著者
永田 斉寿 飯塚 日向子 北原 正彦
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.153-165, 2006-12-15
被引用文献数
2

2004年4月から2005年11月まで,福島県いわき市の3地域において,トランセクト法によるチョウ類調査を行った.調査の結果,石森山では7科54種1348個体,水石山では8科49種1416個体,仏具山では8科56種1080個体のチョウ類が確認された.3地域全体では8科69種3844個体が確認された.この中で環境省(2000)のレッドリストの準絶滅危惧2種を確認できた.また,分布地域を北東方向に拡大しているツマグロヒョウモン,アオスジアゲハ,モンキアゲハ,ウラギンシジミ,ムラサキシジミなども確認された.3地域全体を込みにしたいわき市の優占種構成は,関東北部地域のそれと類似しており,両地域間で似たような群集構成を持っていることが示唆された.一方,3地域間の比較では,最大種数(56種)は仏具山で確認されたが,森林性スペシヤリストの種数は石森山で最大であった(11種).水石山は確認種数は最も少なかった(49種)が,3地域の中では,草原性種の平均密度が最も高く,森林性種のそれを上回っていた.以上の3地域間の群集構造の違いは,各々の地域の人為的撹乱度の違い,環境構造や植生の違いなどが主に影響しているものと考えられた.3地域の環境評価段階は各評価指数によって違いが認められたものの,3地域共に中自然〜多自然,もしくは二次段階から原始段階の中に収まることが分かり,調査した3地域は都市の近郊に位置しているものの,チョウ類群集にとっては比較的良好な生息環境が維持・提供されているものと判断された.
著者
岩井 大輔
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.93-98, 2006-10-14

栃木県の渡良瀬遊水地で,オオルリハムシによる生息場所利用について野外調査を行った.寄主植物のシロネは水面からの比高が比較的低い場所に生育していた.成虫個体数および卵塊数は,寄主植物の生育密度と関係があり,寄主植物の密度が高い場所で多かった.成虫の移動距離は短く,移動は舗装路によって制限された.これらの結果から,オオルリハムシの保全のためには,寄主植物の生育する立地を広く確保することが重要であることが示唆された.
著者
松良 俊明 三上 由記 若林 陽子 山崎 一夫
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-65, 2006-08-07
被引用文献数
1

京都府南部を流れる木津川の中流域には多数の砂州が形成され,多様な地表性昆虫が生息している.砂州を構成する基質はシルト,砂,礫など多様であり,各微地形に応じて生息している地表性昆虫も異なっていると推測される.本研究は,砂州内の様々な微環境(水際,礫地,砂地,堤防斜面の草地)に生息している地表性昆虫に焦点をあて,微環境間で構成種がどのように違うかを調べたものである.2000年5月から11月にかけ,月に1度の割でピットフォール・トラップを各環境ごとに10本埋め,1日後に回収した.トラップあたり平均捕獲数(183.6個体)の約7割はトビムシ目が占めた.これを除いて環境間で比較すると,草地ではアリ類が最も多くを占め,他の環境ではコウチュウ目が半数を占めていた.捕獲数の多かったコウチュウ目について分析したところ,属レベルで見たとき,最も多様な環境は「草地」であり,続いて水際>礫地>砂地となった.水際ではハネカクシ類が,その他の環境ではオサムシ科が多数を占めていた.