著者
川上 聖 安原 一哉 秋間 健 村上 哲 小峯 秀雄 池永 貞二
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.109-116, 2005

本研究は,タイヤシュレッズを(1)ジオネットで補強した水平地盤として適用した場合,(2)壁体のない盛土地盤((1)片側補強と(2)両側補強)として使用した場合を想定して行った小型支持力模型試験(変位制御)を行った結果とその考察結果を報告したものである.本研究の結果,以下のことがわかった.1) タイヤシュレッズのみで構成された水平地盤でも締固めとジオシンセティックス補強を施すことによって支持力の向上につながる.しかし,支持力改善に及ぼす締固め効果に比べると,補強効果は大きくない.ただし,締固めと補強を併用することによって,支持力改善効果が顕著になる.2) 盛土の壁面に土のうを用いた補強を施すことによって締固めたタイヤシュレッズ地盤はより安定する.3) 片側土のう補強盛土地盤に比べると,両側土のう補強盛土地盤では,載荷に伴う土のう部分の水平変位は,締固めの程度に関係なく極めて小さい.よって,この方法によれば,壁体がなくても堅固な盛土の構築が可能であることが示唆される.
著者
林 重徳
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-12, 2003

福岡県太宰府市に現存する特別史跡"水城"は、高さ約10~14m、全長約1.20kmにも及ぶ大規模な盛土構造物であり、かつ千数百年を経過した土構造物として、施工された年を確定できる数少ない事例の一つである。この水城堤の築造には、大陸の影響を強く受けた様々な工夫と当時の建設技術が駆使されている。また、福岡県嘉穂郡桂川町に在る特別史跡"王塚古墳"の石室からは、精巧かつ鮮やかな装飾壁画が発見された。そこには、千数百年を経てもなお鮮やかな色彩の保存を可能にした石室内の環境を維持する巧妙な工夫が用いられている。しかし、当然ながら、いずれにおいても当時の設計・施工図および記録といった類いのものは一切無い。これらの2つの特別史跡・遺構に関する多くの調査記録および試験結果等について、現代の地盤工学・建設技術の視点から、古代の建設技術と工夫を解釈し、当時の工事を指揮監督した設計者・指導者・の意図を推察する。また、水城の堤体から採取した不撹乱試料の土質試験の結果等より、盛土の土質特性に及ぼす年代効果について考察する。
著者
龍岡 文夫 舘山 勝 平川 大貴 渡辺 健治 清田 隆
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.205-210, 2009 (Released:2010-01-22)
参考文献数
11
被引用文献数
4 7

GRS一体橋梁は、従来形式の橋梁を「構造工学の立場から改良した一体橋梁は連続桁とRC竪壁(壁面工)が一体の一体橋梁(Integral bridge)」と「地盤工学の立場から改良したGRS擁壁を橋台とした橋梁」を合体させたものである。GRSは、Geosynthetic-Reinforced Soil(ジオシンセティックス補強土)を意味する。GRS一体橋梁の構造的特徴は、連続桁・壁面工と壁面工背面に定着したジオシンセティックスで補強した盛土の一体化である。支沓の省略と連続桁の使用により建設・維持費が削減される一方、構造的に安定化している。すなわち、竪壁は多層補強材で支持された小支点間距離多支点支持の連続梁であるため構造が簡略化できる。盛土補強により、橋桁の温度収縮膨張に伴う水平繰返し変位による盛土の主働崩壊を防げ残留沈下を極小化し、常時の交通荷重による壁面工背後の盛土の沈下を防ぎ、壁面工は上昇した受働土圧に対して安定を保つ。橋桁・竪壁・補強盛土の全体系が一体構造であるため、耐震性も高い。施工上の特徴は、補強盛土の建設による盛土・支持層の変形が終了した後、剛で一体のRC壁面工を補強盛土と一体化になるように建設し、次に橋桁を壁面工と一体化するようにして建設する、と言う段階施工である。段階施工により、壁面近くの盛土は良く締固まり、壁面工と補強材の相対沈下による損傷を防ぎ、杭基礎の必要性が減じる。
著者
相澤 宏幸 錦織 大樹 平川 大貴 相馬 亮一 園田 陽介 龍岡 文夫
出版者
Japan Chapter of International Geosynthetics Society
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.77-82, 2007
被引用文献数
1

RC橋台と橋桁を一体化したインテグラル橋梁(一体橋梁)は、経済的・構造的な弱点となる支承部及び伸縮装置がない。一方、大気温変動に伴う橋桁の熱伸縮により壁面工に強制繰返し水平変位が生じて、背面盛土に過大な沈下と土圧増加が生じる。このため、壁面工に構造的損傷が生じる虞が生じ、壁面工下端が前方に押し出される可能性が、あるいは壁面工が杭支持されていれば杭頭部が損傷する虞が出てくる。この問題を解決するために、「壁面工に定着したジオシンセティックス面状補強材で補強した盛土と一体橋梁を組み合わせたGRS一体橋梁(Geosynthetic-Reinforced Soil Integral Bridge; GRS Integral Bridge)」を提案している。室内模型実験を行い、壁面工上端に強制繰返し水平変位を与えた。(1)壁面工下端の水平及び鉛直方向の自由度を高めて壁面工の転倒+下端滑動モードが生じる場合と、(2)強固な杭基礎がある場合を想定して壁面工下端をヒンジ固定して転倒モードが生じる場合を検討した。背面盛土が無補強、あるいは補強しても補強材が壁面工に非定着の場合では、(1)の載荷モードでは、壁面工下端が主働方向に押し出されて盛土に過大な沈下が生じた。(2)の載荷モードでは、盛土の沈下は若干抑制されたが、残留土圧が非常に大きくなり、壁面工及び杭頭部が損傷する可能性が生じた。一方、補強材を壁面工に定着させた場合では、(1)と(2)のモードの何れでも、盛土の残留沈下は殆ど生ぜず、土圧は上昇しても構造系は非常に高い安定性を示した。