著者
藤本 眞一 加藤 巳佐子 石川 貴美子 原岡 智子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.544-556, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
12

目的 保健所は,公衆衛生活動の中心的機関として地域住民の生活と健康に極めて重要な役割をもっている。平成 5(1993)年度に広島県において,全国で初めて保健所と福祉事務所が統合され「総合福祉保健センター」が設置されて以降,「平成の大合併」などにより都道府県立統合組織が構築されてきた。そこで,その組織と権限の実態を明らかにした上で,今後のあり方を考察することを目的とした。方法 インターネットにより都道府県ポータル•サイト等から平成23(2011)年度当初の保健所や福祉事務所の組織実態を都道府県保健所単位で抽出•分類し主な保健•衛生に関する権限について調査した。さらに町村部において,保健所と福祉事務所から提供されるサービスが,いずれの機関から提供されているかを調査した。結果 全国373都道府県立保健所が存在し,単独組織はその僅か 1/4 であった。統合形態としては,福祉事務所と保健所が一旦結び付いた上で総合事務所に統合される形態が約 4 割を占め,中には 3 つの保健所がひとつの総合事務所に統合されている例もあった。統合組織を構築しても,権限をその長に委任し直したところは約 1/4 であった。法令上福祉事務所ではないのに「保健福祉事務所」等の名称である統合組織は,保健所の統合組織の 1/3 を占めていた。福祉事務所に関しては中国地方を中心に町村自らの設置が進んでおり,道府県において福祉事務所と統合する理由がなくなってきている。また福祉事務所の社会福祉法上•名目上の位置付けと,実質上の福祉事務部門との位置付けの差異が目だった。結論 保健所を含めた組織統合理由は行政改革として組織数を減少させるためと推測された。道府県が,福祉事務所ではないのに,福祉事務所を想像させる紛らわしい名称の統合組織を作ったり,本来の福祉事務所でない場所にある統合組織そのものを法令上,福祉事務所と位置付けることは,住民に無用の混乱を生じさせる恐れのある対応であると考えられた。組織統合しても権限が保健所長に放置されたままであることは,保健•福祉サービスの一体的提供を理念としていない証拠であり,権限委任の見直しができないような統合組織の構築は無意味である。今後は,健康危機に関係する生活衛生関係業務などにも着目して統合を実施すべきである。
著者
山本 覚子 藤本 眞一 神尾 友佳 小窪 和博 稲葉 静代 藤原 奈緒子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.371-376, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
27

目的 全国の保健所およびその統合組織の実態を把握し,保健所の重要な任務である健康危機管理の体制を今後とも推進するためのより良い組織および権限付与のあり方を提言していくことを目的とした。方法 全国の保健所設置主体,合計123都道府県市区(以下,「県市区」という。)に郵送による自記式調査を実施し,平成14年10月現在の,各地方自治体の保健所と福祉事務所等の統合組織(以下,「統合組織」という。)の実態,および名称等について情報を得た。それらの調査資料をもとに,各県市区の健康危機管理対応のあり方を考察した。結果 112県市区(全都道府県,48市,17区)から回答(回収率91.0%)があった。統合組織は,市区では 7 市 1 区,都道府県では31府県存在していた。統合組織の長は,統合組織全体では医師34.7%,事務吏員63.5%,医師以外の技術吏員1.6%であった。統合組織の長と保健所長との間の情報提供のルールをあらかじめ作っているところはなかった。外部からの電話による問い合わせや,文書送付時の名称は,統合組織名を使用しているところが多かった。統合組織名は様々であったが,富山県や横浜市では,法律上の保健所の名称として「保健所」の名称は使用せず,それぞれ統合組織名である「厚生センター」,「福祉保健センター」を使用していた。考察・結論 保健所と福祉事務所の組織統合については,市区ではあまり進んでいなかったが,都道府県では31府県で,組織統合があり,約 7 割を占めており,単独の組織として保健所を考えることはもはや無意味である。統合形態としては,今後「ミニ県庁型」の組織統合が流行するものと予想される。また,統合組織の長からみた保健所長の位置付けから,健康危機発生時に,敏速な対応ができるのか疑問が残る。さらに,「○○保健所」と名乗らない「保健所」もあり,重大な問題があると考える。
著者
藤本 眞一 森田 孝夫 中村 忍
出版者
奈良医学会
雑誌
Journal of Nara Medical Association (ISSN:13450069)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.9-14, 2009-04-30

奈良県立医科大学の目指す地域基盤型医療教育について概説した.本学では,平成18年度から「MDプログラム奈良2006」として,「6年一貫教育」,「成人教育学に基づいた教育」,「地域を基盤とした教育(Community Based Education」の3つの方針のもとにカリキュラム改革を進めてきた.本稿では,その重要な柱の一つである地域基盤型医療教育の中での新しい試みとして, 1)メンター制度, 2)クリニック実習, 3)ぬいぐるみ病院実習, 4)保育所実習, 5)ホスピス実習, 6)健康相談実習などを中心に説明している.これらの,新企画を実りあるものにするためには,関連諸施設の緊密なネットワークが必須である.今後,さらに地域基盤型医療教育を本学で発展させるために,e-learningシステムの開発も重要であると考える.
著者
森田 孝夫 藤本 眞一 城島 哲子 吉川 正英 石指 宏通 赤井 靖宏 青山 美智代 白嶋 章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.268, pp.17-22, 2009-10-30

チーム基盤型学習(TBL)は個人学習、グループ学習、全体セッションの三つの過程からなるインタラクティブな授業方法である。「LENONシステム」((株)寺田電機製作所)はレスポンスアナライザーの一種で、クラスメンバーの意見を「face to face」で瞬時に把握できるため双方向対話型授業に有用であり、TBLにおいては全体セッションを効果的に運営するために用いられていた。今回、TBLの「グループ学習」で用いる「PCスクラッチカード」を新たに開発し「LENON」に追加したため、「LENON」はTBLのすべてのプロセスを支援できるツールとなった。「LENON」によるTBLの支援の概要について報告する。