著者
中田 隆将
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.6, pp.31-47, 2008-03-20

本研究では,青年期の若者544名を対象に,失恋後の心理的変化と立ち直りに影響を及ぼす要因を検討した。その際,恋愛中の様相と失恋時の様相の影響を捉えるため,失恋のショックの大きさという変数を用いた。結果,失恋後の心理的変化のうち,肯定的心理変化に対し,失恋経験数,失恋形態,失恋のショックの大きさ,コーピング方略のうち未練,回避が,否定的心理変化に対し,失恋形態,失恋からの経過時間,失恋のショックの大きさ,コーピング方略のうち積極転換,未練,関係解消がそれぞれ影響を及ぼしていた。また,立ち直りに対しては,性別,失恋形態,失恋からの経過時間,失恋のショックの大きさ,コーピング方略のうち未練,否定的心理変化が影響を及ぼしていた。中でも,立ち直りに対し,失恋からの経過時間は最も強い影響を及ぼしていた。
著者
髙橋 稔 武藤 崇
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.3, pp.40-47, 2005-03-10

lronic Process Theoryは,思考を意図的に統制しようとするとむしろ逆の効果をもたらされるという現象を説明している。睡眠障者や不眠についてもこの現象が注目され,入眠時の思考統制について検討されはじめた。本研究では,入眠時に浮かぶ思考に対してどのような対処を行っているか調べるために, Harvey (2001)のTCQ-Iにより調査を行った。対象は大学生157名とした。因子分析の結果,思考妨害,思考の再評価,否定的な自己焦点化の3因子が関与していることが明らかになった。さらに,各因子で因子得点を基準に低得点群と高得点群を抽出し,睡眠の諸様相の違いについて検討した。否定的な自己焦点化では,高得点群は低得点群と比較して睡眠の質が低いこと,思考妨害,思考の再評価については,睡眠の質や睡眠リズムに関係がないことが示された。これらの結果から,臨床への応用可能性と今後の課題について討論した。
著者
工藤 晋平 梅村 比丘
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.8, pp.23-34, 2011-03-20

愛着に基づいた臨床的介入において個人の愛着状態の把握は欠かせない。本研究ではWaters & Waters(2006)による安全基地に関するスクリプトを捉える測定法(NaS法)の日本での適用について,臨床的な観点から攻撃性の要素を含めた版(NaSA法)も作成しながら検討を行なった。大学生19名を対象に調査を実施した結果,NaS法,NaSA法の評定者間信頼性や内部相関などはある程度確認された。しかし愛着表象測定の質問紙であるRQやECRとはNaSA法のみが理論的に予想される関連を示し,対人葛藤解決方略との関係でも強制方略と負の相関を示すなど,攻撃性の要素を含めたNaSA法の適用可能性が示唆された。しかし,物語の量が全体に少ない,物語同士の関連の低いものがある,などの問題点も見いだされ, AAIを用いての妥当性の検討も含め,今後の検討も必要であると考えられた。
著者
古元 邦子
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-9, 2013-03-20

本稿では、Ullmanのアプローチによる夢グループの体験について紹介する。この夢グループは、夢主が夢を理解することをグループで助けていくように8段階のプロセスが定められている。筆者は、5名のメンバーで夢グループを体験し、夢グループを効果的に行うためには、参加者に一定の態度が必要であることを理解した。夢主とグループメンバーに必要とされる態度、およびリーダーの役割について検討し、Ullmanの夢グループが、夢主が夢を理解できるだけでなく、グループメンバーにも、夢を扱う方法を学ぶことができるものであり、心理療法家のひとつの訓練法として有効であると考えられた。
著者
大月 友 権上 慎 杉山 雅彦
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.4, pp.12-20, 2006-03-20

本研究は,最新の潜在的態度測定パラダイムであるIATとGNATに対して,①再検査法による信頼性の検討を行うこと,②課題への慣れと遂行成績および測定結果(IAT得点・GNAT得点)との関連を検討することを目的として行われた。IAT・GNAT課題として,花の名前・昆虫の名前・肯定語・否定語からなるflower/insect-IATとflower-GNATを作成し,29名の実験協力者に対して1週間間隔でそれぞれ4回実施した。その結果, IAT (r=.38~.43),GNAT (r=.23~.48) ともに,他の認知課題と比較して高い信頼性が確認された。また課題への慣れに関しては, IATは複数回の実施により反応速度は速くなるがIAT得点に有意な変化はないこと,GNATは反応速度にもGNAT得点にも有意な変化は生じないことが示された。これらの結果から,IAT,GNATの測度としての信頼性と今後の課題を考察した。