著者
黄 國賓 杉浦 康平 赤崎 正一 今村 文彦 荒木 優子 山之内 誠 さくま はな 曽和 英子 Kuo-pin HUANG Kohei SUGIURA Shoichi AKAZAKI Fumihiko IMAMURA Yuko ARAKI Makoto YAMANOUCHI Hana SAKUMA Eiko SOWA
雑誌
芸術工学2014
巻号頁・発行日
2014-11-25

本研究は中国雲南省の麗江地区を基軸に、トンパ文字とその特異な造形、宗教的背景を明らかにし、トンパ文字の構造原理と新たなビジュアル・コミュニケーションツールを開発するための基盤研究を確立する。本研究はトンパ文字の造字原理の考察をはじめ、現地でのフィールドワーク調査、トンパ文字を再デザインする仕組み、また、先例の視覚言語の表現や漢字の構造をも分析の視野にいれ、トンパ文字の表現の可能性について研究を行った。その結果、以下の結論を得た。すなわち、トンパ文字は象形文字であるため判読がしやすく、時間軸、空間軸、動詞などの記号を組み合わせれば、トンパ文字としての視覚言語のシステムを構築する可能性が高いと示唆した。一方、文字としての記述、伝達の機能が欠け、覚えにくいということが最大の欠点であり、漢字の変遷原理を探究すれば、書きやすく、覚えやすいトンパ文字が作られると考えられる。
著者
赤崎 正一 戸田 ツトム 寺門 孝之 橋本 英治 久本 直子 Shoichi AKAZAKI Tztom TODA Takayuki TERAKADO Eiji HASHIMOTO Naoko HISAMOTO
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

出版メディアにおける「絵本」というカテゴリーは、現代のビジュアルデザインの世界に内在する「アナログ」と「デジタル」の製作技法上の乖離・矛盾について検証するのに、両者のバランスが非常によくとれた作業課程を包含している。また同時にデザイン成果物としての「絵本」は、単に「読まれる」ことで完結してしまうのではなく、周辺に「読み聞かせ」や「ライブペインティング」などのパフォーマンス的な実践をともなってダイナミックな共同性(=協働性)の環境を発展させる可能性をふくむ媒体である。本研究においてはビジュアルデザイン学科でこれまで開催された特別講義のうち、飯野和好(絵本作家)・森ゆり子(読み聞かせ活動)・荒井良二(絵本作家)の3 氏による3 回分を講義記録・パフォーマンス実践事例として書籍化・公刊する。またその際に、出版にいたる作業課程そのものが、学内スタッフを中心とした「エディトリアルデザイン」の制作実現の事例となるよう目的化して作業をすすめていく。11 年度年度末には学内版として一旦完成して納本したものを、さらに細部にわたってバージョンアップしたものが左右社を版元として、12 年秋を予定して刊行の予定であり、本報告はその内容にしたがって、構成されたものである。Picture books, as a category of publication media, is produced through a process which involves technical conflicts and contradictions between "analog" and "digital" inherent in today's visual design. At the same time, picture books as products, unlike ordinary books which are "completed" by simply being read, are a medium assumed to entail dynamic collaboration through reading and live painting sessions.The purpose of this course was to compile and publish a book based on three special lectures presented by Department of Visual Design. The speakers of the lectures were Kazuyoshi Iino (a picture book author), Yuriko Mori (a specialist of picture book reading) and Ryoji Arai (a picture book author). The production of this book itself was designed to be a practice case of editorial design by staff.The book was completed and delivered at the end of fiscal 2011 as an in-house publication. The upgrade and expanded version of the book is scheduled to be published by Sayusha in the autumn of 2012. This report is based on this book.
著者
赤崎 正一 戸田 ツトム 寺門 孝之 橋本 英治 荒木 優子 Shoichi AKAZAKI Tztom TODA Takayuki TERAKADO Eiji HASHIMOTO Yuko ARAKI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2011
巻号頁・発行日
2011-11-30

出版メディアにおけるデザイン動向は、広告など他の分野と比較して、実験的先端的な傾向が強い。組版設計をふくむ広義の「ブックデザイン」のそうした傾向には日本語固有の組版システムの複雑さがもたらす、実験的組版の広汎性も要因のひとつと考えられる。事例として2009 年度のビジュアルデザイン学科における3 回の特別講義を取り上げる。それぞれの講師は、絵本作家・イラストレーターの木内達郎氏、アートディレクター・ブックデザイナーのミルキィ・イソベ氏、グラフィックデザイナーの松田行正氏の3 氏である。ブックデザイン・組版デザインに長年携わってこられた、これらの方々の講義には、さまざまな作品紹介を通じて、多様な「ブックデザイン」の実験的試みが含まれている。 ブックデザインの戦後的動向の先端や特異点を構成する3 氏の特別講義はわれわれの研究に大きな示唆をもたらすものである。それら、事例紹介も多く盛り込まれた特別講義を単行本「デザイン・プレゼンテーションの哲学」として編纂・刊行した。そして、この単行本の制作自体がブックデザインやエディトリアルデザイン(組版デザインを含む)の実験的実践なのである。Design in publication media are inclined to be experimental and edgy compared to that in other fields such as advertising. This characteristic of "book design" in the broad sense of term is attributed in part to the prevalence of experimental typesetting caused by the complex typesetting system intrinsic to the Japanese language.This course explored three special lectures presented by Department of Visual Design in fiscal 2009. The speakers of the lectures were Mr. Tatsuro Kiuchi (an illustrator and picture book author), Ms. Milky Isobe (an art director and book designer) and Mr. Yukimasa Matsuda (a graphic designer). In these lectures, the three professionals, who had long been involved in book design and typesetting design, talked about diverse experiments in "book design" through various projects. Their special lectures, discussing the cutting-edges and uniqueness of the post-war book design trends, offered inspiring insights in our study.We compiled and published a book based on the three lectures introducing many cases of experimental book design titled Philosophy of Design Presentation.The production of this book was an experimental practice of book design and editorial design (including typesetting design).
著者
赤崎 正一 戸田 ツトム 寺門 孝之 橋本 英治 Shoichi AKAZAKI Tztom TODA Takayuki TERAKADO Eiji HASHIMOTO
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2010
巻号頁・発行日
2010-11-24

現代アートの表現手法は多様であり、その記録のための「アートブック」も様々な形式がある。また近年、アートの世界では言語表現・文字記号表現を含むものの重要性が増している。したがって従来の画像類の掲載・再現ではすまない記録法が求められている。本研究では考察されることの稀だった文字・組版表現とアートの記録について検証を行う。事例として2008年10月29日、ビジュアルデザイン学科による独自開催特別講義「Art /内藤礼」を取り上げる。その繊細を極めた表現で国際的に活躍している美術科・内藤礼氏は、また寡黙な作家としても知られている。この特別講義は、自らの作品を語ることにきわめて稀な作家自身の言葉の貴重な記録となった。そうした内藤氏の表現の内実に対応した「本」をつくりあげることが本研究の課題であった。2009年12月、それは単行本「内藤礼〈母型〉」として刊行された。戸田ツトム教授の全面デザインによるこの単行本化の作業は、そうした高度なデザイン課題への挑戦でもあり、また現代デザインの隘路たる「デザインの消滅を企図するデザイン」への回答とも位置づけられるものとなった。作家の言葉の背後に広がる深い世界をいかに組版と図版により読者に伝えうるかという、デザインの試行である。As means of expression in contemporary art are diversied, art books as a medium for recording art also take many different styles. On the other hand, linguistic and character expressions have recently become increasingly important in the art scene.In this context, there should be a new means of recording art that goes beyond the simple presentation of graphic images in the conventional art books. This course studied typographic and compositional expression in art books as a medium for recording art.The course focused on exploring "Art / Rei Naito," a special lecture presented by Department of Visual Design on October 29, 2008.Rei Naito is an artist whose refined sensitivity is highly reputed in the world. She is also renowned for being taciturn about her work. The lecture was a very rare opportunity in which the artist talked about her art. The purpose of this course was to make a "book" that reflects the essence of her artistic expression.The book, Naito Rei <Bokei>, was published in December 2009. Designed entirely by Professor Tsutomu Toda, the whole process of making this book was a challenge to an advanced design issue as well as an answer to the "design intended to vanish design," an aporia in contemporary design.
著者
赤崎 正一 戸田 ツトム 寺門 孝之 小山 明 黄 國賓 Shoichi AKAZAKI Tztom TODA Takayuki TERAKADO Akira KOYAMA Kuo-pin HUANG
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2013
巻号頁・発行日
2013-11-25

本研究は杉浦康平名誉教授の1950年代からはじまるデザイン活動の包括的な研究を目指すものである。就中、1970年代~ 80年代の杉浦名誉教授の活動を中心に成立したと思われる「エディトリアルデザイン」概念の成立過程の検証を重点的な目的とする。本研究の基盤をなすものとして2011 年度後半に相次いで開催された「脈動する本」展(武蔵野美術大学美術館)、「メタボリズムの未来都市」展(森美術館)などで明示的になった、1960 年世界デザイン会議を契機に展開した戦後デザインの爆発的な拡張の様相への再認識がある。当時の日本デザイン界全体の沸騰の中にあっても、とりわけて実験的であり続けた、杉浦デザインの現代までにいたる50 ~ 60 年の実践活動の内実を、「エディトリアルデザイン」をキー概念として調査・研究する。以下が研究(平成24年度)の具体的な活動の細目となる。1)杉浦デザインによるポスターの収集(500 ~ 600 種程度)と整理・分析→ 1次リスト完成→さらなる整理継続中。2)杉浦名誉教授による2002年度視覚情報デザイン学科講義映像記録の整理編集→ 1次編集完成→記録映像アーカイブ化のための準備中。3)杉浦名誉教授によるレクチャーをふくむ研究会の開催→ 2度にわたって実施→レクチャー記録整理中。