著者
松浦 さと子
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.69-79, 2005-09-30

これまで行政セクターの独占領域であったさまざまな地域の仕事がNPOセクターに「協働」というかたちで移譲され、市民参加を実体化する公共圏の再構築が行われている。一方2005年初頭、2002年まで日本で唯一の非営利放送であったNHKが、受信料管理の面からも、編集権行使の面からも厳しく指弾される立場となった。その公共性において、特殊法人である日本放送協会の、存立理念が問われているといえよう。市民参加と公共部門の再構築が放送の分野においてどのように行われているかを探るため、本報告では2004年に20周年を迎えたドイツの「オープン・チャンネル(Offener Kanal)」の歴史の側面を探る。1984年この制度の創設で、ドイツの放送は、「カメラとマイクを、万人の手に引き渡」すことになった。毎年多くの人々が自らの意見表明の自由についてオープン・チャンネルを通じて初めて認識するようになり、特異な人々の意見で満ち溢れるとの予測に反して、ごく普通の人々がオープン・チャンネルでテレビ・ラジオ番組の作り方を学び、提供された機会を自分自身の関心事を伝えるために利用しているという。ドイツ基本法第5条に保障された「放送および放映の自由」をもとに民主主義という明確な目的を共有し、国民の基本的人権のためのインフラであることを20周年にあたり再確認したオープン・チャンネルの現状とその議論について報告する。
著者
上垣 豊
出版者
龍谷大学龍谷紀要編集会
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.137-152, 2013-03

本稿は、19世紀のフランスにおけるカトリック若者運動について、近年の研究をもとに、社会事業と学校教育との関わりで、概観を試み、研究上の課題を整理しようとしたものである。1886年に創設されたカトリック青年会 (Association catholique de la jeunesse francaise、以下ACJFと略) はカトリックの自律した若者運動として、その後大きく発展する。本稿ではACJFの創設と、それ以前からあったサン=ヴァンサン=ド=ポール協会 (Societe de Saint-Vincent-de-Paul、以下SVP協会と略) やカトリック労働者サークル事業団の影響関係、系譜関係を探り、イエズス会の関与も含め、ソシアビリテ(社会的結合関係)の変容という視点からカトリック・エリートの若者運動を検討し直した。その結果、学習集団としてのコンフェランス (conferences)、イエズス会経営学校内に組織された聖母信心会の重要性、俗人とカトリック教会との関係の見直し、SVP協会の民主的な組織にたいして、サークル事業団の軍隊的規律の問題などが、課題として浮かび上がってきた。
著者
脇田 博文
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.115-131, 2008-01

This paper investigates language education policies in the European Union (EU) through Slovenia. Slovenia has made steady progress towards democracy and a market economy since it became independent along with the disintegration of the former Yugoslavia in 1991, joined the EU in 2004, and instituted the euro in 2007. It is a small but typically multicultural and multilingual country, where language education policies play an important role in integrating and developing the nation. Along with the rapid progress of globalization, proficiency in foreign languages has not only become an indispensable tool of communication but represents tolerance towards those who are different and helps effect peaceful coexistence. With increased spatial and social mobility, Japan is also likely to become increasingly multicultural and multilingual and must deal with language education policies including the Japanese language. This paper is composed of the following issues: the general background of Slovenia, the educational system, the language education policy, teacher training, and assessment of language education. In conclusion, research results are discussed and ways to improve Japanese language education policies are suggested.
著者
岡田 典之
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.1-16, 2012-03
著者
角岡 賢一
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-13, 2005-09-30

英語のオノマトペ(擬音語・擬態語)語彙は、総量としては1,500語程度で日本語よりも少ないと考えられている。この英語オノマトペ語彙を語形変化・引用性という2種類の基準で分類し、語彙化の程度を4区分するというのがKakehi(1981)の提案であった。この区分は、臨時形(nonce form)のように語彙化の程度が低い部類から順に語彙を階層化するという点で非常に有効であると思われる。語彙化の程度という基準以外にTamori(1990)の語形による分類、同じくTamori(1990)の意味による4分類など、複数の分類基準が用意されている。この小論では、これらの基準によって各語彙項目のオックスフォード英語辞書(OED)初出年代に差が認められるか否かを検証した。その結果、語彙化の程度・音節数・形態的特徴による区分では有意と考えられる差が認められた。他方で、擬音語と擬態語という区分を行った意味的基準では差が認められなかった。今回は60語程度という小規模なデータベースで試行したが、対象を拡大して同様の結果が出るか否かという点は今後の課題としたい。