著者
阿満 利麿 AMA Toshimaro
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院論叢国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.29-34, 1992-03-31

共同研究報告(1987-1990年度)『戦後日本の社会変動の研究―「高度成長」を鍵概念に―』COLLECTIVE RESEARCH (1987-1990): Social Changes in Post-War Japan: "High-Growth" as a Key Concept
著者
岩村 英之
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.48, pp.63-75, 2015-10

通貨同盟と財政連邦制をとる国家とは、単一の金融政策と複数の財政政策の組み合わせという点で類似している。そのため、欧州通貨統合の初期段階より、財政連邦国家のパフォーマンスにユーロの未来を投影し、また通貨同盟各国が満たさなければならない条件を導出することが試みられてきた。特に近年では、南欧諸国の政府債務問題を契機に、財政の分権化が地方政府の財政規律に与える影響に焦点が当てられている。本稿では、最初に分権化が財政規律に及ぼす影響についての理論的な議論を整理し、分権化は複数の異なるメカニズムを通じて正負両方の効果を持ち得るため、最終的な効果はすぐれて実証的な問題であることを確認する。そして、いくつかの代表的な実証研究を引きつつ、実証分析の結果を分ける3つの構成要素-(1)財政の分権化の数値化、(2)財政規律の数値化、(3)分権化と財政規律の関係の特定化-を抽出する。最後に、この3つの要素の観点から最近の実証研究の傾向をまとめ、分権化の効果についてはいまだ決定的な実証結果が提示されていないことを確認し、今後の方向性を示唆する。【研究メモ/Research Memoranda】
著者
リー サンベック
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.25-47, 2015-10-31

日本の為替政策に関しては多くの先行研究があるが、70 年代半ばから後半までの期間を包括的に分析した先行研究は比較的少ない。そのため当該期間における為替市場と為替政策に関する全体的な流れを把握するのが容易ではない状況にある。本稿では、まずこの時期の展開を時系列に沿ってなるべく前後隙間なく理解できるように、先行研究を参考にしながら、その他の学術論文、政府刊行物、当時の新聞や経済雑誌の記事、回顧録を幅広く活用した。そしてその過程で、変動相場制と為替介入をめぐる当局者含む専門家達の認識が如何に変化し、その変化の要因が何であったのかを探った。結果、アメリカを筆頭とする海外からの圧力、保護主義台頭と市場開放への恐れ、投機資本による市場圧力、そして「国際金融のトリレンマ」による金融・為替政策上の制約が大きく作用したことを明らかにした。
著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.85-103, 2016-03-31

本稿では、市場でも政府でもない第三部門としての非営利組織(non-profit organization,NPO)を取り上げ、その組織的特徴、機能、機能支援要因であるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の働き、日本における課題、などを論じた。その結果得られた主張は、末尾の「結論」に箇条書きしたとおりである。
著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.105-122, 2016-03-31

本稿では、日本語として未だ使われることが多くないインテグリティ(integrity)に焦点を合わせ、その概念、構成要素、機能などを分析した。その結果、次の主張をした。(1)インテグリティとは、語源的に首尾一貫性を基本的意味として持っており、それに正直、誠実、公正などの倫理的意味や、説明責任などの要素も加わった複雑な概念である。(2)インテグリティを体得すれば a)どのような状況にも安心して対応できる、b)第三者からの信頼感が高まる、c)日々の生活を単純化できる、などのメリットがある(本稿ではこれらをシェリングの自己管理モデルを応用して分析した)。(3)インテグリティは、個人についてだけでなく、職業上のインテグリティ、組織のインテグリティなど多くの面で重要な規範になっており、それらが満たされる組織や社会は健全な良い社会になる。(4)日本では、インテグリティの概念を普及させる余地が依然としてかなり大きく、それは大学教育で達成すべき大きな目的の一つでもある。
著者
平山 恵
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.49, pp.25-49, 2016-03

1994年のルワンダの虐殺後にHIV感染による多重苦にある人々は何を「拠り所」にし、何を求めているのかを明らかにして支援の内容を再考する研究である。2001年に23人、2010年に100人のHIV陽性者より聞き取りを行い、質的および統計的に分析した。①配偶者からの感染者は、2001年には「家族」を頼りにしていたが、2010年は「政府やNGOなどの援助団体」や「医療従事者」を頼りにしていた。面接時は虐殺で「怒りと悲しみ」の感情が見られる人と、援助に「満足」しているか「諦め」ているために黙っている人に二分された。②レイプ感染者は2001年は住居や薬をもとめていたが、2010年は自分自身の教育を強く求めるようになった。③売春による感染者は「家族」を頼りにしていて「残される子供のケア」を求める傾向があった。④母子感染は2010年に現れた新たな感染経路で特に子供の感染者から「親が感染者と分かっているのになぜ自分を産んだのか」という「怒り」の声も聴かれた。【論文/Articles】
著者
丸山 真人
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院論叢. 国際学研究 = Meiji Gakuin review. International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.51-57, 1992-03-31

共同研究報告(1987-1990年度)『戦後日本の社会変動の研究―「高度成長」を鍵概念に―』
著者
孫 占坤
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.57, pp.97-100, 2020-10

【書評/Book Review】
著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.48, pp.91-109, 2015-10

豊かさを測るため,これまで経済的尺度(経済成長率や一人あたりGDP)が重視されたが,近年その不十分さが強く意識されるに伴って「幸福」についての関心が上昇し,関連研究も増加している。本稿は,経済学的視点のほか,思想史,倫理学,心理学,脳科学などの知見も取り入れながら考察した試論であり,概略次の主張をしている:(1)幸福を考える場合,その深さや継続性に着目しつつ(a)気持ち良い生活(pleasant life),(b)良い生活(good life),(c)意義深い人生(meaningful life; eudaimonia)の3つに区分するのが適当である。(2)このうち(c)を支える要素として自律性,自信,積極性,人間の絆,人生の目的意識が重要であり,これらは徳倫理(virtue ethics)に相当程度関連している。(3)今後の公共政策運営においては,上記(a)にとどまらず(b)や(c)に関連する要素も考慮に入れる必要性と余地がある一方,人間のこれらの側面を高めようとする一つの新しい思想もみられ最近注目されている。(4)幸福とは何かについての探求は,幅広い学際的研究が不可欠であり今後その展開が期待される。【研究メモ/Research Memoranda】
著者
秋月 望
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-14, 2020-03

【研究ノート/Research Note】
著者
VESEY Alexander
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.58, pp.1-30, 2021-03-31

In studies of early modern Buddhist social history, clerical-lay relations that center on the certification of danka (support families) are a major topic. The system of certification operated with general support from the Tokugawa bakufu and the many daimyo houses and it served as a means for keeping population records, but there is a long-standing proclivity among scholars to assess the danka system in negative terms. This assessment rests on examples of clerics who abused their position to extract wealth from lay families who were forced into being temple clients.This research paper draws upon a detailed clerical diary from a temple in Saitama and scholarship that provides data on phenomena such as the growth of empty (mujū 無住) temples to argue that peasants were not mere objects of subordination but also active agents with patronal authority who could and did exert influence over clerical/temple relations with the laity in rural villages.【論文/Article】
著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.46, pp.19-49, 2014-10

「自分にしてもらいたくないことは人に対してするな」(禁止型)あるいは「自分にしてもらいたいように人に対してせよ」(積極型)という格言がある。これは,洋の東西を問わず古くから知られた倫理命題であり,一般に黄金律(Golden Rule)と称されている。本稿の前半では,その生成と発展の歴史を簡単にたどるとともに,この格言の意義を考察した。その結果(1)禁止型を積極型へ明確に変更したのはキリスト教の聖書である,(2)黄金律は宗教や文化を超えて道徳の基礎となっているので普遍性があり,またそれは相互性,論理整合性,人間の平等性といった重要な原則も主張している,一方(3)自分と相手の価値観に差異がある場合にはそのルールの適用に留意が必要である,などを主張した。本稿後半では,黄金律よりも視野を拡大し,世界中の多くの宗教や文化に共通する規範になっている利他主義(他人の幸せに関心を払う主義ないしそのための行動)を取り上げた。そして,利他主義の動機をどう理解すべきかについて,多様な分野(社会科学,生物学,神経科学等)の研究や実験結果を展望することによって多面的に考察した。その結果(1)人間は利己主義的動機に基いて利他的行動を示す場合もある一方,他人の利益だけを考慮して行動するケースも確かにあること,(2)利他主義(与えること)は与える人の健康と幸福にとって良い効果を持つこと,(3)この(2)のことが利他主義の普遍性を支える一つの要因になっている可能性があること,などを述べた。【研究メモ/Research Memoranda】
著者
岡部 光明 OKABE Mitsuaki
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.21-58, 2009-03

本論文では,これまで日本経済の基調を形作る役割をしてきた日本企業を取り上げ,それをコーポレート・ガバナンス(企業統治)という視点にたって一連の論点を整理した。その結果(1)日本企業の行動を従来規律付けていた条件は1980 年代以降消滅した,(2)これに伴って企業のガバナンスが空白化し,それが1980 年代の資産価格バブルと1990 年代の長期不況の一要因になった,(3)近年は外国人による日本企業株式の取得増大などにより,株式市場の動向が企業の経営と行動を左右する傾向(英米型企業ガバナンスの色彩)が強まっている,(4)現在の日本企業の統治は,伝統的方式と英米的方式の混合型が増えるとともに統治スタイルの多様化が進んでいる,(5)今後日本企業が革新的な製品を生み出してゆくには,その統治方式を左右する金融環境ならびに法制度の整備が引き続き大きな課題である,などを主張している。