著者
磯和 壮太朗 南 学 ISOWA Soutarou MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.179-189, 2015-03-31

本研究は、クリティカルシンキング(以下:クリシン)を教育する立場に立つ場合、まずはクリシンの社会的側面に注目した「社会的クリティカルシンキング」に対する志向性を刺激することが有効なのではないかという立場のもと、より使いやすい社会的クリシン尺度の作成を目指したものである。2つのクラスに対して、27項目で収集したデータを探索的因子分析にかけた結果、5因子解が得られた。この5因子解に基づいて15項目の短縮版を作成後、先の2クラスに対して改めて実施し、信頼性と妥当性の検証を行った。各クラス各時点での下位尺度のα係数は低かったものの、尺度全体でのα係数は0.8を超えており、それなりの内的一貫性を確保していた。また、Times1とTimes2の因子構造を比較するための縦断因子分析、2つのクラス間での因子構造を比較するための多母集団同時分析を行った結果、高い適合度と妥当なパス係数が得られた。予測的妥当性の検証として、実際にTimes1の社会的クリシン志向性がTimes2の社会的クリシン行動を導いているかについて検討した結果、確かにTimes1の社会的クリシン志向性は、社会的クリシン行動を導いており、それは下位因子単位よりも因子全体で影響力を発揮する可能性が示唆された。また、志向性から能力に対する自己認知を統制した結果、それができると思っているかどうかにかかわらず、社会的クリシン志向性は社会的クリシン行動を促している可能性が示唆された。
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.207-213, 2014-03-31

近年青年の「恋愛離れ」が指摘されている一方で、青年の生活満足度は高くなっている。この現象に関して、古市(2011)は、社会的閉塞感から将来に明るい展望が持てないために、「今、ここ」の幸せに満足しているのではないかという仮説を提唱している。本研究では、この仮説を実証的に検証するため、時間的展望体験尺度と価値観を測定し、検討をおこなう。また、併せて恋愛イメージを測定し、それとの関連を検討した。結果は、「現在の充実感」において女性のほうが高く、「自己沈潜的人生観」において恋愛不要群が高かった。また、恋愛イメージに関してクラスタ分析をおこない、それぞれ2群に分けたところ、恋愛不要低群・男性において「希望」が有意に低かった。これらの結果から、一部の男性においてとくに社会的閉塞感の影響が強いことが示唆された。
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.221-227, 2018-01-04

本研究では、現代の若者がもつ幸福観と価値観との関連から現代の「幸せな若者」像(古市,2013)について明らかにすることを目的として検討を行った。結果は、幸福観によって若者を3 群に分けたところ、「現状満足群」のほうが従来の友人関係を維持することを求めることが示されたが、地元志向に関しては有意な差は見られなかった。また「現状満足群」よりもすべてのことを追求する若者像である「全追求群」のほうが、「主観的幸福感」が高く、友人関係においても「表面的友人関係」、「内面的友人関係」に関しては「全追求群」のほうが高かったことが見出された。これらの結果から、古市(2011;2013)が指摘する「幸せな若者」像はすべての若者にあてはまるものではないこと、その「幸せな若者」群の幸福感がとくに高いわけではないことが見出され、古市(2011;2013)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた「幸せな若者」論は実証性に欠けることがあらためて示唆された。
著者
磯和 壮太朗 南 学 ISOWA Soutarou MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
no.66, pp.179-189, 2015-03-31

本研究は、クリティカルシンキング(以下:クリシン)を教育する立場に立つ場合、まずはクリシンの社会的側面に注目した「社会的クリティカルシンキング」に対する志向性を刺激することが有効なのではないかという立場のもと、より使いやすい社会的クリシン尺度の作成を目指したものである。2つのクラスに対して、27項目で収集したデータを探索的因子分析にかけた結果、5因子解が得られた。この5因子解に基づいて15項目の短縮版を作成後、先の2クラスに対して改めて実施し、信頼性と妥当性の検証を行った。各クラス各時点での下位尺度のα係数は低かったものの、尺度全体でのα係数は0.8を超えており、それなりの内的一貫性を確保していた。また、Times1とTimes2の因子構造を比較するための縦断因子分析、2つのクラス間での因子構造を比較するための多母集団同時分析を行った結果、高い適合度と妥当なパス係数が得られた。予測的妥当性の検証として、実際にTimes1の社会的クリシン志向性がTimes2の社会的クリシン行動を導いているかについて検討した結果、確かにTimes1の社会的クリシン志向性は、社会的クリシン行動を導いており、それは下位因子単位よりも因子全体で影響力を発揮する可能性が示唆された。また、志向性から能力に対する自己認知を統制した結果、それができると思っているかどうかにかかわらず、社会的クリシン志向性は社会的クリシン行動を促している可能性が示唆された。
著者
磯和 壮太朗 南 学 ISOWA Soutarou MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.285-295, 2014-03-31

本研究では、①抑うつと考え込み型反応及び認知的統制に関する先行研究の追試を行うこと、②クリティカルシンキング志向性(以下:クリシン志向性)が考え込み型反応及び認知的統制とどのような関係を持っており、どのように抑うつと関わっているのかを検討した。これらを検討することによって、クリティカルシンキング教育(以下:クリシン教育)の新たな意義と、教育を行う際に留意すべき点を見出すことが本研究のねらいである。結果として、先行研究で見出された考え込み型反応及び認知的統制が抑うつに与える影響については、先行研究の結果がほぼ支持された。また、総じてクリシン志向性を高めるよう働きかけることは抑うつを重症化させるというリスクを持っているものではないことが示された。クリシン教育を行う場合は、クリシン志向性の中でもまずは証拠を重視する志向性、偏ることなく思考しようとする志向性、そして、世の中には様々な価値観や捉え方、視点があり、そのことを意識して考える志向性を高めることが効果的であること、自分についてのクリシンは、ひとりきりでは行わずに、友人に相談したり学生相談を利用するなど、信頼できる他者と共に行うことが大切であると伝える必要があると考えられた。
著者
南 学 Minami Manabu
出版者
三重大学教養教育院
雑誌
三重大学教養教育院研究紀要 = Bulletin of the college of liberal arts and sciences, Mie University
巻号頁・発行日
no.4, pp.53-59, 2019-03-30

本研究では、現代の若者がもつ幸福観との関連から生活満足度と協調的幸福感を測定することを目的として検討を行った。結果は、幸福観によって若者を3 群に分けたところ、生活満足度と協調的幸福感において「現状満足群」はほとんどの因子で低く、「全追求群」が高い評価となっていた。これらの結果から、古市(2011;2013)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた解釈は実証的根拠に乏しいことが示唆された。
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.171-178, 2015-03-31

本研究では、現代の若者がもつ幸福観と価値観との関連から現代の「幸せな若者」(古市,2011)について明らかにすることを目的として検討を行った。結果は、「主観的幸福感」と「くつろぎ追求」とは有意な相関が見られず、「将来無関心」とも相関はなかった。また、幸福観によって若者を3群に分けたところ、「幸せな若者」像に近い「現状満足群」よりもすべてのことを追求する若者像である「全追求群」のほうが、「主観的幸福感」が高いことが見出された。これらの結果から、「幸せな若者」像はすべての若者にあてはまるものではないこと、「幸せな若者」の幸福感がとくに高いわけではないことが見出され、古市(2011)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた「幸せな若者」論は実証性に欠けることが示唆された。