著者
奥田 進一
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University:politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.83-98, 2018-03-15

江戸時代から明治期にかけての農村において,全国的に「地割制」という土地慣行が存在したことが知られている。これらは明治の地租改正とその後の耕地整理事業とともに急速に姿を消すが,沖縄では昭和最末期まで存在していたことが確認されている。これは,沖縄の地割制と本土の地割制とに差異があることを意味しているとともに,沖縄ではなぜ地割制が最近まで存在していたのかという疑問をも意味している。そこで,本稿では,本土と沖縄の地割制とを分けて史的に精査して,前者は石高制とともに発生生成してきたものであるのに対して,後者は石高制とは無縁のものであったことを実証し,さらに沖縄においては「家」制度が確立しなかったために,「家」制度を基盤としない地割制が往古より存在し,それが比較的今日まで残存するに至ったということを検証した。つまり,古くからの沖縄の家族制度を明らかにするとともに,それに基づく独特の農地利用慣行について,主に法学的見地から解明したものである。
著者
長 友昭
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University:politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.119-141, 2018-03-15

近時話題となっている所有者不明土地問題については,従来から土地の処理の現場に関わる,各種団体や行政機関の問題の把握が主となっていたが,最近は,それらの委員会の専門委員などとして民法,行政法,憲法学者が招かれ,法制的議論が進められるようになってきた。ここでの議論を委員の研究成果や議事録の分析,会議の傍聴により追いかけて,その方向性を把握した。すなわち,今後の新制度の指針となるものとして,農業経営基盤強化促進法における利用権の設定が挙げられることから,この利用権の運用実務とその問題点を検討し,利用権の期間の長期化の可否に関する注意点を明らかにした。さらに民法上の共有,相続および近時の改正点,ならびに不動産登記法や近時改正のあった土地改良法や森林法などの現行法の解釈と法体系上のありようを検討し,今後目指される新制度との具体的な異同および類似性と親和性を明らかにした。
著者
高久 泰文
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.130-138, 2005-03-31

本講演の要旨は「平和憲法」と言われて来ている「日本国憲法」の第九条はどう解釈されてきており,また,現在はどう解釈されているのかと言うことである。なお,憲法第九条の解釈を問題とするときには必ず我が国の「防衛及び安全はどうあるべきか」が論ぜられるのであるが,「法の厳密な解釈論」からすれば,これは「解釈論」ではなくて「立法論」ないしは「立法政策論」であり,従って,本講演においてもこの両者は区別することとし,第九条の解釈が中心となるが,憲法前文及び第六十六条第二項の解釈にも触れる必要がある。第九条の解釈については,以下の項目に従って論ずることとする。I 平和主義の原理及び憲法改正の限界論 II 戦争の放棄 III 戦力の不保持 IV 交戦権の否定
著者
川又 新一郎
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-30, 2006-03-31
被引用文献数
1

租税は公共部門の支出を賄うと同時に、すべての社会構成員の経済行動を変化させる強力な政策手段である。後者の面から、改めて租税のあり方(租税原則)に関して考える。租税原則は結局、効率性、公平性に集約できる。現実の制度としては簡素も重要である。これらの租税原則の間にあると言われる矛盾trade offの関係は必ずしも重要でない。しかし、現実には、租税制度はこれらの租税原則の名の下に、政治的意思決定過程により決まり、租税原則とはかけ離れたものとなる。最後に、公平性に関して、職業に基づく所得税負担の差(クロヨン)の推計を試みる。所得再分配効果を持つ多くの政策は所得税負担を基準とし、また、財政支出面でも少数者の利益を重視する政策があるため、その負担の差は増幅される。今後、公共部門の支出増加が見込まれるが、支出の効率化、負担の増加いずれを選択するにせよ、改めて租税原則の観点から個別の租税を評価する必要がある。
著者
高久 泰文
出版者
拓殖大学
雑誌
政治・経済・法律研究 (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.77-177, 2008-01