著者
栗山 進一 大貫 幸二 鈴木 昭彦 市村 みゆき 森久保 寛 東野 英利子 辻 一郎 大内 憲明
出版者
日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-98, 2007-03-30 (Released:2008-07-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 40歳代女性に対する超音波・マンモグラフィ併用 (US & MMG), 超音波単独 (US単独), マンモグラフィ単独 (MMG単独) の3種類の逐年検診方法を, シミュレーション分析により救命効果, 効率の点から比較検討することである。各検診方法に対して10万人ずつの仮想コホートを設定し, 検診とその効果をシミュレーションにより追跡した。それぞれの検診を行うコホートで, 要精検者数, 乳がん患者数を, 検診の感度・特異度, 乳がん罹患数より計算し, 期待生存年数を早期乳がん比率, 病期別の5年生存率, 平均余命より算出した。費用効果比は検診により生存年1年延長に要する費用である。検診方法別の感度・特異度, 早期乳がん比率は, 平成12年度~16年度に栃木県保健衛生事業団が行った地域住民出張検診データから算出した。救命数の差をみると, 検診方法別ではUS & MMGが最も大きく, US単独, MMG単独の順に低下した。費用効果比をみると, US単独が他の2つの検診方法より良好であり, MMG単独, US & MMG単独の順で費用効果比が低下した。最も効果の高いのはUS & MMG検診であり, 最も費用効果比が良かったのはUS単独検診であった。
著者
雷 哲明 相良 安昭 大井 恭代 久木田 妙子 田口 稔基 相良 吉昭 玉田 修吾 馬場 信一 松山 義人 安藤 充嶽 相良 吉厚
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.31-36, 2008-03-30 (Released:2009-03-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2000年4月より20007年3月までの7年間に手術された乳癌のうち術前MMG(二方向)かつUS検査した2,641例(全乳癌)をretrospectiveに分析し,MMGに異常所見がなくUS検査が発見の契機となった乳癌(US乳癌)の特徴を全乳癌と比較し,US検診の可能性を探った。US乳癌は202例であり,全乳癌の7.6%であった。年齢層別にみると全乳癌と比較してUS乳癌は30歳代(11.9% vs 7.5%)と40歳代(39.1% vs 26.2%)に多く,50歳代では差がなく,60歳代70歳代では少なかった。全乳癌のうち非浸潤性乳管癌が占める割合は12.4%に対し,US乳癌では32.7%であった。浸潤癌のうち各組織亜型別の割合をみてみると,通常型のうち乳頭腺管癌,硬癌では差がなく,US乳癌では充実腺管癌が少なかった(21.5% vs 8.4%)。病理組織学的な浸潤径を測定した症例でみると,浸潤径が1cm以下の症例では全乳癌は17.3%に対しUS乳癌は32.8%であり,DCISとT1を含めると全乳癌は60.0%に対しUS乳癌は88.9%であった。以上よりMMGでは異常所見がないUS乳癌は若年者,非浸潤癌と腫瘍径が小さい浸潤癌が多かった。40歳代以下の若年者,高濃度乳房の早期乳癌発見のためにはUS併用は不可欠であり,集団検診におけるUSの導入には早急に費用対効果の検討が必要と思われた。
著者
塚本 徳子 角田 博子 菊池 真理 負門 克典 佐藤 博子 川上 美奈子 福澤 晶子 岡部 薫 向井 理枝 源新 めぐみ 平松 園枝 斎田 幸久
出版者
Japan Association of Breast Cancer Screening
雑誌
日本乳癌検診学会誌 = Journal of Japan Association of Breast Cancer Screening (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.239-246, 2007-10-30
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

わが国で現在乳癌検診の中心はマンモグラフィで行われているが, 高濃度乳房である閉経前女性に対して超音波検診が注目されている。超音波検診の成績は過去多くの報告があるが, 日本乳腺甲状腺診断会議 (JABTS) によりまとめられた超音波検診の要精査基準に従って精度管理され行われたシステムでの報告はまだない。われわれは技師が検査を行い, 医師がこの要精査基準に従って判定した3年間の検診成績をまとめ, この体制での乳房超音波検診の有用性について検討した。<br>乳房超音波検査延べ受診者は17,089名であり, 約90%が50歳未満であった。判定は, カテゴリー1が8,289名 (48.5%), カテゴリー2が8,183名 (47.9%), カテゴリー3以上の精査対象者が616名 (3.6%) となった。このうち73.4%にあたる452名の追跡が可能であり, 48名 (0.28%) が乳癌と診断された。手術症例46例の中で早期乳癌は37例 (80.5%) あり, そのうちマンモグラフィでは検出できなかったものは16例と43%を占めていた。<br>乳房超音波検診の診断に際し, 乳房超音波診断ガイドラインを診断基準に用いることで, 有所見率の高いと言われている超音波検査でも精査率を上げ過ぎることなく早期乳癌の検出に寄与することができた。