著者
倉谷 健治 尾上 伍市 土屋 荘次
出版者
東京大学航空研究所
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-26, 1960-03

推力100kgの硝酸-ケロシン型液体ロケットの地上燃焼実験を二十数回にわたって行なった結果と,ロケットモーターのノズルでの化学平衡の状態を適宜仮定して理論的に求めた燃焼性能に関する諸定数の値との比較検討を主として行なった.熱損失の影響を考慮して求めた理論値は実験値とよく一致していることがこの解析から結論される.
著者
村川 〓
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.97-108, 1958-09

数種類の成分の洋白の板について低温焼鈍の効果をしらべて,300℃から450℃にわたって焼鈍硬化による硬さの極大が二つの温度で起ることを見出した.この温度は洋白板に与えた(冷間加工による)内部歪み及び成分によってかなり著しく左右されることがわかった.精密バネ材料として洋白板を使うときには(冷間加工の前の中間焼鈍温度は約650℃として)上述の二つの温度のうち高温側の温度より少し低い温度で低温焼鈍を行なうことが望ましい.鉛を含有する洋白板の被切削性を良くするには中間焼鈍温度を約800℃とすることが望ましいことがわかった.精密バネ材料として役に立つ洋白板の顕微鏡組織を圧延面を検鏡面としてしらべると,その結晶粒は統計的に(双晶が圧延されたものは別として)細長くないが,被切削性の良い洋白板のそれは圧延方向に細長いものが多いことがわかった.以前の純銅板の低温焼鈍に関する研究を続行して,以前よりもっと純粋な銅(99.99%Cu)の板について焼鈍効果を研究した結果,この度も明らかな低温焼鈍による硬化が見られた.この硬化が0.01%以下の不純物によると考える根拠は発見し難い.したがって完全に不純物のない純銅の板でも焼鈍硬化が起ると結論することができる.焼鈍硬化の機構としては析出硬化とは結び付けないで,焼鈍のために内部歪みが緩和しようとしてdislocationが移動して結晶粒界の附近でdislocationが移動し難いような配置をとると考える方が実験的事実とよく調和する.黄銅及び洋白の板に於ける焼鈍硬化も同様に考えることができる.
著者
五十嵐 寿一 石井 泰 杉山 清春 IGARASHI Juichi ISHII Yasushi SUGIYAMA Kiyoharu
出版者
東京大学航空研究所
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.7-31, 1964-03

振動,音響現象などの高速度の信号を解析するためのディジタル型相関器を試作したので報告する.相関をとるべき二つの信号はいったんデータレコーダ等に録音しその再生出力を相関器への入力電圧とする.この入力電圧は二つのアナログーディジタル(A-D)変換器によって一定時間ごとにそれぞれ2進4桁の数字に変換され,そのうち一方はシフトレジスタに入りある時間たってから読出されて他方との間に掛算が行なわれる.掛算の結果はパルス数に変換されカウンタに積算されていくが,特にこの相関器においてはA-D変換器等のドリフトによる誤差を最小にするために,二つの数の積のみでなく,それらのある一定数に対する補数同志の積をも積算に繰入れるという独特の方式を採用している.シフトレジスタの段数は11段であるが,二つのA-D変換器のサンプリング時刻はサンプリング週期の1/5ステップごとに相対的にずらせることができる.したがって全体としては正あるいは負の方向に55ステップの時間シフトをとることができる.入力信号の相関値はデータレコーダを繰返し再生しつつこれらの時間シフトのステップについて一つ一つ計算されていく.その際計算に使用するサンプルの数は相関器に任意に設定できるようになっている.この相関器は約400個のトランジスタ論理要素から構成されており約5Kcまでの周波数の入力信号を取扱うことができる.この報告では試作した相関器の動作原理や構造の説明などのほかに,すでにこの装置を用いて計算された多くの相関関数の中から二,三を選んで例示してある。
著者
河村 竜馬 辛島 桂一 関 和市
出版者
東京大学航空研究所
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.3, no.7, pp.631-648, 1963-09

sting-Type Balanceを使って遷音速におけるCone-Cylinderに働く3分力の測定を行なった実験結果を報告する.実験に使用したConeの半頂角は10°,15°,20°,25°および30°の5種である.小さな迎角の範囲では揚力は迎角に比例して増加し零迎角における揚力係数勾配はM=1の近傍でSlender Body Theoryのそれと大体一致する.模型の尖端周りのPitching-Moment係数は小迎角の範囲では,迎角に比例して増加するが,増加の割合はSlender Body Theoryのそれと比較してかなり小さい.零揚力における抵抗係数は半頂角20°および25°の模型に対してはCole, SolomonおよびWillmarthの実験結果[3]と良く一致している.しかし遷音速相似法則による抵抗係数の整理は良い結果を示さない.大きな半頂角の模型(25°および30°)に関しては揚力係数およびPitching-Moment係数がM=0.89の近傍でほとんど不連続的と考えられるような急激な減少を示した.一方抵抗係数の変化は連続的であった.Schlieren写真による流れ場の観察により,このような空力特性の急減は模型の肩における非対称剥離と衝撃波の位置の変化によるという結論に達した.資料番号: SA4148580000
著者
工藤 英明
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.212-246, 1959-03

軸対称鍛造および押出加工問題に上界接近法を適用し,加工硬化しないLevy-Misesの剛塑性材料が圧縮,押出,上昇穿孔および向合押出鍛造加工を受ける場合の所要力,変形および欠陥について解析を行ない,新しい知識を得るとともに今まで実験的にのみ知られている事実の説明ができた.さらに工具と材料間にCoulomb摩擦が存在する場合ならびに材料が加工硬化する場合についての上界接近法についての考察を行なった.
著者
荻原 妙子 土屋 荘次 倉谷 健治
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.260-277, 1963-03

二酸化窒素によるポリエチレンの酸化反応について.赤外線吸収スペクトルによって反応生成基の確認と反応機構についての研究を行なった.フィルム試料と二酸化窒素を封入した反応容器を温度調節したシリコン浴中に浸し,反応を行なった.反応後,フイルム試料を赤外線分光器によって4000〜400cm^<-1>の範囲のスペクトルを測定した.酸化ポリエチレンに新しく出現した吸収帯の帰属を行なうために,いくつかの有機硝酸エステル,亜硝酸エステルなどを合成し,その赤外線吸収スペクトルを測定した.これらのスペクトルと,酸化反応後の試料フイルムを種々な条件で処理した際に生ずるスペクトル変化などの比較によって,ニトロ基,亜硝酸基,硝酸基,カルボニル基,水酸基の生成を確認した.以上の反応生成基のある一定温度(100℃)における量的な時間変化を測定すると,反応初期にはまずニトロ基と亜硝酸基が現われ,その生成量の比は約2:1である.ニトロ基は反応時間の経過と共に単調に増加するが,亜硝酸基はある時間後に極大値に達し,減少し始める.それと同時に硝酸基.カルボニル基,水酸基の吸収が現われ,増加し始める.これらの事実より,次の反応機構が結論される.酸化反応は,ポリエチレン内に生成した反応活性点に二酸化窒素のN原子が付加することによってニトロ基が,O原子が付加することで亜硝酸基が生成することから開始する.反応後期においては,ニトロ基は安定で,亜硝酸基が更に分解を受けて硝酸基,カルボニル基,水酸基などを生成する.反応初期に生成する反応活性点は,二酸化窒素によるポリエチレン主鎖からの水素原子の引き抜き反応によって生じた遊離基である.しかし,室温下の反応ではこの水素引き抜き反応は起らず,ポリエチレン内に残存する二重結合,遊離基などと二酸化窒素との付加反応が主反応である.水素引き抜き反応に対する測定された活性化エネルギーは,14kcal/moleであった.