著者
小林 英知 朝日 亨 後藤 和宏 服部 敏温 清水 剛 石丸 新
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.25-27, 1998-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
3

腹部大動脈瘤に対するY型人工血管置換術10例に対し, COBE社製洗浄式自己血回収装置BRATTM2を用いて洗浄効率を測定し,本装置の有用性について検討した。廃液および回収血を採取し, WBC・RBC・Ht・Hb・Plt・ヘパリン・Cr・BUN・T-Bil・TPについて回収率と洗浄効率をそれぞれ算出した。赤血球の回収率は良好な結果が得られたが,回収血のHtは49.7%と低値であったため,回収血にヘパリンの残在が確認された。しかし,ヘパリンの洗浄効率は95.3%と高値であった。また,他の血漿成分の洗浄効率も高い値を示した。
著者
神谷 典男 北本 憲永 西條 幸志 高岡 伸次 鈴木 克尚 鈴木 智代 高柳 綾子 小出 昌秋 野地 智 打田 俊司 石橋 信之
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.65-68, 2002-03-01
被引用文献数
2

【要旨】近年,無輸血開心術は広く行われ,体外循環の血液希釈の影響を最小限に努めるために,各施設では様々な試みがなされている。今回我々は,回路径を可能な限り細くし,回路長の見直しと当施設で考案した体外循環回路組み込みシート(衛生シート)を成人用回路にも応用し,開放および閉鎖型の両回路の低充填化を試みた。その結果,2000年7月までの開放型回路充填量はリザーバレベル200mlの時56kg以上で1,100ml,55kg以下で985mlであったのが,開放型回路では56kg以上で722ml,55kg以下で635mlとなり,症例によっては更に術野側回路を短くすることで565mlとなった。また,閉鎖型回路の充填量はリザーバレベル100mlで780mlとなった。低充填化には閉鎖型の方が理想的と考えていたが,実際は気泡除去能力の高い材料が必要で選択が限られてしまい,結果的に開放型の方が低充填量となった。現段階において低充填化には開放型の方が最適と考えられた。
著者
吉岡 信也 西田 慎一 植木 弘一 中嶋 康仁 上屋敷 繁樹 染谷 忠男
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.42-45, 1998

要旨ローラーポンプの欠点であるポンプヘッドのすり潰しによる溶血の発生や,不慮の回路閉塞による回路内の異常高圧の発生などを解消するため開発された,Better Header(ポンプinlet部からoutlet部にPressure relief valveを取り付けてある)を,安全性,機能性および溶血発生について実験的に評価した。その結果,ローラーポンプ駆動中に送血チューブをクランプしても異常高圧を発生することはなく,プレッシャーリリーフバルブの精度も信頼できるものであった。溶血の発生量が,通常のオクルージョン法より少ない結果であったノンオクルーシブオクルージョン(ボンブヘッドをルーズにかつバックフローが10%以下に設定する)は,Better Headerを使用することによって簡便に設定することができた。以上のことから,Better Headerはローラポンプによる体外循環の安全性を高め,溶血の発生を軽減できた。
著者
和田 英喜 宇井 雄一 田中 佑佳 山本 英樹 丸山 仁実 林 哲也 尾嶋 良恵 木下 昌樹 新田 功児 西分 和也 石原 均
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.56-58, 2002-03-01
被引用文献数
3

【要旨】新たに開発された,アイシン社製IABP装置,CORART BP21(BP21)を使用する機会を得たので,当院で使用しているデータスコープ社製System97e(97e),System98(98)との比較も含め,シミュレーション回路による,応答性・不整脈への追従性の実験および臨床使用で総合的に評価した。BP21は98と同様に拡張・収縮に要する時間が短く,高心拍への追従性が良く,R波デフレーションを選択するのにも十分な性能を有していると考えられた。カテ先センサー付のP1バルーンを使用した際は,センサーオート機能で優れた不整脈への追従性を示した。また搬送時の移動性に優れ,新しく開発されたバックアップモードは臨床上の有効性も示唆された。
著者
笠野 靖代 荒木 康幸 黒崎 亮輔 上塚 翼 塚本 佳代子 川野 洋眞 原武 義和 堀内 賢二 三隅 寛泰 平山 統一
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.74-77, 2005-03-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

【要旨】Elliottらが提唱したModified Ultrafiltration(MUF)は,小児開心術の体外循環後に短時間でHt値を上昇させることができ,術後の浮腫軽減を目的とした限外濾過法であり,小児に対する有用性は既に報告されている。我々は,成人開心術においてもMUFは有効と考え,2002年7月よりMUFを開始した。MUFは,脱血を大動脈ルートベントより行い,ヘモコンセントレーターで濃縮し,右房へ送血する当施設オリジナルの方法で施行した。今回,2004年2月から7月までの成人開心術のうち,MUFを行った40例を検討し若干の知見を得たので報告する。MUFの施行時間は7.8±1.8分,MUF中の送血Ht値およびTP値は38.2±7.3%,8.5±1.59/dLであり,MUFの前後でHt値は25.8±2.7%から28.8±3.1%へ,TP値は4.6±0.6g/dLから5.2±0.59/dLと有意に上昇を認めた(p<0.001)。成人開心術においてMUFは,短時間でHt値,TP値を上昇させる点で有効であった。
著者
村木 亮介 永田 和之 中島 康佑 大下 智也 有道 真久 坂口 太一
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.13-18, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

体外循環中の術野吸引血における特異的なサイトカイン活性化をIL-6の測定によって証明するとともに、その処理方法の一つとして自己血回収装置による血液洗浄効果について検証した。方法はSorin社リザーバーHVR-DUALTMを使用し、吸引血を分離。同時間軸にて採血を行い、CBC、血生化学、Free-Hb、IL-6について評価を行った。結果、灌流血・吸引血・洗浄血群間でIL-6(68±56、467±460、51±60pg/mL;P<0.01)、Free-Hb(0.06±0.04、0.21±0.12、0.03±0.02g/dL;P<0.01)と吸引血において有意に上昇を認めたとともに、洗浄処理による除去を確認した。またIL-6上昇に関係する因子として検討した結果、白血球等には関係性は見られなかったが血小板数やFree-Hbには有意な相関を認めた(P<0.05)。なお洗浄処理によって吸引血中血小板の68±16%の除去を示した。これらより、吸引血のサイトカイン活性化は灌流血に比べ特異的に強く、吸引血を分離して処理することは有効であると考えられた。また処理方法については検討中ではあるが自己血回収装置によって活性化血小板の除去とIL-6の除去が確認できたため、有効な方法の一つではないかと考える。
著者
笹山 幸治 柿本 将秀 平本 芳恵
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.131-138, 2014 (Released:2014-07-10)
参考文献数
19

人工心肺中のマイクロバブルの発生と対処法について、基礎実験で実証されたデータをもとに臨床データを示し、発生防止について検討した。基礎実験は全て新品の人工心肺器材を用いて模擬回路を作製した。回路は牛血で充填し、血液の状態を調整後、ローラーポンプを用いて空気を脱血回路に連続混入した。マイクロバブルは人工心肺器材別の入口と出口でCMD20マイクロバブルカウンターを用いて測定した。基礎実験の結果、すべての静脈血貯血槽で貯血レベルに関係なくマイクロバブルを放出した。充填量に関係なく人工肺はマイクロバブルを放出し、圧力損失の上昇に伴ってマイクロバブルの除去効率が上昇した。動脈フィルターを人工肺下流に配置することで送血回路に混入したマイクロバブルの減少を認めた。人工肺でのマイクロバブル除去率は混入した空気量の増加に伴って減少した。結果を踏まえ、臨床データを評価した。基礎実験と同様に送血回路にマイクロバブルが混入し、特に人工心肺開始時、右房切開時、心臓脱転時などで増加した。マイクロバブルは浮力が小さいために血流へ乗りやすく、血液内では溶解速度も延長する。そして、ガス状微小塞栓の原因であるマイクロバブルは臨床結果に重要な影響を持っている可能性がある。従って、人工心肺中の脱血回路に空気が入らないように手術手技は注意しなければならない。
著者
山崎 隆文 菱沼 浩孝 齊藤 建
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.298-303, 2002-09-01
参考文献数
6
被引用文献数
1

今回,小型軽量の血液ガス電解質アナライザーラジオメーター社製ABL77(ABL77)を使用する機会を得た。2001年2~4月までの心臓血管手術19例を対象に, ABL77とバイエル社製850と各種実測値データ(pH, PO2, PCO2, Na+, K+, Ca2+)を比較検討した。 Hctは, Sysmex社製K-4500と遠心分離器KUBOTA KH-120 IIで比較した。その結果, pHはy=0.92x+0.61, r=0.96, PCO2はy=0.91x+3.51, r=0.92, PO2はy=0.92x+6.18, r=0.94, Na+はy=0.78x+29.06, r=0.71, K+はy=0.90x+29.06, r=0.97, Ca2+はy=0.92x+0.14, r=0.93, Hctはy=1.06x+2.06, r=0.97, y=1.11x-3.35, r=0.97であった。 ABL77は,センサー部分がカートリッジ形式になっており,血液流路サーキットが短く,1検体の測定時間が短いうえに連続測定が可能である。この電極およびキャルパックを交換する場合には,バーコード認識で,使用期限などの機器認識が簡便である。欠点としては,センサー不良が生じた場合に,センサー電極が個々にメンテナンスができないため,センサーカートリッジをすべて交換しなければならない。使用期限があるため,その期限までに使用されなければ無駄となる。 ABL77を臨床使用し各測定データの結果, Na+で若干低値であったが,各項目高い相関を示した。小型軽量のため,人工心肺中の血液ガス,電解質分析装置として十分に活用できると考えられる。今後の課題として,センサーカートリッジの更なる安定性が求められる。
著者
吉田 譲 小塚 アユ子 佐藤 智明 見目 恭一 許 俊鋭
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-36, 2005-03-01
参考文献数
10
被引用文献数
2

JMS社製ターボ血液ポンプMixflow(JMF)と大日本インキ化学工業-Edwards Lifesciences社製人工肺Platinum Cube NCVC6000(DEPC)の組み合わせにより,新たに長期間安定使用できる流量補助循環(PCPS)システムを構築するため,PCPSでの導入前に,開心術にてヘパリンコート回路と組み合わせて使用した。JMFの高回転仕様,DEPCの非対称膜それぞれの特性の確認を中心に評価した結果,血液データにおける術前/術後の血小板の減少率が少ない傾向を示した以外に差はなく,エア抜きも炭酸ガス置換と落差充填により差はなかった。それらの結果を基に,充填時間短縮のためにエア抜き用の取り外し式フィルタを回路内に設けて作製した新システムをPCPSで臨床使用した。その結果,従来に比し,同一ポンプまたは人工肺での長期使用(最長19日)が可能であった。交換したJMF,DEPC双方に血栓がみられたが,肺のプラズマリークもなく長期補助に有用であると考えられた。血栓発生時期や酸素加調整法の把握がより重要で,同時にポンプヘッド固定の安全性やバッテリ消耗回路の改善が望まれる。
著者
吉岡 政美 飯塚 嗣久 笹盛 幹文 扇谷 稔 山内 良司
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.35-39, 2004-03-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14

【要旨】当施設では,QUEST Medical社製MPS心筋保護液供給システムを使用し,マイクロプレジャー心筋保護法を行っている。1回注入量は血液量で400mLとし,塩化カリウム,ニコランジル,塩酸ジルチアゼム,硝酸イソソルビド,マグネシウムを添加した。全症例で迅速な心停止が得られた。また,遮断解除後の除細動器使用率は12.5%であった。体外循環離脱時のカテコラミン投与量はDOAが4.0±1.1γ,DOBが3.6±1.5γであり,術後のCPK-MBは,ICU帰室時の9.7±2.31U/Lをピークに翌日には5.4±1.31U/Lに低下した。晶質液を使用しないため薬剤の総注入量は48.1±12.4mLであり,体外循環中の過度の希釈を防止できる。それにより輸血率や輸血量を減らすことができると考えられた。また,カテコラミン投与量が少なく,CPK-MBの過大な上昇も見られず十分に心筋を虚血障害から保護することができていると考えられた。マイクロプレジャーは晶質心筋保護液を使用せず,血液に心停止薬液と添加薬液のみを加えた微量でシンプルな心筋保護法であり,良好な心筋保護効果が得られる有用な心筋保護法と考えられた。
著者
小塚 アユ子 吉田 譲 斎藤 亮輔 見目 恭一
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.400-403, 2005-12-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
4

【要旨】乳幼児体外循環における希釈の軽減,有害物質の除去,血行動態の安定などの目的で,2004年より導入したMUF(Modified UltraFiltration)について検討を行った。対象は体外循環時間が60~180分,体重12kg以下の42例である。MUF施行により平均Ht値は26.2%から33.8%に上昇した(上昇率30.2%)。MUF開始時Ht値の高低による上昇率への影響を見るため26%で区分したところ,26%未満で25.7%,26%以上で34.5%の上昇で,開始時Ht値が高い方が上昇率が大きい傾向にあった。収縮期動脈圧は平均52.7mmHgから65.0mmHg(上昇率26.2%)。MUF中の除水量は平均893.3mL,水分バランスは-89.7mLであった。直腸温変化は,平均-0.143℃,体重5kgを境に,体重5kg以上で平均0.14℃ 上昇,体重5kg未満で,-0.63℃と低体重児で低下傾向にあった。MUF施行によりHt値,動脈圧の上昇,水分バランスのマイナス傾向が見られ,MUFは乳幼児体外循環に有用あった。