著者
早川 洋行
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.65-88, 2016

本論文は,人気マンガを題材にして,戦後日本社会におけるジェンダーの変化を考察したものである。1では,ジェンダーの形式的次元と実質的次元を区別して,後者に注目することに重要性を論じる。2では,知識社会学からのアプローチを説明した後に家族を描いた人気マンガを紹介して,そこに描かれた家族像と時代との関連を考察する。3では,家族ではなく個人に注目して,人気マンガの主人公に表現されている男性ジェンダーと女性ジェンダーの特徴をまとめる。そして4では,これまで論じてきたことを振り返り,現代日本社会におけるジェンダーの歴史的位相を総括する。
著者
大原 寛史
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.183-200, 2015-07-31

「民法の一部を改正する法律案要綱」は,意思無能力者がした法律行為を無効とする準則を明文で規定する。この準則は,判例および学説において異論なく認められてきたものである。しかしながら,この準則を明文で規定する以上,行為能力理論および制度との関係性,とりわけ「日常生活に関する行為」との関係性の問題については,より詳細に検討しておく必要がある。この問題について,ドイツにおいては,2002年に成年の行為無能力者による「日常生活に関する行為」については一定の要件のもとで例外的に有効とする規定が新設されたものの,当該規定をめぐって様々な観点から議論がなされている。本稿は,この議論を素材として上記問題を検討することにより,民法改正により生じる問題点,とりわけ成年の意思無能力者による「日常生活に関する行為」の効力についての解釈における一視座を提示し,今後の課題を明らかにすることを目的とするものである。
著者
山岡 航
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.177-208, 2021-03-31

譲渡された債権について債務不履行があり,譲受人に譲渡人よりも多くの損害が生じた場合,この損害の賠償をそのまま認めてよいかには,一考の余地がある。ここでは,特に,債務者が債権譲渡によって不利益を被ってはならないという原則との関係が問題になる。本稿では,ドイツ法を参照し,損害賠償の範囲に関して保護されるべき債務者の利益の有無を検討した。その結果,債務者の利益としては,損害額に関する抽象的なもの,損害発生への対処可能性に関するもの,損害の範囲に関する具体的なものの3 種類があり,後二者については,それぞれ,債権譲渡にともなう不利益の禁止,契約自由の原則から要保護性が認められることを示した。これにより,債務者が負担する損害の範囲は,譲渡人との契約を基礎に決定されることになる。このことは,債務者と譲渡人との間の契約の効力が譲受人にも及んでいることを意味し,契約当事者概念の分析に接続しうるものである。
著者
山岡 航
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.17-96, 2020-03-31

債権譲渡との比較において契約上の地位の移転の独自の効果とされてきたものの1つに,解除権の移転がある。しかし,債権譲渡において,債権の譲受人にその債権の発生原因である契約の解除権を認める見解もあり,契約当事者の地位にともなって解除権が移転するということには,理論的に検討の余地がある。本稿では,ドイツ法を参考に,債権譲渡の場面から,解除権と契約当事者の地位との関係を明らかにすることを試みた。検討の結果,解除権は,契約当事者の自己決定の保護を目的としており契約当事者以外の者に帰属しえないこと,および,契約上の地位の移転によって移転するのではなく,地位を譲り受けた者のもとで新たに発生することを明らかにした。このことは,契約当事者の地位を移転の対象とする一般的な理解に対して再検討の必要性を示すとともに,契約当事者の地位および契約当事者概念の分析の端緒となり得るものである。
著者
山岡 航
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.123-184, 2020-07-31

債権譲渡との比較において契約上の地位の移転の独自の効果とされてきたものの1つに,解除権の移転がある。しかし,債権譲渡において債権の譲受人にその債権の発生原因である契約の解除権を認める見解もあり,契約当事者の地位にともなって解除権が移転するということには,理論的に検討の余地がある。本稿では,ドイツ法を参考に,債権譲渡の場面から,解除権と契約当事者の地位との関係を明らかにすることを試みた。検討の結果,解除権は,契約当事者の自己決定の保護を目的としており契約当事者以外の者に帰属しえないこと,および,契約上の地位の移転によって移転するのではなく,地位を譲り受けた者のもとで新たに発生することを明らかにした。このことは,契約当事者の地位を移転の対象とする一般的な理解に対して再検討の必要性を示すとともに,契約当事者の地位および契約当事者概念の分析の端緒となり得るものである。
著者
安藤 りか
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.133-147, 2015-07-31

本論では,取り組み開始から十数年となった大学におけるキャリア教育に対して,近年提出されている種々の批判を整理し,それらの批判の対象となっているキャリア教育の現実との照合・確認をおこない,そこに見られる課題の検討を試みた。その結果,第1に,批判の中核である「心理主義的傾向」と「対象と範囲の無限定性」については,批判が妥当であることを確認した。第2に,「対象と範囲の無限定性」の問題が,キャリアcareerの語義に起因する教育内容の無限定性の問題にとどまらず,教員の専門性の問題とも深く関わっていることを見出した。最後に今後のキャリア研究の課題を示した。
著者
松本 浩司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.115-133, 2018

〈深い理解〉は,暗記を主とするこれまでの教育方法からアクティブラーニングへの変革を象徴しており,理解における多元・重奏性の深化を追求することである。社会科・社会科学教育におけるそれを促す教授は,社会認識の概念変化,共感としての視点取得,発達的パフォーマンスという3つの要素を有する。これらの要素における強調点を端的に言えば,自己と社会とを知り創造すること,ミクロな視点とマクロな視点とをあわせもつこと,③〈借り物〉となっている知識を用いた,現実社会における環境との相互作用としての行為を促すことによって,概念理解の長期的な変容過程を扱うことである。
著者
飯島 滋明
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1-15, 2020

日米安保条約では,「日本国の安全に寄与」するためにアメリカ軍が日本に駐留することになっている(6条)。しかしアメリカ軍人は日本で戦闘機を手放しで操縦していたり,オスプレイなどの訓練ではデッキをあけて住宅地に向けて銃を構えている。アメリカ軍による墜落事故・落下事故・不時着は日常茶飯事である。「未亡人製造機」と言われるほど「墜落事故」が多いオスプレイは日本全土を飛び回っている。横須賀基地では日本との約束を守らずに放射能にさらされた物質の搬出をおこなっている。こうした米軍の行動により,「戦争や軍隊によって自己の生命を奪われない権利,あるいはそれらによって生命や身体が危険にさらされない権利」である「平和的生存権」が奪われ,脅かされている。 また,在日アメリカ軍人などによる犯罪について,日本の法で裁くことができず,民事上の賠償も支払わせることができない。アメリカ政府が肩代わりすることもほとんどなく,アメリカ軍人が払うべき賠償金を日本政府が支払っている。アメリカ原子力空母の放射性物質搬出の事例や日本人警備員の「銃携帯」の個所でも紹介したように,アメリカは日本の法令,あるいは日本との約束を守らない。日本は「主権国家」とは言えない状況にある。
著者
太田 信義
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.27-34, 2020

「人生100年時代」においては,現役引退後にも長いシニア時間が待っている。充実した後半生として,どう過ごしていくのか。今や,誰にとっても重要なテーマとなってきている。 本稿は,このテーマについて,これまでの仕事・研究人生を振り返りながら,その生き方・考え方をまとめたものである。現役時代を「ものづくり技術者」として打ち込んだ筆者は,引退後に大学院で社会科学研究に打ち込む。博士論文を仕上げ,単著書として出版した後も,研究を続けている。 冒頭のテーマに対して,筆者のたどり着いた答えは,「シニア時間を知的に楽しむ」である。「働・学・研」で学びとった知識と豊富な経験とを融合させ,頭脳を働かせ,創造性ある考え方で時代の変化に対処し,楽しんでいくこと,である。どう実践していけるか,継続していけるか。そして,どう楽しめるか。それは,次に待つ大きな課題でもある。
著者
名城 邦夫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.97-130, 2018

西アジアにおいて最初の都市文明が成立し,社会的規律化が要請され,人格神・王権・法治・計算貨幣・官僚制による財政国家が成立した。神官・王族・貴族・平民・奴隷の身分ごとにその義務と役割が定められ,計算貨幣による分配が行われた。特に重要な軍役について最初にリディア王国において打造貨幣で支払われるようになった。このような打造技術による貨幣製造は,計算貨幣による社会的規律化と国家形成とともにギリシャからローマへと伝播した。ローマでは至上権・官職官僚制・ローマ法・金銀銅三貨制度・造幣役による貨幣システムが成立し,6000万人の帝国に発展した。帝政末期には帝国の属州に地域貨幣システムが形成され,それがゲルマン部族王国に継承された。最終的に西ゴート王国とフランク王国のみが独自の貨幣システムを確立することとなった。特にフランク王国はカロリング王朝によってローマ末期の金貨システムから独自の銀貨システムを確立することとなった。
著者
早川 洋行
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.97-112, 2016-03-31

本論文は,政治学者神島二郎の業績を社会学理論の観点から再評価するものである。1では,問題の所在を明らかにし,2ではこれまでの研究と評価を紹介して,その不十分さを指摘する。3では,神島の業績の中から7つの概念群を抽出して解説する。4では,それら7つの概念群を使って,神島の近代化論を再構成した後に,そこから読み取れる神島の視点の特徴を論じる。そして,これら7つの概念群が現代社会の理解にも有効なものであると主張する。