著者
島岡 隆行 中山 裕文
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-10, 2014 (Released:2015-04-27)
参考文献数
13

廃棄物埋立地の遮水工に遮水シートが用いられてから約40年が経過し,今では最も一般的で,多くの実績を有する遮水材料となっている.その間,遮水シートの材料特性に関する知見に比べて,廃棄物埋立地への遮水材料としての適用に関する知見は不足していた.本報では,実埋立地の遮水シートを対象とした劣化の実態と耐久性の予測手法の提案を始め,リモートセンシング技術を活用した精度高い遮水シート敷設時の接合検査法の開発や広範囲にわたる迅速な遮水工の管理手法を紹介している.また,廃棄物処分場が抱える問題と解決のための遮水シートに係る研究課題について述べている.
著者
宮川 智史 久保 哲也 森 芳徳 宮武 裕昭
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.45-52, 2013 (Released:2014-11-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

近年,豪雨や大規模な地震等が盛土等の災害を大規模化させ,社会的影響を拡大させている.災害時には,施工の効率性,経済性から大型土のうを用いた復旧が応急復旧として多くの現場で採用されている.過去の復旧事例より,大型土のうを用いた復旧は,平地に比べ制約条件の厳しいと思われる河川沿いや山地で多く採用されていることが確認された.大型土のうを用いた復旧は,仮設構造物であるため,本復旧時に撤去することが分かっていても応急復旧として有効な方法である.本研究では,過去の災害復旧事例を分析し,大型土のうの復旧現場でのニーズを把握するとともに,大型土のうを存置させてそのまま本復旧へ適用できるよう,復旧方法を提案した.そして提案した復旧方法が本復旧への適用できる可能性を確認した.
著者
梅崎 健夫 河村 隆 西田 健吾 早川 典 石井 大悟 志賀 信彦
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.167-174, 2013 (Released:2014-11-06)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

水中の陽イオンおよび陰イオンを吸着除去する天然ゼオライトおよび多孔質ケイ酸カルシウムをパルプにす き込んだゼオライト機能紙およびケイ酸カルシウム機能紙を開発した.湖沼や河川などの富栄養化の要因であ る窒素およびリンに対するこれら上記2種類の多孔質担持機能紙の有効性を検証するため端緒として,アンモ ニア態窒素(NH4-N)およびリン酸態リン(PO4-P)を含む水溶液に対する吸着試験を実施した.試験結果に基 づいて,機能紙の吸着特性について検討した.主な結論として,ゼオライト機能紙へのNH4-Nおよびケイ酸カ ルシウム機能紙へのPO4-Pの吸着はそれぞれ短時間で生じること,水溶液中にNH4-NおよびPO4-Pの両者が混在 する場合においても互いの吸着を妨げないこと,一旦吸着すると容易に剥離しないこと,を明らかにした.
著者
河村 隆 梅崎 健夫 水谷 俊明 早川 典 石井 大悟 志賀 信彦
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.183-191, 2014 (Released:2015-04-27)
参考文献数
14

閉鎖性水域における富栄養化の原因物質の一つである水中のアンモニア態窒素を吸着できる天然ゼオライトをパルプに担持させたゼオライト機能紙を用いた水質浄化対策を提案した.本対策は,ゼオライト機能紙とジオシンセティックスを用いて作製した簡易浄化ユニットを,富栄養化が問題となっている湖沼の流入河川に繋がる小規模な水路などに設置するものである.本文では,簡易浄化ユニットの適用性を検討するために,ゼオライト機能紙の流水に対する耐久性試験と簡易浄化ユニットの小型模型にアンモニア態窒素を含む水溶液を通水させる吸着試験を実施した.それらの結果に基づいて,簡易浄化ユニットを用いた富栄養化対策としての適用が期待されることを明らかにした.
著者
曽我 大介 陶山 雄介 阪田 暁 龍岡 文夫 西岡 英俊
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.153, 2017 (Released:2019-01-14)
参考文献数
15

九州新幹線(西九州ルート)は,武雄温泉~長崎間の延長約66kmの路線で現在建設中である.その中の原種 架道橋は,諫早市内(武雄温泉起点47km263m付近)における短いトンネルが連続した約70mの谷あい部に位置 するPC桁を用いたGRS一体橋梁である.これまでのGRS一体橋梁においては,RC桁やSRC桁を用いた事例はあ るが,PC桁は初めての採用となる.本論文では,これまでのGRS一体橋梁の採用実績を踏まえ,鉄道構造物で 初めての事例となるPC桁を用いたGRS一体橋梁の設計・施工について報告する.
著者
川口 貴之 中村 大 畑中 将志 山崎 新太郎 山下 聡 三上 登 上野 邦行
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.187-194, 2013 (Released:2014-11-06)
参考文献数
17

侵食対策として急斜面に施工された,ある連続繊維補強土の一部が完成から半年程度で崩落した.崩落箇所 を詳細に調べたところ,背後の地山からの湧水を考慮して設置されていた裏面排水材に赤褐色のゲル状物質が 付着しており,排水能力が低下した可能性が示唆された. そこで本研究では,まず始めに湧水とゲル状物質の性質を簡易的に調査した.次に,現地で裏面排水材の試 験片に地山からの湧水を流すことで目詰まりを再現し,実験室内で垂直方向透水性能試験と面内方向通水性能 試験を実施した.その結果湧水は還元状態にあり,ゲル状物質は鉄イオンの酸化に伴う沈殿物であること,排 水材の透水・通水性能はこの物質の付着によって短期間で急激に低下することが分かった.
著者
林 重徳
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-12, 2003-12-04 (Released:2009-12-17)
参考文献数
14

福岡県太宰府市に現存する特別史跡“水城”は、高さ約10~14m、全長約1.20kmにも及ぶ大規模な盛土構造物であり、かつ千数百年を経過した土構造物として、施工された年を確定できる数少ない事例の一つである。この水城堤の築造には、大陸の影響を強く受けた様々な工夫と当時の建設技術が駆使されている。また、福岡県嘉穂郡桂川町に在る特別史跡“王塚古墳”の石室からは、精巧かつ鮮やかな装飾壁画が発見された。そこには、千数百年を経てもなお鮮やかな色彩の保存を可能にした石室内の環境を維持する巧妙な工夫が用いられている。しかし、当然ながら、いずれにおいても当時の設計・施工図および記録といった類いのものは一切無い。これらの2つの特別史跡・遺構に関する多くの調査記録および試験結果等について、現代の地盤工学・建設技術の視点から、古代の建設技術と工夫を解釈し、当時の工事を指揮監督した設計者・指導者・の意図を推察する。また、水城の堤体から採取した不撹乱試料の土質試験の結果等より、盛土の土質特性に及ぼす年代効果について考察する。
著者
梅崎 健夫 河村 隆 河野 剛志 河崎 彰 野村 忠明 大寺 正志 藤森 徳雄 細野 武久 西井 淳 境 大学 松永 斉 岡村 昭彦 近藤 誠二
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.119-126, 2008 (Released:2008-12-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

湖沼などの閉鎖性水域では富栄養化に伴う水質汚濁や悪臭などが問題となっており,その対策として,排水中の窒素・リンの規制や下水道の整備が推進されているが,あわせて水域内の浄化対策がさらに必要である.本文では,ジオテキスタイルと天然ゼオライトを用いた人工なぎさを提案する.人工なぎさは,天然ゼオライトとそこで生成される生物膜の浄化効果を期待して,天然ゼオライトもしくは玉砂利を充填したジオテキスタイル製大型土嚢と透水シートにより湖岸に囲繞堤を築造し,堤内に天然ゼオライトを敷設するものである.諏訪湖湖岸において実施した実証実験について論じ,現地調査および水質調査の結果に基づいて,提案法の有効性を示した.
著者
平野 孝行 吉田 直人 土橋 聖賢 藤井 二三夫 金澤 伸一
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.135-142, 2013 (Released:2014-11-06)
参考文献数
10
被引用文献数
3

建設発生土の高度な有効利用を図る目的で開発された短繊維混合補強土工法は,土または安定処理土にポリ エステル等の短繊維を混入することで降雨・流水に対する耐侵食性や強度・靭性(ねばり強さ)の向上に期待 するものである.これまでに堤防・法面のガリ侵食等による崩壊抑制のための試験施工としての実績がある. 本報告は,堤防・道路等法面の被覆材,多自然型法面の基盤構築,土構造物補強等へのさらなる有効利用の ために,より短繊維および固化材添加率の低い混合補強土の耐侵食性能や,強度・変形特性についてとりまと めたものである.長期現場試験施工に基づく耐侵食性能の検証と,静的圧縮試験・繰り返し三軸試験により強 度増加効果と靭性・拘束効果の付与を確認した.
著者
佐藤 淳 中野 泰雅
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.13-22, 1998

東武鉄道では、東武野田線の輸送力増強・混雑緩和および今後の輸送需要に対応するため、岩槻~春日部間(7.4km)の複線化工事を施工中である。<br>本工事区間には、高築堤区間(延長約600m・最大高さ約8.5m)があり、地質は有機質シルト・腐植土および凝灰質粘土から成る軟弱地盤である。また線路際には、民家が密集しているため、通常の土留擁壁による腹付線増は施工性、施工環境、経済性、工期等から問題があると考えられた。<br>そこで本工事では、近年採用実績が積み重ねられつつあり、且つ耐震性にも優れていると評価されている補強盛土工法を採用することとなった。<br>本論文では、軟弱地盤上における高築堤区間において、補強盛土工法による腹付線増を行うにあたっての経緯、検討結果および施工計画、方法等について述べることとする。
著者
橋詰 文伯 神保 信雄 沼澤 秀幸
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオテキスタイルシンポジウム発表論文集 (ISSN:09137882)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.77-84, 1992

本報告は、関西国際空港株式会社の空港島建設に関連して施工の図られた、海底軟弱地盤の改良工事に関するものである。即ち、この施工工区の海底地盤は、軟弱土が厚く堆積している所であつたため、バーチカル・ドレーン式工法を適用して、この工区内の総てを改良することになつていた。そのため、この工区内の一部分について、ジオテキスタイル材で造られた、ジオ・ドレーンと称するプラスチツク・ボード・ドレーン材を用い、この地盤改良工事を実施した。その結果、この地区内の地盤は、ほぼ期待通り沈下が促進され、粘着力値の増加度合も、まず予想通り得られ、好ましい地盤改良工法であることが確認でき、これからのこの種の工事に対して、大きな期待の持てるものであることが判明した。<br>本文はこの時の施工状況や、この時実施した圧密動態観測において取得した計測結果等を取りまとめ御紹介する。
著者
大野 孝二 宮田 喜壽 小浪 岳治 弘中 淳市 金子 智之
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.183-188, 2010

精度の高いライフサイクルコスト評価には,初期建設・維持管理・災害復旧などに要する各種費用の算定法が重要になる.本研究では,ジオグリッド補強土壁を道路構造物に適用したケースを想定し,上記コストの算定法について検討した.一連の検討において,初期建設費・維持管理費に関しては,国土交通省の技術報告書や建設物価を参照して検討した.災害復旧費に関しては,全面復旧を行う場合を対象に費用の算定法を検討した.本論文はそれらの費用の標準的算定法を示し,ジオグリッド補強土壁,L型擁壁,無補強盛土における各種費用を比較する.本文の内容は,IGS日本支部技術委員会第4ステージ(2007-2009)の成果の一部である.
著者
川上 聖 安原 一哉 秋間 健 村上 哲 小峯 秀雄 池永 貞二
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.109-116, 2005

本研究は,タイヤシュレッズを(1)ジオネットで補強した水平地盤として適用した場合,(2)壁体のない盛土地盤((1)片側補強と(2)両側補強)として使用した場合を想定して行った小型支持力模型試験(変位制御)を行った結果とその考察結果を報告したものである.本研究の結果,以下のことがわかった.1) タイヤシュレッズのみで構成された水平地盤でも締固めとジオシンセティックス補強を施すことによって支持力の向上につながる.しかし,支持力改善に及ぼす締固め効果に比べると,補強効果は大きくない.ただし,締固めと補強を併用することによって,支持力改善効果が顕著になる.2) 盛土の壁面に土のうを用いた補強を施すことによって締固めたタイヤシュレッズ地盤はより安定する.3) 片側土のう補強盛土地盤に比べると,両側土のう補強盛土地盤では,載荷に伴う土のう部分の水平変位は,締固めの程度に関係なく極めて小さい.よって,この方法によれば,壁体がなくても堅固な盛土の構築が可能であることが示唆される.
著者
林 重徳
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-12, 2003

福岡県太宰府市に現存する特別史跡"水城"は、高さ約10~14m、全長約1.20kmにも及ぶ大規模な盛土構造物であり、かつ千数百年を経過した土構造物として、施工された年を確定できる数少ない事例の一つである。この水城堤の築造には、大陸の影響を強く受けた様々な工夫と当時の建設技術が駆使されている。また、福岡県嘉穂郡桂川町に在る特別史跡"王塚古墳"の石室からは、精巧かつ鮮やかな装飾壁画が発見された。そこには、千数百年を経てもなお鮮やかな色彩の保存を可能にした石室内の環境を維持する巧妙な工夫が用いられている。しかし、当然ながら、いずれにおいても当時の設計・施工図および記録といった類いのものは一切無い。これらの2つの特別史跡・遺構に関する多くの調査記録および試験結果等について、現代の地盤工学・建設技術の視点から、古代の建設技術と工夫を解釈し、当時の工事を指揮監督した設計者・指導者・の意図を推察する。また、水城の堤体から採取した不撹乱試料の土質試験の結果等より、盛土の土質特性に及ぼす年代効果について考察する。
著者
龍岡 文夫 舘山 勝 平川 大貴 渡辺 健治 清田 隆
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.205-210, 2009 (Released:2010-01-22)
参考文献数
11
被引用文献数
4 7

GRS一体橋梁は、従来形式の橋梁を「構造工学の立場から改良した一体橋梁は連続桁とRC竪壁(壁面工)が一体の一体橋梁(Integral bridge)」と「地盤工学の立場から改良したGRS擁壁を橋台とした橋梁」を合体させたものである。GRSは、Geosynthetic-Reinforced Soil(ジオシンセティックス補強土)を意味する。GRS一体橋梁の構造的特徴は、連続桁・壁面工と壁面工背面に定着したジオシンセティックスで補強した盛土の一体化である。支沓の省略と連続桁の使用により建設・維持費が削減される一方、構造的に安定化している。すなわち、竪壁は多層補強材で支持された小支点間距離多支点支持の連続梁であるため構造が簡略化できる。盛土補強により、橋桁の温度収縮膨張に伴う水平繰返し変位による盛土の主働崩壊を防げ残留沈下を極小化し、常時の交通荷重による壁面工背後の盛土の沈下を防ぎ、壁面工は上昇した受働土圧に対して安定を保つ。橋桁・竪壁・補強盛土の全体系が一体構造であるため、耐震性も高い。施工上の特徴は、補強盛土の建設による盛土・支持層の変形が終了した後、剛で一体のRC壁面工を補強盛土と一体化になるように建設し、次に橋桁を壁面工と一体化するようにして建設する、と言う段階施工である。段階施工により、壁面近くの盛土は良く締固まり、壁面工と補強材の相対沈下による損傷を防ぎ、杭基礎の必要性が減じる。