著者
山本 明 吉田 哲也 安楽 和明 稲葉 進 井森 正敏 上田 郁夫 音羽 真由美 折戸 周治 木村 誠宏 佐貫 智行 鈴木 純一 田中 賢一 西村 純 野崎 光昭 槇田 康博 松永 浩之 松本 浩 元木 正和 矢島 信之 山上 隆正 吉村 浩司 Golden Robert Kimbell Barbara Mitchell Jon Ormes Jonahtan Righter Donald Streitmatter Robert
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.103-119, 1996-03

超伝導マグネット・スペクトロメーターを用いた宇宙粒子線観測・気球実験(Balloon Borne Experiment with a Superconducting Magnetic Rigidity Spectrometer)は,宇宙起源反粒子探索及び宇宙粒子線の精密観測を目的とする日米・国際共同実験として推進されている[1-7]。NASAおよび宇宙科学研究所を相互の代表機関とし,東京大学,高エネルギー物理学研究所,神戸大学,ニューメキシコ州立大学が研究に参加している。日本側グループがスペクトロメーター本体を準備し,アメリカ側グループが気球の飛翔,制御を担当している。この実験計画は,1980年代にNASAを中心に検討されたASTROMAG計画の準備研究に於て,ソレノイド型超伝導マグネット・スペクトロメーターの構想を提案し,基礎開発を行なった事から,その第一段階となる気球実験としてスタートした[8-9]。この実験協力が1987年にスタートして以来6年の準備期間を経て,1993年に第一回の気球飛翔実験に成功した。1994年には第二回,1995年には第三回・気球飛翔実験に成功した。実験は,北磁極に近いカナダ北部のマニトバ州リンレークからアルバーター州ピースリバーにかけて実施され,合計約50時間の科学観測に成功し,実験機器も無事回収されている。これまでにBESS93の気球飛翔実験についてデータ解析を完了し,運動エネルギー500MeV以下の運動エネルギー領域で,反陽子を4イベント検出した[10-12]。この結果は,低エネルギー領域(<500MeV)での初めての明確な宇宙線反陽子の観測として評価を受けている。BESS93&acd;95の総合的なデータ解析からは,途中経過として,運動エネルギー<1.2GeVに於て,合計&acd;50イベントの反陽子候補を検出している。また反ヘリウムの探索については,1993年&acd;1995年のデータを合わせ,従来の観測よりも一桁高い感度での存在上限値(反ヘリウム/ヘリウム比=8×10^<-6>,@95%CL)を得ている[13-15]。実験は,結果が現われ始めた段階であるが,経過と現状を報告する。
著者
山本 明 安部 航 泉 康介 板崎 輝 大宮 英紀 折戸 玲子 熊沢 輝之 坂井 賢一 志風 義明 篠田 遼子 鈴木 純一 高杉 佳幸 竹内 一真 谷崎 圭裕 田中 賢一 谷口 敬 西村 純 野崎 光昭 灰野 禎一 長谷川 雅也 福家 英之 堀越 篤 槙田 康博 松川 陽介 松田 晋弥 松本 賢治 山上 隆正 大和 一洋 吉田 哲也 吉村 浩司 Mitchell John W. Hams Thomas Kim Ki-Chun Lee Moohyung Moiseev Alexander A. Myers Zachary D. Ormes Jonathan F. Sasaki Makoto Seo Eun-Suk Streitmatter Robert E. Thakur Neeharika
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.81-96, 2008-02

本研究は,南極周回超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測(BESS-Polar 実験)を通して,『宇宙起源反粒子,反物質の精密探査』を目的としている.地球磁極領域に降り注ぐ低エネルギー宇宙線に注目し,反陽子スペクトルを精密に測定して,衝突(二次)起源反陽子流束の理解を深めるとともに,『原始ブラックホール(PBH)の蒸発』,『超対称性粒子・ニュートラリーノの対消滅』等,初期宇宙における素粒子現象の痕跡となる『宇宙(一次)起源反粒子』を精密探査する.反ヘリウムの直接探査を通して,宇宙における物質・反物質の存在の非対称性を検証する.同時に陽子,ヘリウム流束を精密に観測し,これまでのカナダでの観測(BESS実験,1993-2002)の結果と合わせて,太陽活動変調とその電荷依存性について系統的に観測し,宇宙線の伝播,相互作用に関する基礎データを提供する.本研究では,これまでのBESS 実験で培われた超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測の経験をもとに,低エネルギー領域での観測感度を高め,南極周回長時間飛翔を可能とする超伝導スペクトロメータを新たに開発した.2004年12月13日,南極(米国,マクマード基地)での観測気球打ち上げ,高度37km での9日間に及ぶ南極周回飛翔に成功し,9億イベントの宇宙線観測データを収集した.運動エネルギー0.1〜1.3GeV の範囲に於いて,これまでの約4倍の統計量でエネルギースペクトルを決定した.結果は,衝突(二次)起源モデルとよく整合し,一次起源反陽子の兆候は観測されていない.太陽活動が極小期にむけた過渡期にあたる2004年の観測として予想に沿った結果を得た.反ヘリウム探索は,これまでのヘリウム観測の総統計量を2倍以上に高め,反ヘリウム/ヘリウム比の上限値を2.7×10^<-7>にまで押し下げた.本報告では,BESS-Polar(2004年)の成果を纏め,次期太陽活動極小期(2007年)における第二回南極周回気球実験計画を述べる.