- 著者
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北方 晴子
- 出版者
- ファッションビジネス学会
- 雑誌
- ファッションビジネス学会論文誌 (ISSN:13489909)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.183-192, 2006-03
イタリア未来派は1909年にマリネッティMarinetti,T.E(1876~1944)を指導者として始まった芸術運動である。過去の遺産や伝統的な価値と対立し、新時代に相応しい生活と様式を創造しようと衣装についても強い関心を抱き、特にメンズファッションを巡っては革新的な改革を提唱した。メンズファッション改革を中心的に進めたバッラBalla,G(1871-1958)は1914年5月にLe vetementmasculine futuriste manifeste(未来派男性衣装宣言)を発表し、同年9月にII vestito antineutrale manifesto futurista(未来派反中立衣装宣言)を発表した。タイアートThayaht,E.(1893-1959)は1932年のManifesuto per la transformazione dell'abbigliamento-maschile(男性衣装変革宣言〉を発表し、1933年未来派グループによりII manifesuto futurista del cappelo italiano(イタリア帽子未来派宣言)、Manifesto futurista sulla cravatta italiana(イタリアネクタイ未来派宣言)が発表された。当初としては非常に新しい美意識を持っており、その独特な発想は今日でも高い関心が持たれている。他方、1914年7月第1次世界大戦が勃発し、次第にファシズムへと導かれ参戦へと向かう。未来派は活動の中心を芸術から政治へと移行し、ファシズムに傾斜していった。この時期にタイアートら未来派の活動は活発化していく。男性至上主義的な考え方を推進するファシズムこそ男らしさを強調する文化であり、そうしたファシズム美学を支えたひとつにイタリア未来派があった。すなわち、彼らが取り組んだ試みは男らしさを強く主張する表象であった