著者
内尾 祐司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.39-43, 2009-10-22

はじめに 通常,筋および筋膜縫合は深部の処置が終了したのち閉創に際して行われるが,的確に行われないと創治癒の遷延やヘルニアを生じるばかりか,筋の機能障害をもたらすことになる.一方,腱縫合術の成否は四肢の運動機能に大きく影響を与える. 本稿では,筋・筋膜・腱縫合における手技やポイントなどについて概説する.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1049, 2020-09-20

同じ施設で長らく仕事をしていると,他施設への異動話が持ち込まれることがある.その時はどう対応したらよいであろうか.私のささやかな経験を交えて対応策をお伝えする. 現在の職場で思い通りに仕事ができ,将来の展望もあるなら,異動話は即断る.
著者
岩瀬 拓士
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1069, 2014-09-20

マンモグラフィ検診がまだ十分に日本に定着していなかった20年近くも前のことではあるが,当時我々が癌を強く疑って生検した石灰化の写真を,講演で来日したDr. Tabárに診てもらったことがある.一見多形性,区域性に見える石灰化ではあったが,彼は即座に良性と診断し,生検は不要だろうと答えたことを覚えている.生検結果が良性であったことを知る我々にとっては大変な驚きであったが,経験を積んだ今ならその診断理由をよく理解できる.当時の診断能力の差を思い知らされた貴重な経験となっている. 本書は,そうしたマンモグラフィの教育活動を世界中に展開してきたDr. Tabárの有名な著書「Teaching Atlas of Mammography」の第4版を訳したものである.第4版改訂を機に日本語への翻訳と出版が現実のものとなった.
著者
八木 貴博 松田 圭二 橋口 陽二郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.746-748, 2019-06-20

【ポイント】◆肛門異物の多くは性的嗜好によるものである.羞恥心があるため自身での申告や経緯は曖昧なことが多く,挿入異物の種類,サイズは多岐にわたる.◆X線やCTなどの画像検査で穿孔の有無,異物のサイズ,局在を確認する.穿孔があれば緊急での開腹手術となる.◆穿孔が確認されなければ用指的,内視鏡的除去を試みる.除去困難であれば麻酔下に除去を試みる.開腹手術による除去が必要となる可能性もある.
著者
鈴木 千賀志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1713-1718, 1965-12-20

Ⅰ.肺化膿症 肺膿瘍は,ブドウ球菌,連鎖状球菌,肺炎球菌,フリードレンデル肺炎桿菌などによつておこり,こわれた肺組織,滲出液,多核白血球,リンパ球,大単核細胞およびこれらの残骸から成る単純な膿瘍であり(非腐敗型),肺壊疽は,肺組織がこわれて液状壊死に陥つたもので,主として紡錘桿菌,スピロヘータなど口腔内に常在する腐敗菌の混合感染によつておこり,喀痰は悪臭を放ち,放置すると数層に分離すること(腐敗型)が特長とされた。これらの発生経路は,直達性や血行性感染のものもあるが,口腔または鼻腔内細菌の吸引による気管支の栓塞,閉塞および肺感染による壊死によつておこるものが多く,かつこれら両者の区別が明らかでない場合が多いので,今日では「肺化膿症」の総称名で呼ばれるようになつた.
著者
河田 健二 和田 聡朗 岡田 倫明 出口 靖記 大嶋 野歩 水野 礼 板谷 喜朗 肥田 侯矢 坂井 義治
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.145-149, 2020-02-20

【ポイント】◆ICG蛍光法は,術中の再建腸管血流をリアルタイムに評価する客観的手法として注目されている.◆直腸癌術後の縫合不全を減らすのに有効な可能性が示唆されている.*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間2023年2月末まで)。
著者
中川 国利
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.185, 2020-02-20

急性胆囊炎例に対して即手術をすべきか否か,外科医によって治療方針は異なる. 初期研修時代のボスは痛いと訴えている患者には,「即しかも根治手術をしてあげるのが外科医の責務である」との信念を持っていた.そこで急性虫垂炎例を始め,急性胆囊炎例に対しても手術を即施行した.そこで初期研修後に入局した母校医局で「急性胆囊炎例でも即手術をすべきです」と発言したら大いにしらけ,教授からも非難を受けた.当時の医局は,急性胆囊炎例に対しては保存的治療を行うことが掟であった.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1019, 2008-07-20

生を受けた人間は必ず死を迎える.人は死を悟ったとき,大いに落胆し歎き悲しむのがつねである.しかし,死を従容として受け入れ,身近な人々との別れを惜しみながら死に逝く人も稀ながら存在する. 80歳代後半のSさんは7年前に大腸癌の手術を受けた.進行癌ではあったが術後の経過は良好で,好きなゴルフを夫婦で楽しんでいた.久しぶりに来院したので胸部X線写真を撮ると,肺に腫瘍を認めた.そこで,呼吸器内科に紹介した.しかし,肺癌はすでに転移し,また高齢のため,単に対症療法が行われることになった.
著者
佐藤 裕
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.243-245, 2008-02-20

1.フランスの「痔瘻の年」(1686年) フランスでは1686年を「痔瘻の年」と呼ぶことをご存じであろうか.この年の11月18日に,17世紀フランスにおいて絶対的権力者として君臨した太陽王ルイ14世(図1)が,長年にわたって彼を苦しめていた痔瘻の根治手術を受けたのである(別に意図したわけではないが,11月18日から本稿を書き始めた).現在,ベルサイユ宮殿の前庭には雄々しいルイ14世の騎乗像が建っており,この像は痔瘻の手術の前か後か定かではないが,痔瘻で苦しんでいたということを感じさせないものである(もっとも,絶対権力者の弱々しい姿を写すわけもないのだが). このとき,ルイ14世の痔瘻を外科的に治療したのが,国王の主席外科医であったフェリックス(Francois Felix:1635~1703年:図2)であった.巷間,手術を担当することになったフェリックスは,国王の体にメスをあてるので,絶対に失敗の許されない手術を実施する前に多くの痔瘻患者を集めて,そのすべてを自らが執刀することにより安全な手術手技の確立をはかったと言われている.そして,1686年11月18日にベルサイユ宮殿2階の「牛の目のサロン」に設けられた臨時の手術室において,多くの侍医団や家臣が見守るなか無麻酔下にこの手術は行われた.
著者
佐藤 裕
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.466-468, 2004-04-20

1881年に行った胃癌切除手術があまりにも有名なため,Billrothが1873年に世界に先駆けて喉頭癌を切除したことは忘れられがちであるが,ヨーロッパではBillrothの業績を語るに際しては,むしろ胃癌より喉頭癌切除手術のほうが先に取り上げられる(以前「ビルロート余滴・4」で述べたように,ウィーン大学付属医学史博物館のBillroth顕彰文でもまず1873年に行われた喉頭全摘手術のことが先に述べられている:図1).言い換えれば,Billrothが「近代外科学のパイオニア」と賞せられるようになるきっかけはこの喉頭全摘手術であったと言える. 今回は,以前よりたびたび引用しているAbsolonの論文に基づいて,この歴史的手術の詳細を紹介していくことにする.
著者
木村 聡元 大塚 幸喜 八重樫 瑞典 箱崎 将規 松尾 鉄平 藤井 仁志 佐藤 慧 高清水 清治 畑中 智貴 佐々木 章
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.952-957, 2017-08-20

【ポイント】◆現在漢方薬は,西洋医学的解析が進み,少しずつエビデンスが蓄積され,使用しやすくなってきた.◆大腸癌における漢方薬は,おもに周術期の合併症予防と抗癌剤治療の有害事象対策に用いられることが多い.◆漢方薬は,その特性を理解し利用することで,今後も癌治療における重要な役割を担っていくものと考えている.
著者
眞鍋 欣良 猿渡 和彥 重信 文男 添原 治夫 今井 維準
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.11, no.7, pp.471-474, 1956-07-20

緒言 原爆被爆者の皮膚毛細血管に"荒癈失調状態"が観られることは既に数次に亘り発表して来たが今回は広島に於ける原爆被爆者の10年後の皮膚毛細血管像について調査した成績を大略記載し皆様の御参考に供し度いと思う. 扨て原爆被爆者の皮膚毛細血管像について観察した成績は今迄に幾つか報告がある.即ち被爆後早期の検索では東大坂口内科,粥川,熊取,椿,尾山,京大真下,舟岡及び富田,横田の記載があり所謂後遺症期に於ける観察では吾々の成績のほか東大中泉津屋の報告がある,粥川等は原爆後81日目の被爆者について皮膚毛細管抵抗を検査しその中異状のある者13名に皮膚毛細管像の顕微鏡観察をなして6例に出血を認めたと云つており,真下,富田等は被爆1ヵ月後の15例について火傷部の皮膚毛細管像を観察し中央部では毛細血管の荒癈,周辺部では乳頭毛細血管の延長,その中間移行部では乳頭毛細血管の増加,口径拡大,延長異常屈曲,充盈度増強並に血流遅延を観たと云い火傷中央部及び周辺部は治癒過程を示し移行部は炎症が存在すると述べている.此の両者はいずれも特殊例についての早期の観察であるがその後の後遺症期に於てはどうであろうか.此れについては吾々の今迄の発表や津屋の報告でも明らかなように被爆後数年を経た者にも猶皮膚毛細管像の変化が多数に観られており,津屋は形態上からその変化を数型に分類して考察している.
著者
板野 聡
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.919, 2014-08-20

7月号では,ラグビーで使われる言葉について書かせて頂きましたが,小説『三銃士』が御本家の“one for all, all for one”のことが気になり,少し調べてみることにしました.この言葉は,一般には「一人は皆のために,皆は一人のために」と解釈されているようですが,フェイス総研の小倉広社長のコラムを拝読して,眼から鱗が落ちることになりました. 小倉社長の解説には,ラグビーで有名な平尾誠二氏のお話として,この言葉は「一人は皆のために,皆は『勝利』のために」という意味だと紹介されていたのです.そう,後者の“one”は“victory”だったのです.確かに,ある集団で「一人」が「皆」のために努力することは当たり前でしょうし(いや,最近はそうでもないか?),一人ひとりが力を合わせることで,1+1が3にも5にもなるでしょう.そのためには,“one for all”でいう“one”は自立し然るべき能力を備えた大人であるという前提が必要になります.もっとも,「一人」が半人前で他のメンバーの助けを借りなければ仕事ができないようでは,その集団の力は十分に発揮されることはなく,ただの烏合の衆となり,期待された相乗効果も生まれるはずがありません.したがって,個々に独立し,それなりの能力を備えた「大人」が集まってこそ,一つの目標,戦いであれば当然「勝利」に向けてその力を合わせることができるというわけです.言葉の出自を考えれば当然のことと納得でき,この解説で頭の中の霧が晴れた気がしたわけですが,聖徳太子の時代から,「和を以て尊しとなす」日本人ゆえに,先のような一般的な解釈がなされたのではないかと,今にして思い当たることになりました.
著者
竹内 新治 吉田 穣 三浦 重人
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.213-219, 1969-02-20

はじめに 視診と触診のみに基づいての乳癌の診断法では,腫瘤がある一定の大きさに達するまでは診断が不可能であり,より早期に診断する事が出来るような手段の現れない限り,もはや乳癌の根治成績の向上は期し難いとするLawson1)およびLe-wison2)の説は,極めて正鵠を得ているものと思われる.より早期の乳癌腫瘤が発見され,かつまた,乳腺症,線維腺腫をはじめ種々の良性疾患との鑑別も試験切除の結果を待つまでもなく可能にするような手段の開発が切に望まれるところである.さらに,その手段の実施に当つて普遍性がありMass Screeningに使用可能である事が最も望ましい.このような目的を追求するために,Thermo-graphyもMammography,超音波,同位元素による診断法等と共に登場して来た. Thermographyは生体表面から放散される赤外線をScanning mirrorを通し,増幅してフィルムに写しとる方法であり,皮膚温度の分布を白黒の濃淡度によつて表現するものである.従つて本法により乳癌を診断するためには,乳癌部皮膚温が非癌性腫瘤部および正常乳腺部のそれよりいつも上昇しているという前提が不可欠である.