著者
赤木 邦江 勇上 和史
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-16, 2021-09-15 (Released:2021-09-15)
参考文献数
31

本稿では、労働者は初めに自身に適したキャリアとのマッチを探索した後に、キャリアを保持したまま企業とのマッチを探索するという Neal [1999]の「2 段階職探し」モデルの妥当性について日本のデータを用いて検証した。その結果、労働市場の流動性が低く、転職市場が未発達とされる日本においても、キャリアの早い段階では「2 段階職探し」が概ね成立しており、転職による適職選択行動が行われていることが示唆された。
著者
廣光 俊昭
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.51-72, 2022-04-27 (Released:2022-04-27)
参考文献数
34

現世代の決定は後続世代の厚生に影響を与える。世代間問題の解決のため、世代間に互恵性を導入したモデルを用いた考察を行う。モデルを模した経済実験を通じ、世代間で起こりうることへの洞察を深める。実験からは、後続世代役が先行世代役の振る舞いに同調することが明らかにされる。同調の存在を考慮すると、先行世代が協力に高い関心を持つ場合、世代を通じて協力の程度が高まる一方、先行世代の協力への関心の低い場合には、世代を通じて協力は低調におわる。
著者
高橋 勇介
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.1-12, 2021-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本稿では、非正規雇用から正規雇用への移行要因について、パネルデータを用いて検証した。本稿の主な結論は以下のとおりである。雇用保険に加入している、教育訓練給付制度を利用中である場合、正規雇用への移行が促進されていることが分かった。また、男性においては、医療・社会保険・社会保障の業種で、正規雇用への移行が進んでおり、雇用契約期間のない非正規雇用のほうが、正規雇用への移行が進みやすいことも判明した。
著者
溜川 健一
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.1-20, 2022-04-27 (Released:2022-04-27)
参考文献数
36

本稿の目的は、2001 年以降のデータを用いて、マネタリーベースの拡大が、都市銀行等、地域銀行、信用金庫の業態別の貸出残高にどのような影響を与えるかを、ベクトル自己回帰モデルを用いて検証することである。その結果、マネタリーベースへのショックに対する業態別の銀行貸出は、時間が経つにつれ正の反応を示す傾向にあること、またその反応に関しては地域銀行が他の業態よりも相対的に小さいことが示された。
著者
尾崎 タイヨ
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.21-50, 2022-04-27 (Released:2022-04-27)
参考文献数
25

本マクロ計量モデルは、従来のマクロモデルとは異なり、家計における所得階級別の消費構造を詳細に展開し、世帯収入、家計消費、労働供給を明示的に定式化すると共に、企業における正規・非正規雇用、賃金、設備投資決定、さらにマクロ経済とリンクさせた。これより、最低賃金の引き上げ、税還付、教育費や医療費などの所得補償、累進社会保険料負担などの各種政策が格差・貧困や賃金、雇用、マクロ経済にどう影響するか分析した。
著者
鈴木 紫
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.73-95, 2022-04-27 (Released:2022-04-27)
参考文献数
21

本稿は、『就業構造基本調査』(2002 年、2007 年)を用いて、日本の労働市場で有業者(雇用者)の副業保有が転職希望(本業の就業継続希望、転職希望)に与える影響について実証分析を行った。①女性雇用者(正規雇用、非正規雇用とも)、男性雇用者の正規雇用において、副業保有が転職希望を促すこと、②男性雇用者の正規雇用と女性雇用者の非正規雇用において、本業と同じ産業の副業保有者がより転職希望を持つ傾向にあることが示された。
著者
和田 美憲
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-16, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
23

日系多国籍企業へのアンケート調査の結果と財務データを用いて、地政学リスク発生の可能性があったトランプ政権下で米国事業を拡大する企業の特徴について検討する。ロジスティック回帰分析の結果より、労働生産性が高く、経済刺激政策の効果に期待した企業が、事業拡大の傾向がある一方で、企業グループとして効率的なグローバル統治構造が未だ形成されていない可能性が示された。
著者
高橋 勇介
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.17-29, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
29

本稿では、非正規雇用から正規雇用への移行の諸要因について検証した。主な結論は以下のとおりである。初職が正規雇用である場合、非正規雇用から正規雇用への移行が起こりやすいこと、ハローワークの利用が女性の正規雇用への移行を促進しており、現職決定後に前職を退職する場合のほうが正規雇用に移行しやすくなっていることも分かった。これらの結果は、初職が正規雇用であった労働者にサンプルを限定した推定でも得られた。
著者
西川 雅史 髙橋 朋一 斎藤 英明
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.13-22, 2021-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
16

経済産業省は、高レベル放射性廃棄物の処分施設の立地先を選定するために「科学的特性マップ」を公表したが、人口密度などの社会的条件を考慮していない。また、画像データであるため第三者による活用が進みがたい。こうした科学的特性マップの欠落を補完するために、私たちはこれをデジタルデータ(シェープファイル)の形で再現したものを公開し、第三者が科学的特性マップ上で社会的特性を考慮できるようにした。
著者
高橋 勇介
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.17-31, 2021-09-15 (Released:2021-09-15)
参考文献数
21

本稿では、地域資源の保全に対する寄附行動への意志の決定要因について、実証分析を行った。主な結論は以下のとおりである。寄附行動への意志には、ソーシャル・キャピタルの要素である、「信頼」や「互酬性の意識」といった規範的な意識が影響している。なお、「現在居住している地域への愛着」は、地域資源の保全や地域活動への参加に対する意識には関連していたが、寄附行動への意志に関しては限定的な影響にとどまっていた。
著者
野呂 拓生
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.33-46, 2021-09-15 (Released:2021-09-15)
参考文献数
20

東日本大震災による宮城県の産業復興の実態を探るため、震災発生前、発生直後、発生 2 年後について沿岸部・内陸部に分けた地域間産業連関表を作成した。また、産業復興に大きな影響を与えるサプライチェーンに注目し APL(平均波及長)による分析とその可視化もおこなった。以上の結果、震災によりダメージを受けた被災地のサプライチェーンの一部は、早い段階で震災前に近い状態まで戻したことが判明した。
著者
西原 是良 小嶋 大造
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.47-60, 2021-09-15 (Released:2021-09-15)
参考文献数
19

本稿は、平成期の農業公共事業について政策的変遷や予算動向に着目し、土地改良事業の性格の変化や農村振興とのバランスの変化を中心に検証する。平成前期では農業政策から食料・農業・農村政策への拡大、中期では農村振興の安定的な政策展開がなされた。二度の政権交代を経た後期では、第1 に農業公共事業(ハード)が拡大して農村振興(ソフト)が圧縮され、第 2 に農業公共事業が基礎的なインフラ整備から競争力強化へ傾斜した。
著者
竹澤 秀平
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-12, 2020-09-30 (Released:2020-10-05)
参考文献数
24

本稿は独占的な市場において企業が労働節約投資と中間財節約投資の2 種類の投資を行うことで、労働組合の交渉力が増加したときの影響を示したものである。通常は労働組合の交渉力の増加は労働組合の効用に対して正の影響を及ぼす。また労働節約投資に対して負の影響を及ぼすが、本稿ではこれらの結果がどのように変化するか検証したものである。
著者
王 佳星
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-36, 2020-09-30 (Released:2020-10-05)
参考文献数
19

温室効果ガスの排出削減ため、ハイブリッド自動車(HEV)の普及が重要であることは認知されているものの、家計部門においてHEV がどの様に普及していくかといった点に関しては未だ明確に把握されていない。本研究は、家計についてHEV の普及過程を分析し、世帯属性が車種選択にどの様な影響を与えるかを明らかにした。また、エコカー補助金政策の有効性を評価し、エコカーを更に普及させるためにどの様な施策が有効であるかを論じた。
著者
村上 礼子
出版者
日本経済政策学会
雑誌
経済政策ジャーナル (ISSN:13489232)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.37-51, 2020-09-30 (Released:2020-10-05)
参考文献数
29

電力・ガス小売完全自由化において先行している英国を対象に、バンドリングが市場競争に与える効果について実証的な考察を試みた。電気とガスを1 事業者から購入するタイプの契約が主流であるものの、バンドル・ディスカウントはあまり行われていないことが観察された。バンドリング戦略は、利用者のスイッチを妨げる効果がある一方で、ショッピングコストの存在によりディスカウント幅は小さくなるものの競争を促進しているとみることができる。