著者
浪岡 新太郎 NAMIOKA Shintaro
出版者
明治学院大学国際学部
巻号頁・発行日
vol.39, pp.35-62, 2011-03-30

現在,フランスには約370 万人のムスリム系移民出身者が定住している。彼らは,そのイスラームへの帰属意識を理由としてフランスへの帰属意識をもつことができないのではないかと疑われている。市民の平等や政教分離といったフランスの基本的価値が,政教一致や男性優位主義のような「イスラームの基本的価値」と矛盾するのではないかと主張された。こうした状況を背景に,彼らのフランスへの帰属意識を強めようと,フランスの基本的価値を教え込むためのシティズンシップ教育の強化が主張されている。本稿は,①彼らにとってフランスの基本的価値は,その排除や差別の経験から実感されておらず,②実際にはシティズンシップ教育で教えられる基本的価値はマジョリティに優位に機能しており,③彼らにとってイスラームへの帰属意識は,排除や差別にもかかわらずフランスの基本的価値を遵守することを可能にする点でシティズンシップ教育の役割を担っていることを明らかにした。【論文/Article】
著者
涌井 秀行
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-22, 2011-10

新幹線,超高層ビル,自動車,そして半導体技術をはじめとするハイテク産業。東京都のGDPはオーストラリア一国に匹敵し,2009年までは,日本のGDPは世界第2位の規模であった。誰もが,日本が「高度に発達した資本主義国」であるということを疑わないだろう。だが戦後日本の経済は,前近代的な土地所有を基盤に発展したのである。欧州諸国は資本主義の成立過程(本源的蓄積)で,長い時間をかけて封建的土地所有を近代資本制的土地所有へと編制替えしてきた。農業をともかくも資本主義的農業・産業へとつくりかえたのである。しかし日本ではこの過程を経ることなく,またその暇もなく資本主義国へと転換せざるを得なかった。いや,むしろ戦前の「富国強兵」・急速な近代化の過程では,この半封建的土地所有・寄生地主制が近代化を促進したのである。戦後においても零細農地・農耕=宅地所有が「高度成長」を促進した。戦前も戦後も「前近代の存在がむしろ超近代を加速」(内田義彦)したのである。本稿は,戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とした「土地所有」にあり,その核心は零細農耕=稲作で陶冶された労働力にあることを論証し,この解決をとおして日本の変革を展望しようとする試論である。有効な制限原理,社会的な「公共財」としての性格を持たない,封建領主顔負けの土地所有こそ戦後日本の【基盤】であり,この【基盤】土地問題の解決なしには日本の変革と楊棄はあり得ないだろう。小稿は戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とする「土地所有」であることを論証し,「失われた20年」「閉塞感」打破の国民的立場に立った道筋を見出そうとする問題提起である。論文
著者
藤嶋 亮
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.63-86, 2011-03