著者
町田 智久 内田 浩樹
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.34-49, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
31
被引用文献数
2

国際教養大学が秋田県教育委員会と協働して,外国語不安の軽減を目指した小学校の教員研修を開発・実施した。既存の教員研修の形態を残しつつも,小学校教員の外国語活動指導の実態調査や研究成果を生かしながら,大学の持つ人的・物的な資源を十分に活用して研修開発を行った。研修は5日間の夏季集中研修として国際教養大学を会場に実施した。研修は4つの柱(①不安に対するサポート,②実践的な指導技術,③コミュニケーションの成功体験,④ティーム・ティーチングの模擬授業)を中心に構成し,全14 回のワークショップの中にそれぞれの要素を分散した。研修参加者は,秋田県内の公立小学校に勤務し外国語活動を指導する教員39 名(男性18 名,女性21 名:平均教員経験年数23.2 年)。研修の事前・事後で行ったアンケート及び外国語不安尺度(Teacher Foreign Language Anxiety Scale: TFLAS)を使い,教員の外国語不安の変化を調査した。その結果,事前と事 後の外国語不安尺度の平均の数値には有意差が認められた。研修前の段階で自らの英語能力に不安を感じていた教員は33 名(84.6%)であったが,研修後には16 名(41.0%)に減少していた。さら に,事後アンケートでは英語でのコミュニケーションに対する積極的な意見が多く見られ,研修が教員の外国語不安の軽減に効果的であったことが示された。
著者
名畑目 真吾
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.14, no.01, pp.131-146, 2014-03-20 (Released:2017-07-27)
参考文献数
11

本稿の研究は,小学校教員を志す大学生の英語活動に関する意識調査を報告し,大学における望ましい小学校教員養成を考える一助とすることを目的としたものである。この目的の下,小学校教員を志望する大学1 年生を対象に,小学校英語活動への印象,英語活動の実践に必要だと考える能力・資質,英語活動の実践のために大学で学びたいことの3 つを観点として,項目に対する5 段階評価と自由記述を含むアンケート調査を行った。その結果,協力した学生は小学校における英語活動の必要性は高いと感じている一方で,その多くは自身が教員になって活動を実践することへ不安を感じていることが明らかになった。また,協力した学生は英語活動の実践に様々な能力・資質が必要だと感じていたものの,その中でも特に発音を含む教員のスピーキング力が肝要であると考えている傾向にあった。英語活動の実践のために大学で学びたいことについては,多くの学生が4 技能に関わる自身の英語力を高めることや,指導法を学ぶための授業見学・実習などの機会が与えられることを強く望んでいた。さらに,英語活動における小中連携への意識が希薄である学生の存在も調査結果から指摘された。これらの結果に加え,協力者を英語の好き嫌いなどの属性で分類して比較した結果も踏まえて,本調査に協力した学生に対する望ましい教員養成課程の在り方について検討した。
著者
池田 真生子 今井 裕之 竹内 理
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.17, no.01, pp.5-19, 2017-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
16

本研究の目的は,外国語(英語)活動の効果的指導につながる,持続可能な校内研修システムの構築を行い,その成果検証を通して,より良い研修モデルの1 形態を提案することにある。研修システムの構築では,先行研究を参考にしながら,1)持続性を持たせること,2)教員自ら問題意識を持ちその解決を図ること,3)次の世代の育成も同時に可能とすること,4)効果の検証の仕組みを取り入れ,常にシステムの改善が図れること,の4点を原則とした。参加校は,同一市内にある平均的な小学校3校で,研修の支援には当該市内にある大学の大学院生7名(支援員)が参加した。校内研修の内容は,参加校教員間での討議の結果,A)教室英語の効果的活用とB)活動案の作成方法に設定し,計6回程度(5ヶ月間,毎回約50 分)実施された。データは,参加教員(集団討論記録とアン ケート)と管理職教員(個別インタビュー記録とアンケート),そして大学院生の支援員(ログ記録とインタビュー,アンケート)より収集された。分析は,インタビュー,ログ記録については質的におこない,アンケートは記述統計で処理した。その結果,今回提案した校内研修システムが,外国語(英語)活動実施に関わる不安の軽減に対して,一定の成果を上げたことが確認された。また,このような形態の研修が,満足度の指標で7割近い教員から支持されており,その理由としては,彼らが抱いている不安の原因をピンポイントに解決していく可能性があるからだ,ということも分かった。一方で,管理職教員の研修への関わり方や,(システムの)持続性をどう実現していくのかなどに,解決すべき課題があることも明らかになった。
著者
久保 稔 金森 強 中山 晃
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4-18, 2012-03-20 (Released:2017-10-05)

本稿では,ICT (information and Communication Technology)を利用した特別支援学級における自立活動という枠組みでの英語活動の実践内容と,その際の留意点,及び平成23年度から必修化された「外国語活動」を特別支援学級で行う際の課題と可能性について報告する。平成22年度に,特別支援学級に在籍する児童(6名)を対象に,自立活動の枠組みで,情緒の安定を図るとともに,友だちとのかかわり方や集団での適応性を高めることめざし,「デジタル読み聞かせ」と「What's missing?」というICTを活用した2つの教材を作成し,英語活動の研究授業を行った。実践の成果として,スキャナで本を読み取りそれを大画面テレビに映し出して読み聞かせを行う「デジタル読み聞かせ」では,子どもたちの「本への興味関心を高める」とともに,「集中力の向上」を図ることができた。また,テレビ画面上に提示しているカードを1枚(または数枚)消し,消えたカードを答えさせるゲーム「What's missing?」では,参加児童は友だちと協力し合いながら勝敗を気にせず楽しく活動することができた。授業参観者からは,「集中力を持続させるのに効果的であった。」,「リハビリ的要素のある活動が含まれていた。」「教師の発音やイントネーションを真似するなど,英語に慣れ親しむ姿が見られた。」等のフィードバックを得られた。今後の特別支援学級における外国語活動では,ICTを利用することで,視覚優位である児童への理解支援や,児童の興味・関心をひきつけることができること,積極的な活動への参加が促せる等の利点があることが示唆された。
著者
渋谷 玉輝
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.44-56, 2012-03-20 (Released:2017-10-05)

本研究は,小学校4年生の教科書で出てきたカタカナ表記の語を英語母語話者が英単語として発音する場合,どの程度,児童がカタカナ語として認識できるかを調査することを目的とした。英語母語話者に依頼して録音した39話を,3つのグループの児童に横断的に聞かせ,その語をカタカナで表記させた。その結果,正答率が高い単語は,lemon, bus, mama, pen, juice, sport, time, cake, orangeの9語であり,lemon, bus, mama, pen, juice, sportの6語は正答者数が8割を超えていた。これらの単語は,mama以外は,すべて『英語ノート』で取り扱われる語彙リストに含まれていた。一方,正答率の低い単語では,world, hundred, leagueの3語で正答者かいなかった。これらの単語の特徴を明らかにするために,正答にならなかった児童の回答を分析したところ,児童は知っている類似する単語に置き換えたり,音声的に認知した文字で答えようとしたりしていた。全体としては,他の教科書や副読本に出てきたカタカナ英語を母語話者が英語として発音した場合,児童がカタカナ語で正確に表記した割合は,36.75%であった。以上の結果から,カタカナ英語において「表記しやすいカタカナ英語」「表記しにくいカタカナ英語」のそれぞれの特徴を分析し,カタカナ英語を活用するための具体的な方法の手がかりを提案した。
著者
真崎 克彦
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
JES journal = 小学校英語教育学会学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.179-194, 2013-03-20

本稿の研究目的は,小学校3年生に対して,チャンツを使用して英語学習を行った場合と,チャンツと同じ回数を単純に繰り返して練習した場合とでは,指導効果がどのように異なるかを検証することである。ここで検証する指導効果の一つは,情意面や意識面についての効果であり,もう一つは,発音に与える効果である。研究を行うために,3年生の2クラスを抽出し指導を行った。チャンツは,2種類準備し,どちらのクラスにもチャンツで学ぶ機会と,繰り返して練習する場を設定した。教材は,小学校の指導であるため,学習の一環であることを配慮し,カリキュラムに準拠したものを扱った。事後に行った児童の意識に関するアンケートによると,「楽しさ」についての印象では,チャンツの方が楽しいと感じている児童が多かった。しかし,「上手に話せるようになる。」,「発音が上手になる。」という観点では,差はなかった。発音に与える効果については,第1回目の指導後と,第5回目の指導後に録音した音声を比較して検証した。検証には,市販の音声評価ソフトを使用し,アクセント,イントネーション,音素がどれくらいモデル音声と近似しているかを数値的に評価し,統計処理した。結果は,いずれの項目にも有意な差はみられなかった。効果に差が表れなかったのは,3年生段階の指導として,文字を介さずにモデル音声を復唱させて指導したこと等が,原因と考えられる。これらの結果から,チャンツを使用することで,児童は楽しみながら意欲的に英語学習に取り組むことができるが,音声面での効果については,一層条件を整えて検証を試みる必要性が明らかになった。