著者
小谷 光正
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-24, 2016-07-31

1970年代,欧米で環境保全やエコロジーへの関心が高まり,エコロジー運動をはじめとする消費者運動が活発に展開された。その結果,環境を配慮した消費行動を推し進めるグリーンコンシューマーリズムの思想が確立され,そのような消費行動を実践する消費者はグリーンコンシューマーと呼ばれた。 さらに,「企業は環境に負荷をかけないマーケティング活動を行わなければならない。」とする環境マーケティングの考え方が生まれた。 国内外の環境問題の歴史は深く,環境の世紀といわれる21世紀の今,将来世代の暮らしをも思慮し,「持続可能な発展」に基づく解決策が問われている。 「社会」と「政府」という2つの次元の下で,「持続可能な発展」を目指す消費者のソサエタルな関心が,市場に向けてどのような消費パターンの選択を導くかが問題となる。 環境を配慮する消費行動により,企業,消費者,社会的環境の全てに利益がもたらされる社会の構築を目指す上で,私たち消費者が負う責務は重大である。 本稿ではグリーンコンシューマーリズムと消費者運動,環境マーケティングの発展の歴史的背景をまとめ,私たちの環境を守るために,政府,企業とともに消費者がなすべき課題と意義について考察する。
著者
安藤 りか
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.133-147, 2015

本論では,取り組み開始から十数年となった大学におけるキャリア教育に対して,近年提出されている種々の批判を整理し,それらの批判の対象となっているキャリア教育の現実との照合・確認をおこない,そこに見られる課題の検討を試みた。その結果,第1に,批判の中核である「心理主義的傾向」と「対象と範囲の無限定性」については,批判が妥当であることを確認した。第2に,「対象と範囲の無限定性」の問題が,キャリアcareerの語義に起因する教育内容の無限定性の問題にとどまらず,教員の専門性の問題とも深く関わっていることを見出した。最後に今後のキャリア研究の課題を示した。
著者
松本 浩司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.87-105, 2015-07-31

大学におけるピアサポートの拡充・支援には,支援者・被支援者双方の学生にとって成長する機会となるとともに,財政的制約から比較的自由に教育サービスの質と量を確保できるという意義がある。そこで,その一環として行った,本学教養科目におけるピアサポーター育成の試行的取り組みについて,そこに至る経緯とその概要を紹介するとともに,その成果と問題点を考察した。その結果,養成講座は自尊感情の高揚やコミュニケーション技能向上の点で十分に効果があったことがわかった。他方,実践演習から脱落したり単位認定まで到達できなかったりした学生がおり,養成講座においてクラスづくり・協同性の構築が不十分であったことなどがその要因として指摘された。本学における今後の課題は,ピアサポーター育成の体系的なシステムを整備すること,全学生に対してコミュニケーション技能の自己評価を高める教育的対応にある。