- 著者
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高橋 幸
- 出版者
- 日本女性学会
- 雑誌
- 女性学 (ISSN:1343697X)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, pp.23-37, 2022-03-31 (Released:2023-04-01)
- 参考文献数
- 22
ネオリベラリズム政権によってフェミニズムが簒奪され、「官製フェミニズム」が進む社会状況のなかで見られるようになった、メディア上のポストフェミニスト的言説パターンについて報告する。 英米では、バックラッシュ後の1990年代から、現代を「フェミニズム」以後の時代と捉えるポストフェミニスト的言説パターンが登場した。それは、大きく次の二つの特徴を持つ。第一に、「現代では性別にかかわらず実力次第で誰でも活躍できる」というネオリベラリズム的・個人主義的主張。第二に、恋愛や結婚、性の場面をおもに念頭に置きつつ、性別らしさを重視する主張である。また、「ポストフェミニスト」という語が人口に膾炙するようになった90年代のアメリカでは、マクロレベルで見ても、性別役割意識の低下が停滞するという動向の変化が起こっている。日本でも、2000年代のバックラッシュと、その後の政府主導の女性労働力化の促進のなかで、ポストフェミニスト的な言説パターンが見られるようになっており、性別役割意識の低下の停滞も見られる。2000年代日本の「めちゃ♥モテ」ブームを分析すると、「モテ」を目指して性的魅力を向上させようとする営みやコミュニケーションのなかで、性別二元論的な性別役割が再生産されていることがわかる。 このようなポストフェミニスト的言説パターンは、アンチフェミニズムとは異なる形でフェミニズムを無効化するように働く可能性がある。そのため、これに対する新たな対抗言説を構築していくことがフェミニズムの喫緊の課題となっている。