著者
原 和信 広瀬 聡 上田 彰 栗原 大典 竹井 沙緒梨
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-21, 2003-03-01
参考文献数
4
被引用文献数
9

【要旨】CAPIOX-RXの気泡除去能について,生理食塩水または牛血を充填した模擬回路を使用し,一定条件下にて規定量のエアーを注入し,人工肺出口における気泡のサイズ別数量について実験を行い,臨床上危険とされる40μmを中心に検討を行った。生理食塩水では50mL注入も100mL注入も40μmを超える気泡はカウントされず,30μm以下がほとんどであり,カウント数もほぼ同じ結果となった。牛血では30~40μmでは50mL注入が,また10~30μmでは30mL注入のほうが明らかに多くカウントされていた。CAPIOX-RXは50mL注入のエアーに対しても,人工肺内部で微小気泡化しているが,大きな要因として熱交換器との接触,中空糸内で流速度が急激に落ちる,中空糸のレイアウトが編み込み式で中空糸間の隙間が小さいなど,この3点が関与しているものと考えられた。しかし,気泡の大きさは生体への影響が少ないとされる40μm以ドではあるが,その量は大量であり微小気泡であっても血流のうっ滞する場所などではそれが互いに結合し大きな気泡となり得る可能性もある。
著者
神倉 和見 杉浦 辰美 齋藤 康孝 吉田 博明
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.88-89, 2005-03-01

乳児領域で使用可能なプレコネクト回路を使用する機会を得たので報告する。以前より使用していた人工肺(Baby-RX),ハードシェルリザーバー(CX-RR10),動脈フィルター(CXAFO2),器械側,術野側をXコーティング回路6.4mmでプレコネクトし,滅菌されたシールドで術野側と器械側を仕切り,術野に密着することで回路を短くし,初期充填量を少なくすることができた。接続箇所を少なくすることで,体外循環準備時間の短縮,誤接続防止,感染リスクの低減が期待できた。梱包が小さくなり,器材庫の省スペース化,ごみの削減,在庫管理の効率化に有効であった。しかし,器械側シールド内の空間が狭く,操作性向上のためには改良が必要と考えられた。またシールド内の術野回路の位置,取り出し方法にも改良の必要性を認めた。プレコネクト回路シールドパックは待機手術だけでなく,一刻を争う緊急時にも有用であると考えられる。回路径を変更することで乳児だけでなく新生児にも対応できる回路である。
著者
山崎 隆文 菱沼 浩孝 齊藤 建 河瀬 勇 外山 雅章
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.383-386, 2002-12-01
被引用文献数
3

【要旨】All in one system回路(AOS回路)の臨床使用経験と,従来の回路との比較と問題点について報告する。2000年7月~2001年6月までに使用したAOS回路,19例を対象とした。各種データの平均は,年齢66(27~78)歳,体外循環時間148(98~191)分,大動脈遮断時間95(35~163)分,静脈脱血法は陰圧-5~-40mmHg(VAVD)で,陽陰圧に対する安全対策を行った。この回路を使用することにより,各回路の包装状態確認時間,回路接続時間を10~15分短縮できた。また,回路接続に対する煩雑性の改善,操作性向上に繋がり,手術終了後の血液処理,回路破棄が容易になった。問題点としては,Pre connectのため,後付けで脳分離回路が接続不可能であり拡張性が失われた。また,不良回路が発生した場合,高額な負債となる場合もある。回路作製時には,製造会社と密に連絡を取り,回路接続方向,製品の安定供給を求めなければならない。AOS回路は,臨床使用上問題なく,患者の状態に合わせ迅速かつ短時間に回路を作製することが可能である。今後,回路の柔軟性,安全性の確保を考慮し,より効率のよい回路を作製して行くことが今後の課題である。
著者
田高 朋宏 稲葉 敦彦 三浦 吉晴 榛沢 和彦 森下 篤 北村 昌也 小柳 仁
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-73, 2004-03-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
4
被引用文献数
1

経頭蓋超音波検査(TCD)では脳動脈内の気泡,血栓などの微小栓子がHigh Intensity Transient Signals(HITS)として検出することが可能である。CPB中に脱血回路から空気が混入した症例で,脳動脈内でHITSが多数検出され,術後の覚醒遅延や痙攣などの合併症を経験した。今回,TCDを用いて3種類の静脈貯血槽(VR)の気泡捕捉能力を検討したので報告する。3種類のVRを用いて模擬回路を作製し,静脈回路に設けた空気の注入口から1mLの空気を注入し,VR出口,人工肺出口,動脈Filter出口にてHITSの検出を行った。灌流液には豚血を用い,灌流温36℃,灌流量は4L/minとした。3種類のVRから出る気泡数に有意差は認められなかったが,気泡径はVRのFilterサイズが150μmのA-VRから流出する気泡径が大きい傾向にあった。人工肺前後では気泡数に有意差が認められたが,動脈Filter前後では有意差が認められず,10μm以下のマイクロバブルみら捕捉はできないことが示唆された。マイクロバブルの捕捉には人工肺のほかにVRの除泡能が大きく関与することが示唆された。
著者
鈴木 克尚 神谷 典男 西條 幸志 高岡 伸次 栗田 智代 大野 雄三 北本 憲永
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.22-25, 2001-12-01
被引用文献数
7

【要旨】今回,MUF終了後に再循環を行い20分経過した頃,人工肺入口側の圧が上昇し,回路接続が突然はずれた症例を経験した。人工肺の入口部は血液塊で詰まり,静脈リザーバのフィルタ表面および液面と動脈フィルタにも血液塊が大量に形成されていた。MUF終了後から待機循環中の血液塊形成が起こるまで,どのように変化するかヘパリン濃度,使用材料・構造,置換液,血液塊の解析,残血の成分より凝固系,蛋白,血液ガスについて検証した。再現実験を行った結果,血液塊はechinocyte化した赤血球の凝集であった。ヘパリンやヘパリンコーティング材料の使用は無効であった。MUFの残血は赤血球が減少しており,緩衝作用が弱まっていることに加え置換液にアルカリ化剤の含まれたものを使用したことなどから,人工肺によるガス交換で容易にpHの上昇を来したと推測された。MUF施行後の残血成分は通常と異なり,pHが上昇しやすい環境にあり,ガス流量を戻し忘れた際など,容易に凝集することが明らかとなった。
著者
吉田 譲 小塚 アユ子 角田 卓哉 松本 貴澄 関口 敦 石田 徹 新浪 博
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.116-119, 2008-06-01
被引用文献数
2

メインローラーポンプと別ローラーポンプで分離送血を施行した場合に、メイン流量と関係なく、人工肺から空気を引き込まず安全に施行するために、メインポンプを短絡し、リザーバから人工肺に連続的に流量が確保できるシャント回路2種類(1.弁入りシャント;6mmφチューブにディスク型一方向弁を組み入れた回路、2.2本掛けシャント:6mmφチューブのシャント回路と、6mmφチューブにダックビル型一方向弁を組み入れた分離送血回路を、同時に2本掛けした回路)を試作し、空気引き込みの可能性について実験的に検討した。メインポンプを停止し、分離送血ポンプ流量を300~700mL/minと変化させたときの空気引き込みの有無を確認したところ、両シャントとも空気引き込みは認めなかった。弁入りシャントではディスク弁の開放運動が容易で吸引負荷が少ないこと、2本掛けシャントでは流入抵抗のあるダックビル弁を回路内抵抗として組み入れたことで適度な陽圧となり空気引き込みが防げた。シャントに適正な一方向弁を組み入れることで空気の引き込みはなく、臨床で使用できる可能性を認めた。
著者
原田 智昭 小林 広樹 高平 真
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-22, 2007-03-01
被引用文献数
1

当院では開心術による空気塞栓低減を目的に心嚢内へ炭酸ガスを吹送している。そこで,模擬胸腔での基礎実験および2006年1月から4月までの成人開心術10症例において,1)炭酸ガスの心嚢内吹送方法,2)心嚢内炭酸ガス濃度測定,3)吹送された炭酸ガスの体外循環への影響を検討した。炭酸ガス吹送方法は,吹送チューブの先端流速を低下させる必要があり心嚢内の炭酸ガス濃度を維持できる十分な吹送流量が必要であると考えられた。炭酸ガス濃度は幾つかの因子によって大きな影響を受けることが確認された。吹送された炭酸ガスの影響を受け,炭酸ガス分圧はベント・サッカー回収血が著しく高値を示し,静脈血よりも人工肺入口血において高値となった。上昇した血中炭酸ガス分圧を補正するためには,人工肺への混合ガス付加量を増加させなければならず,炭酸ガス除去能力の低い人工肺を使用した場合に高炭酸ガス血症を引き起こす危険が示唆された。