- 著者
-
中村 圭介
- 出版者
- 東京大学社会科学研究所
- 雑誌
- 社會科學研究 (ISSN:03873307)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.3/4, pp.57-75, 2011-03-15
1994年に日本の労働組合員数は1,270万人と戦後最高を記録した. しかし, それ以降, 組合員数は減り続けた. この縮小トレンドは2007年に止まった. それをもたらしたのは, 1つには企業別組合による非正規労働者の組織化である. 非正規に職場を侵食された企業別組合は, 経営不安などをきっかけに, 集団的発言メカニズムの危機, 代表性の危機を察知し, 自らを守るために非正規の組織化に乗り出した. 他方で, 縮小トレンドのストップにはさほど貢献しているわけではないが, 地域に根を張り, 一般組合主義に基づいて, 企業, 産業, 職業, 雇用形態に関わらずに, 小零細企業で働く未組織労働者を組織化する「新しい主体」の活躍が目立つようになってきた. コミュニティ・ユニオン, 地域ユニオン, ローカル・ユニオンなどである. これらのユニオンは, 地域で暮らし働く労働者たちに労働組合というセイフティネットを提供している. そこに重要な機能がある. この2つの新しい動きを推進していくことが, 企業の外への関心の弱きと非正規労働者への配慮の少なさという企業別組合が持つ2つの短所を克服し, 日本の労働組合を再生させる契機となるかもしれない.