著者
井上 清子
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.9-16, 2019-03-30

「成人期ADHD 日常生活チェックリストQuestionnaire Adult ADHD with Difficulties(QAD)」の信頼性と妥当性を検討することを目的として、大学生350 名を対象に、質問紙調査を行った。QEDの各項目得点および合計得点に男女差があるかを調べるために、t検定を行ったところ、すべての項目および合計得点において有意差はみられなかった。QADの内的整合性による信頼性を検討するために、クロンバックのα係数を求めたところ、α=.84と十分な信頼性がみられた。QADの合計得点とCAARSの各下位尺度得点の間にはいずれも有意な負の相関がみられ、特に、QAD の得点は、不注意の問題や症状との相関が高いことが確認された。今回の結果から、男女を問わず、大学生の不注意症状を中心としたAD/HD傾向による日常生活の支障の程度を数量的に把握するために、QADは有効である可能性が示された。
著者
髙橋 珠州彦
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.41-51, 2017-03-30

昭和初期の吉祥寺地区で実施された府道拡幅事業を事例に、沿道住民の行動と商店街の形成過程について検討した。府道180号線は、吉祥寺駅に通じる唯一の府道であると同時に、井之頭恩賜公園への接続道路としての役割を担っていた。同道では、拡幅事業の前後で沿道商店街の姿が大きく変わった。事業前後で多くの商業経営者が入れ替わった理由は、家屋所有者か借家人かという属性の違いに関わっていた。また、移転や立退きに伴う補償料の支払い額は家屋所有者と借家人で大きく異なっており、彼らの判断材料になっていた。沿道で最多の家屋を所有していた春山庄右衛門は旧家出身であり、拡幅事業以前は多くの貸家経営を行なっていた。事業完了後も沿道に戻り商業を継続する一方、他所出身の商店主らによって結成された商店街組織の代表者として署名している。地域住民の紐帯としての役割を果たした春山氏の行動は、地域形成において重要なものであった。
著者
鈴木 国威 安藤 寿康
出版者
文教大学生活科学研究所
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.141-145, 2011-03-01

本研究では、双生児の生後38ヶ月と50ヶ月の箸の持ち方に着目し、一卵性と二卵性の双生児ペアー内の類似度を比較することで、その遺伝と環境の影響の有無を検討した。生後38ヶ月の一卵性ペアーと二卵性ペアー内の箸の持ち方の類似度はほぼ同程度であり、他方生後50ヶ月では、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも箸の持ち方の類似度が高かった。これらの結果は、生後38ヶ月では、箸の持ち方には環境の要因が強く影響を受けており、生後50ヶ月では遺伝の影響が大きいことを示している。箸の持ち方の環境要因として、家庭や保育園などの大人との共有する場が重要ではないかと推察した。また、箸の使用において、遺伝と環境の要因が発達と共に変化する可能性を示した。
著者
井上 清子
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.183-194, 2014-03

大学生100名(男女各50名)、社会人90名(男女各45名)を対象に、同一人物(大学生女性)の微笑み顔(口を開けない笑い)・笑い顔(口を開けての笑い)・真顔・しかめ顔(眉間にしわを寄せた顔)の4種類の顔写真を呈示し、写真に抱く印象8項目について5段階で回答してもらい、各表情がどのような印象を与えるのか、また受け手の性別や年齢の違いによって抱く印象にも違いが見られるのかについて調べた。大学生・社会人とも、「笑い顔」「微笑み」などの笑顔からは、明るく親しみやすく親切な印象を受ける者が多く、笑顔が初対面の相手に好印象を与えることがわかった。一方、「しかめ顔」からは、暗く親しみづらく不親切な悪い印象を受けることがわかった。学生と社会人とでは、「しかめ顔」に対して学生の方が敏感で悪い印象を持つ者が多かった。性差では、大学生では、男性より女性の方が「笑い顔」により好感を持ち、社会人では「しかめ顔」に対して女性の方が悪い印象を持つ者が多かった。
著者
城島 博宣 白河 桃子 幸田 達郎 城 佳子
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.149-158, 2012-03

近年の日本における社会問題の一つに少子化の問題がある。少子化の一因として、女性の非婚化や晩婚化の問題がしばしば取り上げられる。女性の非婚化や晩婚化が進んでいる背景には、女性のライフスタイルが多様化した事が考えられる。 そこで本研究では、女性から結婚観やジェンダー観、職業観に関してアンケート調査を行い、女性の結婚観や職業観、そこにズレが生じているかを調査することを目的とした。その結果、本研究の調査対象となった28%の女子大学生が、結婚観や職業観の間にズレが生じている事が明らかになった。また、本研究の調査対象となった女子大学生の望むライフコースは、ゆるく働き続けつつ、早期に結婚し、出産するということ、もしくは子育て期間中は一時的に家庭に入り、子育て後にパートなどで復帰するという事が明らかになった。今後はさらに多くの大学や学年において調査を行い、検討を進めていく必要があるだろう。
著者
杉山 匡
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.77-87, 2015-03

本研究は、大学生が学生生活を過ごすキャンパスの立地環境の違いが、彼らの浮気に対する態度にどのように影響しているのかについて検討することを目的とした。浮気に対する態度尺度を作成し、文教大学越谷キャンパスに通学する学生と東京都心にキャンパスを構える大学に通学する学生を対象とした調査を実施した。その結果、両大学の学生は、いずれも浮気に対してやや否定的な態度であることが示された。しかし、文教大学より都心の大学の学生の方が浮気に対する否定的態度が弱く、東京都心の大学の男子学生においてその傾向が顕著であることが示された。キャンパス立地環境が娯楽の多様性や生活スタイルなどの違いを生じさせ、それが浮気に対する態度に影響を及ぼしている可能性が示唆された。多様な価値観と接触する機会が郊外と比べて相対的に多い都市部の環境への適応を通じて、都市部のキャンパスに通学する学生は、様々な価値観に対する社会的寛容性を獲得しているものと推測された。
著者
中村 修也
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
no.22, pp.155-168, 2000-03
著者
中村 博一
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-59, 2013-03

消防団は郷土愛護をかかげる義勇の組織とされ、地域防災の要となるボランティアリーダーと認識されている。本稿はある消防団の民族誌的報告であり、10年あまりにわたる参与観察をもとに断片的な語りや記憶をつなぐ試みである。消防団をめぐる4つの「間」から、現代の消防団の位相を浮かび上がらせようとする。地域の期待に応えられない制度的な矛盾や日本社会の変貌が団員の負担を増やす現状を描き出す。