著者
片岡 知守 山口 誠之 遠藤 貴司
出版者
東北農業研究センター
雑誌
東北農業研究センター研究報告 (ISSN:13473379)
巻号頁・発行日
no.107, pp.15-28, 2007-03
被引用文献数
1

「萌えみのり」は東北農業研究センターにおいて、多収で良食味の「南海128号」と耐倒伏性に優れ良食味の「はえぬき」を交配し、その後代から育成された粳品種である。2006年に"水稲農林416号"として命名登録された。出穂期と成熟期は育成地(秋田県大仙市)では「ひとめぼれ」、「はえぬき」に近い"中生の晩"に属する。いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pia、Pii"と推定され、圃場抵抗性は葉いもちが"やや弱"、穂いもちが"中"、耐冷性は"強"で、穂発芽性は"難"である。「ひとめぼれ」より稈長が短く、倒伏に強い。湛水直播栽培においては、転び型倒伏が「ひとめぼれ」より少なく、「はえぬき」と同程度で、玄米収量はこれらより多収である。このため、表面散播でも倒伏が少なく多収である。玄米品質は"上下"で、精白米の白度は「ひとめぼれ」、「はえぬき」より高い。炊飯米の食味は移植栽培、直播栽培のいずれにおいても「ひとめぼれ」並の良食味で"上中"である。本品種は直播栽培においても倒伏が少なく多収なため、東北地域における直播栽培を安定化させ、良食味米の低コスト生産を可能にすることが期待される。栽培適地は東北地域中部以南の平坦地である。
著者
米丸 淳一 上山 泰史 久保田 明人
出版者
東北農業研究センター
雑誌
東北農業研究センター研究報告 (ISSN:13473379)
巻号頁・発行日
no.113, pp.17-28, 2011-03
被引用文献数
1

「東北1号」は、イタリアンライグラスの優れた消化性及び飼料特性とメドウフェスクの優れた越冬性の両形質を付与した採草用品種を目標に、海外で育成されたフェストロリウム品種(x Festulolium Aschers. et Graebn) の後代から選抜育成した国内初のフェストロリウム品種である。東北農業研究センターにおいて育成され、2009年7月22日に品種登録申請を行った。年間乾物収量は、我が国唯一の流通品種である「バーフェスト」に比べて3年間6場所の試験平均で約10%多収である。播種翌年が最も多収で、年次経過とともに収量は低下するが、「バーフェスト」に比べてその程度は小さい。夏期が高温となる地域では利用2年目の越夏後の衰退が著しい傾向がみられるが、それ以外の地域では3年を経過しても100kg/a程度の収量が期待できる。出穂始は「バーフェスト」と同時期である。高い出穂期草丈、低い無芒個体率、及び高い根の蛍光反応率など、イタリアンライグラスに類似した表現型を示す。北東北における越冬性及び雪腐病抵抗性は「バーフェスト」よりもやや劣るが、低標高地や南東北以南の中標高以下では越冬に支障はない。耐湿性、冠さび病及び葉腐病抵抗性は「バーフェスト」よりも優れる。本品種は、北東北の低標高、南東北の太平洋側及び、中標高地域、関東東山地域の中高標高地(概ね500m以上)の転作田や飼料畑における採草用草種としての普及が見込まれる。
著者
橘 雅明
出版者
東北農業研究センター
雑誌
東北農業研究センター研究報告 (ISSN:13473379)
巻号頁・発行日
no.113, pp.33-66, 2011-03

帰化雑草ハルザキヤマガラシとカミツレ類の東北地方における分布と発生実態および人為的影響下における生理生態的特性を分析し、得られた知見に基づいて、防除法を検討した。ハルザキヤマガラシは東北地方に広く分布し、河川周辺および用排水路周辺の水田畦畔・路傍に発生が多く、河川や用排水路を媒体として分布拡散していると推定された。ハルザキヤマガラシは、畦畔とコムギ圃場で主とする繁殖様式を変え、耕起と草刈りなどの異なる管理作業に可塑的に対応して生存していた。そのため、周辺畦畔における適切な雑草管理と圃場内での種子発生個体を対象とした防除が重要と考えられた。カミツレモドキは、東北全県のコムギ圃場などにみられ、秋季と春季に盛んに出芽し、秋季に出芽した越冬個体がコムギの生育を抑制し、減収の原因となっていた。東北地方のコムギ栽培では、播種直後のリニュロン水和剤土壌処理、秋季の出芽終期にあたる11月上旬のアイオキシニル乳剤処理、5月上旬の条間中耕またはアイオキシニル乳剤処理のうち、いずれか2つを用いるとハルザキヤマガラシとカミツレ類の防除は可能であった。
著者
住田 弘一 加藤 直人 西田 瑞彦
出版者
東北農業研究センター
雑誌
東北農業研究センター研究報告 (ISSN:13473379)
巻号頁・発行日
no.103, pp.39-52, 2005-03
被引用文献数
10

田畑輪換を繰り返しつつ、持続的に作物を安定生産できるかどうかは、水田輪作営農を推進していく上で政策的にも極めて重要な問題であり、長期的視点から作物生産力を評価する必要がある。そこで、有機質資材の投入管理を組み合わせた長期的な畑転換や田畑輪換を繰り返したほ場において、土壌肥沃度や転作大豆及び復元田水稲の生産力の変化を調べた。寒冷地において、水稲と大豆による田畑輪換を畑期間が過半を占める体系で10年以上繰り返すと、土壌の可給態窒素が大きく減耗する。この可給態窒素の減耗は、畑期間が1-2年の田畑輪換の場合には、600gk/10aの稲わらを毎年投入することにより軽減される。しかし、畑期間が過半を占める場合には稲わら施用の効果がみられない。長期にわたり大豆を連作すると、田畑輪換の場合より可給態窒素の減耗が激しく、稲わら堆肥を2トン/10a連用しても、連年水田の堆肥無施用の場合を大きく下回る。このような可給態窒素の減耗に伴って、田畑輪換の繰り返しや長期畑転換における大豆の収量は、十分な水田期間を確保した輪換畑に比べ10-20%減収する。一方、復元田の水稲は、田畑輪換の繰り返しや長期畑転換を経ても、連年水田に比べて増収する。