著者
釜野 さおり 山内 昌和 千年 よしみ 布施 香奈 小山 泰代 平森 大規 岩本 健良 藤井 ひろみ 申 知燕 三部 倫子 武内 今日子 石田 仁
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

性的マイノリティは学術的にも社会的にも注目されているが、現状把握に必要な全国を統計的に代表するデータはない。本研究では日本全体に一般化できるデータに基づいて、経済状況、健康状態、出生や移動などの人口学的行動や意識が、性的マイノリティ当事者と非当事者との間でどのように異なるのかを、統計的な裏付けにより明らかにすることを目指す。一般人口対象の無作為抽出による全国調査を実施し、性的指向および性自認のあり方(SOGI)が生活に及ぼす影響を定量的に示す。SOGIに関する調査で普及しているモニタ型ウェブ調査を実施し、無作為抽出調査の結果と比較する。SOGIを捉える設問を精緻化させ、ガイドラインを確立する。
著者
平森 大規 釜野 さおり 小山 泰代
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.5-25, 2023-07-15 (Released:2023-10-13)
参考文献数
18

本稿では、これまで筆者らが従事してきた研究を題材に、日本ではまだほとんど進められていない量的調査を通じた性的指向・性自認のあり方(SOGI) と家族研究の可能性を探った。日本の無作為抽出調査においてSOGIを測定する際の課題と測定方法を検討した研究、同性パートナーの有無の把握における課題を検討した研究、回答者のSOGIおよびカップルタイプ(女性間、男性間、男女間) 別に世帯・家族構成やジェンダー・家族意識等について検討した研究という3つの研究事例を提示した。日本では数少ない回答者のSOGIをたずねた無作為抽出調査である「大阪市民調査」およびその準備調査を用いてこれらの研究事例を検討した結果、既存研究の課題を乗り越えるべく、SOGIを分析軸にした家族研究を進めていくことの社会的・学術的意義が示された。
著者
釜野 さおり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-27, 2008
被引用文献数
3

本稿では,男女一対一の性関係を基盤にした関係と血縁に絶対的な価値をおき,ジェンダーに基づく役割分担の再生産が行われる「従来の家族」に対し,レズビアン家族・ゲイ家族の実践から何を問いかけることができるかを,先行研究などから実例を挙げて検討した。(1) レズビアンやゲイにとって友人やコミュニティが家族になっていること,(2) 血縁家族は精神的な支えになるとの前提が疑問視され,誰を「家族」と見なすのかの再考がなされること,(3) レズビアンやゲイが親になることで,「親=父親+母親」との前提が崩され,親子関係が「無の状態から交渉できるもの」となりうること,(4)ジェンダー役割を問い,日常の家事や育児に柔軟に対応するパートナー関係の実践があることを挙げ,これらが「従来の家族」に問いかける可能性があると論じた。最後に,レズビゲイ家族の実践が主流への同化か挑戦かの判断の難しさを述べた。
著者
釜野 さおり 小山 泰代 千年 よしみ 布施 香奈 石田 仁 岩本 健良 藤井 ひろみ 山内 昌和
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

性的指向と性自認に関しての学術的に信頼性のある情報が必要だが、日本では量的データに基づく知見の蓄積が乏しい。本研究では調査で性的指向と性自認のあり方(シスジェンダーかトランスジェンダーか)を捉える設問をフォーカス・グループ等を経て考案し、SOGI設問と、働き方、経済状況、心身の健康、自殺念慮、ジェンダー、家族、SOGI施策についての意識、いじめ被害や見聞き経験等を含む調査票を用いて、2019年に大阪市の住基台帳から無作為抽出した15000人を対象に郵送調査を実施し、4285人から回答を得た。学歴、収入、心身の健康等のSOGI別分析の結果を発表し、無作為抽出調査にSOGIを含める意義を示した。
著者
コー ダイアナ 釜野 さおり
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.124-134, 2013
被引用文献数
2

本稿では,成人子と親との関係に関する研究のレビューを通じて,母娘関係の研究では異性愛が前提とされていることを示し,娘が異性愛的理想を拒否する・それを達成できないことを視野に入れることで,母娘関係の研究に新たな課題を提起することを指摘した.筆者らが過去に実施した同性間の関係に関する質的調査のデータを用いて,(1)異性愛規範性は,異性愛の母親とレズビアンの娘の関係において強化されると同時に揺るがされること,(2)母娘関係において距離をもつことと親密性は排他的ではないこと,(3)娘から母親に向けた,同性愛的指向・同性とのパートナー関係の開示は複雑であること,(4)母と娘のジェンダーの共有が,異性愛規範を強化せずに親密性の促進につながる場合があること,(5)娘の女性パートナーは母娘関係に重要な影響を与える存在であることを,実例で示した.レズビアンの娘とその母親との関係に着目することは,家族のダイナミックスのクィア分析に有用であることが示唆された.
著者
釜野 さおり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.188-194, 2009-10-30 (Released:2010-10-30)
参考文献数
30
被引用文献数
3 2
著者
河口 和也 釜野 さおり 菅野 優香 清水 晶子 石田 仁 風間 孝 堀江 有里 谷口 洋幸 菅沼 勝彦 吉仲 崇
出版者
広島修道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究グループでは、調査クラスタが、性的マイノリティに関する意識について学術的方法を用いた全国規模調査を2015年3月に行った。政策クラスタは、男女共同参画及び人権施策やそのなかで性的マイノリティに対する具体的施策の遂行状況に関する自治体悉皆調査を2016年5月に行った。これらのプロジェクト遂行には、理論クラスタからも質問票作成と調査結果公表時には、ワーディングや伝達方式において示唆を得た。全国規模の意識調査については、東京と京都において一般およびメディア向けに調査報告会を開催し、2016年6月に報告書『性的マイノリティについての意識―2015年全国調査』として代表者のウェブサイトで公表した。
著者
コー ダイアナ 釜野 さおり
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.124-134, 2013
被引用文献数
2

本稿では,成人子と親との関係に関する研究のレビューを通じて,母娘関係の研究では異性愛が前提とされていることを示し,娘が異性愛的理想を拒否する・それを達成できないことを視野に入れることで,母娘関係の研究に新たな課題を提起することを指摘した.筆者らが過去に実施した同性間の関係に関する質的調査のデータを用いて,(1)異性愛規範性は,異性愛の母親とレズビアンの娘の関係において強化されると同時に揺るがされること,(2)母娘関係において距離をもつことと親密性は排他的ではないこと,(3)娘から母親に向けた,同性愛的指向・同性とのパートナー関係の開示は複雑であること,(4)母と娘のジェンダーの共有が,異性愛規範を強化せずに親密性の促進につながる場合があること,(5)娘の女性パートナーは母娘関係に重要な影響を与える存在であることを,実例で示した.レズビアンの娘とその母親との関係に着目することは,家族のダイナミックスのクィア分析に有用であることが示唆された.
著者
釜野 さおり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.200-215, 2017-10-31 (Released:2018-11-08)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本稿では,「性的マイノリティについての意識:2015年全国調査」のデータを用いて「同性愛・両性愛フォビア度尺度」と「家族・ジェンダー保守度尺度」を生成し,各尺度得点を被説明変数とした重回帰分析を行った(n=1074).男性である,高齢である,同棲の経験がない,政治意識が保守的である,セクシュアル・マイノリティが周りにいないと認識していると,家族・ジェンダー保守度と同性愛・両性愛フォビア度が高いことがわかった.婚姻地位,都市規模,信仰・信心の有無は,いずれの尺度においても関連性が確認できなかった.学歴,就業の有無,主な仕事の種類,宗教心の重要性,居住地域については,2つの尺度間で,また,統制する変数によって結果が異なった.検討した変数すべてを含むモデルの標準化係数を見ると,同性愛・両性愛フォビア度に対する説明力が高いのは,年齢,セクシュアル・マイノリティが周りにいるか否か,性別の順であった.
著者
河口 和也 釜野 さおり 鈴木 秀洋 石田 仁 風間 孝 堀江 有里 谷口 洋幸
出版者
広島修道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究チームは、SOGI意識調査グループとSOGI施策調査グループからなる。計画としては、二つの調査グループが並行して調査実施を行う予定であったが、2019年度においては、SOGI意識調査の全国大規模意識調査を中心に実施していくこととした。施策チームのメンバーの在外派遣研究などにより人的資源の確保が難しくなったこと、さらに意識調査の調査費用を再試算した結果、回答の回収数を確保するためには当初の調査予算では実施することが難しいことが明らかになった。(大きな要因としては調査実施時期の年度内に消費増税が実施されたこと。)したがって、2019年度には、施策調査の実施を縮小することにした。2019年度においては、SOGI意識調査グループでは、全国規模の意識調査に向けて、調査票の最終確定を行い、前年度までに候補が挙げられていたなかから、依頼する調査委託業者を選定した。その後、調査実施に向けた諸手続きに関して、調査委託業者と科研研究チームおよび大学所管事務のあいだで進めた。本調査は、全国市町村区に在住する20歳~79歳の男女5500名(国籍は問わない)に対して、住民基本台帳を用いた層化2段無作為抽出(全国275地点)方法を用いてサンプリングを行い、2019年6月から7月(6月27日~7月15日:予備期間~7月22日)にかけての調査時期をもうけて行った。質問数は、120も程度でA4版16頁の質問票を対象に配布し、調査員による訪問留置訪問回収法(郵送回収、ウェブ併用)で回収した。回収数は2,703名で、回収率は49.1%となった。回収方法の内訳は次の通りである。訪問回収2,231、郵送返送305、WEB回答167。(回収数には30の代理回答を含んでいる)。意識調査は、予定通り遂行され、分析のためのデータクリーニングなどの作業を行った。
著者
風間 孝 菅沼 勝彦 河口 和也 堀江 有里 清水 晶子 谷口 洋幸 釜野 さおり 石田 仁
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、セクシュアリティおよびジェンダーの軸と、階層・階級、人種・民族、地域、国籍といった軸とを交差させるなかで、日本においてクィア・スタディーズを展開していくことを目的とした。その結果、法制度や社会調査、社会制度設計において、理論研究と実証研究の問題意識とが交流のないままに研究が進められている現状が明らかとなり、研究成果を他の学問分野および(市民)社会領域と交流させていくことの意義と緊要性が確認された。
著者
釜野 さおり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-27, 2008-04-30 (Released:2009-08-07)
参考文献数
51
被引用文献数
3 3

本稿では,男女一対一の性関係を基盤にした関係と血縁に絶対的な価値をおき,ジェンダーに基づく役割分担の再生産が行われる「従来の家族」に対し,レズビアン家族・ゲイ家族の実践から何を問いかけることができるかを,先行研究などから実例を挙げて検討した。(1) レズビアンやゲイにとって友人やコミュニティが家族になっていること,(2) 血縁家族は精神的な支えになるとの前提が疑問視され,誰を「家族」と見なすのかの再考がなされること,(3) レズビアンやゲイが親になることで,「親=父親+母親」との前提が崩され,親子関係が「無の状態から交渉できるもの」となりうること,(4)ジェンダー役割を問い,日常の家事や育児に柔軟に対応するパートナー関係の実践があることを挙げ,これらが「従来の家族」に問いかける可能性があると論じた。最後に,レズビゲイ家族の実践が主流への同化か挑戦かの判断の難しさを述べた。