.2P2-E02, 2019

<p>The authors have proposed a new type of endless flat surface systems, since existing endless surface systems have slops and/or gaps on their surfaces. In the proposed system, tensile cloths are stitched to form a sphere. Spreading the sphere makes a flat surface. Its form is fixed by omni-wheels configured in the stitched cloth. The flat surface is controlled by omni-wheels that are outside of the stitched cloth. This paper presents the driving mechanism of the proposed system.</p>
著者
照屋 清仁 大石 毅 鶴井 香織
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.32-35, 2017

<p>Prevention or reduction of infection by the neogregarine parasite <i>Farinocystis</i> sp. is indispensable for effective mass-production of the West Indian sweet potato weevil <i>Euscepes postfasciatus</i>(Fairmaire). The established method of weevil collection, coercively drawing weevils from the larval rearing cage, was suspected to increase the risk of breaking infected individuals, which causes horizontal transmission of the parasite to uninfected individuals. Here, we developed a novel collection method in which the weevils were permitted to spontaneously leave the larval rearing cage. The significant decrease in infection rate and the significant increase in the fecundity of weevils collected by the novel method suggested that this method may improve the mass-production of weevils.</p>
著者
鶴井 香織 高橋 佑磨 森本 元
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.33-37, 2015-03-30

クラインとは、連続した生息地において量的形質や対立遺伝子頻度が示す空間的に滑らかな地理的変化をさし、測定可能な変異の勾配として観察される。クラインは、古くから数多くの生物において報告されてきた身近で関心の高い現象である。生態学や進化学では、注目している形質が示すクラインを利用し、その変異の時空間的変化を調べることで形質の適応進化の因果やプロセスを明らかにしてきた。ベルクマンの法則の発見をはじめとする種間・種内で認められる形質の地理的変異に関する数々の研究成果は、クラインの重要性を象徴している。しかし、数多くのクライン研究成果の基礎をなす「クラインそのものに対する理解」はいまだ混沌としており、クライン研究は脆弱な基盤によった砂上の楼閣といえる。その背景には、クラインを形成する「測定可能な性質」が異なるクラインに対する認識および解釈の混乱などが挙げられる。本稿では、クライン研究の体系的枠組み構築のため「質的クライン」と「量的クライン」という分類方法を提案する。