著者
麻生 奈央子 坂元 章 沼崎 誠
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.156-170, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
25

本研究は,ロマンティック幻想(romantic fantasy:RF)の潜在測度と顕在測度の乖離について検討した。大学の女子学部学生65名(研究1)と73名(研究2)が参加し,IATで潜在RF(恋人と王子様の連合),質問紙で顕在RF(自分の恋人と王子様の連合)と理想RF(理想の恋人と王子様の連合)を測定した。その結果,(a)潜在RFは,顕在RFと有意に相関せず,理想RFと有意に正相関した。(b)潜在RFと理想RFは間接的勢力志向と有意に正相関する一方,顕在RFはそれに負相関した。(c)顕在RFは社会的望ましさと相関しなかった。これらのことから,(a)潜在RFにおいて評価されている対象は,実在する自分の恋人よりも,理想の恋人に近いこと,(b)RFの潜在・顕在測度の乖離は,顕在測度の妥当性の問題よりも,測定概念の相違に起因することなどが示唆された。
著者
麻生 奈央子 坂元 章 沼崎 誠
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.156-170, 2015

本研究は,ロマンティック幻想(romantic fantasy:RF)の潜在測度と顕在測度の乖離について検討した。大学の女子学部学生65名(研究1)と73名(研究2)が参加し,IATで潜在RF(恋人と王子様の連合),質問紙で顕在RF(自分の恋人と王子様の連合)と理想RF(理想の恋人と王子様の連合)を測定した。その結果,(a)潜在RFは,顕在RFと有意に相関せず,理想RFと有意に正相関した。(b)潜在RFと理想RFは間接的勢力志向と有意に正相関する一方,顕在RFはそれに負相関した。(c)顕在RFは社会的望ましさと相関しなかった。これらのことから,(a)潜在RFにおいて評価されている対象は,実在する自分の恋人よりも,理想の恋人に近いこと,(b)RFの潜在・顕在測度の乖離は,顕在測度の妥当性の問題よりも,測定概念の相違に起因することなどが示唆された。
著者
沼崎 誠 天野 陽一 高林 久美子 石井 国雄 麻生 奈央子 佐々木 香織 長田 眞由子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ステレオタイプと偏見の機能-特にシステム正当化機能-と自己ステレオタイプ化に注目して,ジェンダー・システムの再生産過程における,ジェンダー・ステレオタイプと性役割的偏見の役割について実証的研究を行った.システム正当化機能に関しては現システムへの脅威や死すべき運命や異性愛が顕現化した状況で,自我正当化機能に関しては自尊心への脅威状況で,集団正当化機能に関しては特定の自己表象が活性化した状況で,ステレオタイプ化や偏見が強まることを見いだした.ジェンダー・システムを再生産の観点からこれら結果について考察した.
著者
中村 真由美 三輪 哲 三輪 哲 朝岡 誠 麻生 奈央子 田中 規子 松田 松田
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

法曹と医師のワーク・ライフ・バランスとキャリア形成のジェンダー問格差の状況を明らかにするために複数の調査を実施した。法曹に対しては、日本女性法律家協会と日本弁護士連合会からのご協力をいただき、男女法曹を対象とした郵送質問紙調査を実施し(回収率30%、回収数1874票)、計量的分析を行った。医師に対しては、複数の大学関係者にご協力をいただき、インタビュー調査(および、パイロット的な位置づけの小規模な質問紙調査)を実施し、質的分析を中心に行った。分析結果は、冊子体の成果報告書(『医療・法曹職女性の研究』)として出版されている。本報告書には、7つの論文が収められているが、そのうち6つの論文で、法曹に対する調査結果の計量的分析を行い、男女法曹のキャリア形成と家庭役割におけるジェンダー間格差について様々な角度から検証した。また、1つの論文では、医師に対するインタビュー調査の結果に某づき、女性医師のキャリア形成と家庭役割の状況について質的分析を行っている。法曹(主に弁護士)に関しては、キャリア移動パターン、入職経路と地位達成、専門分野選択、育児休業やその他支援策と出産経験、辞めたくなった経験と性差別体験、家事時間の規定要因などの多くの側面から、法曹がおかれている状況やジェンダー問格差の現況を明らかにした。法曹(弁護士)のジェンダー間格差については、以下のことが明らかになった。(1) 入職経路と地位達成の関係では、学校関係のネットワークによる入職が男性には有利に働くのに女性には有利に働かないこと、しかし、親や配偶者等の血縁を通じて入職した女性は例外的に有利な状況にあること(2) 専門分野では、女性は個人を対象とした、所得の比較的低い領域(親族問題など)に集まる傾向が、男性は企業を対象とした、所得の比較的高い領域(会社法など)に集まる傾向があるが、渉外や工業所有権という一部の企業関連領域では女性が多いこと、(3) 辞めたくなった経験では、女性弁護士の方が男性弁護士よりはるかに多く、それは業務内容や仕事の配分における性差別が関係していること、(4) 家事・育児については、男性弁護士より、女性弁護士の負担がはるかに大きく、男性弁護士の家事時間は、年齢や収入といった要因の影響をほとんど受けていないのに対し、女性弁護士の場合は、未既婚の別、子供の有無や人数など、ライフスタイルや家庭環境によって、家事時間の割合が変化することなどがわかった。また、事務所に育児支援策があることが、女性弁護士の出産にプラスに働く可能性があることや、女性の法曹三者のキャリア移動パターンは、弁護と検事・判事で大きく異なること等も明らかになった。医師に関しては、女性医師の専門分野や働き方を偏らせるのは、女性医師本人の性役割観による選好や、卜司・患者の偏見からの差別からというよりは、誘因の差異あるいは構造的・制度的要因が幸な原因となっている可能性が高く、適切な制度設計で問題は改善可能であることがわかった。なお、法曹と医師の計量比較分析に関しては、21年度以降に医師についての質問紙調査を実施予定であり、その結果とあわせて、比較計量分析を行っていく予定である。