著者
吉村 直樹
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.29-38, 2009-03

講演記録現代ではラジオは若者の間でかつてのような人気がなくなってしまったが、聴覚的想像力は万葉の昔から江戸の俳諧を経て現在にいたるまで日本文化の特質であり、マスメディアとしての量的な優位は他のメディアに比べて下がったものの、ラジオ文化にはまだまだ魅力と有用性が残っている。阪神淡路大震災の際にラジオが情報伝達に役立ったのは確かだが、それ以上にひとりひとりに話しかけるというメディアとしての要素の強いラジオは聴取者になりよりも安堵感を与えたと言われる。テレビとラジオの決定的な違いは映像が伴うかどうかにある。ラジオにとって一見不利に見える映像の欠如は、制作と報道の仕方によっては逆に映像では表現えできないような内面を伝えることもできるし、またその比較的シンプルで安価な制作の性質を利用して機動的な、また地域に密着した番組を提供できるという利点もある。Radio is not so popular today among young people as it used to be. But auditory imagination has been one of the Japanese cultural tradition since the times of Man'yoshu. In Edo period we had haikai which also featured auditory imagination. Although radio is not influential as TV in terms of mass communication, it played a very important role during the Great Hanshin Awaji Earthquake giving crucial infrastructural information to the listeners who had no access to home electricity and the other mass media. What is more, since radio program tends to address itself to individual listeners rather than to mass audience, it can give a great deal of intimacy and reassurance. In addition, radio can play another major role as a local media based in local communities because of its relatively inexpensive production cost and its mobility.
著者
福田 智子 穂満 建等 フクダ トモコ ホマン ケント Fukuda Tomoko Homan Kento
出版者
同志社大学文化情報学会
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.10-22, 2015-11

資料紹介同志社大学文化情報学部蔵無名歌集(仮称『いろは和歌集』)は、和歌を句頭の文字によって、いろは順に分類・配列した歌集である。本稿では、歌頭が「の」「く」「や」「ま」「け」「ふ」「こ」「え」「て」の歌、計180首について、『新編国歌大観』を対象に他出歌集を検した。その結果、『古今集』『新古今集』などの勅撰集歌だけでなく、『拾玉集』などの六家集(秋篠月清集・長秋詠藻・山家集・拾玉集・拾遺愚草・壬二抄)に採られている歌が多く見られ、また、『伊勢物語』『源氏物語』の物語和歌が採られているといった、前稿までと同様の傾向が看取された。出典未詳歌は6首ある。そのうち「け」の歌2首は連続しており、また、「え」「て」の歌はそれぞれ歌群末尾に配されている。なお、異文傍書の中には、出典と目される歌集において、当該歌の近くに配されている他の歌の句を、目移りにより誤って記したと推定される箇所がある。異文を記入する際に、出典歌集を参看していた可能性が指摘される。
著者
岡田 暁生
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.47-59, 2011-03

講演記録音楽や舞踏は,芸術のシステムの中で長年その地位が低く扱われてきた.それは,古代ギリシャで身体を使う作業をすべて奴隷にさせていたことに起因し,長らくヨーロッパでは身体を使う職業が一段下とみなされてきた.このように音楽や舞踏といった芸術は極めて身体との関係性が強いジャンルである.作曲家が楽譜を書いているとき,様々な身体の格好,構えなどを想定している.つまり,楽譜は身体の格好の記録としての側面があることを理解する必要がある.時代によって,作曲家によって,あるいは様式によって,ある曲に適切な身体の格好というものが暗黙に合意されている.それは楽譜通りに音符をたどっていけば,そのような格好で演奏せざるを得ないようになっているからである.音楽は身体と音の振動,空気の振動といったものが互いにくっついて,たとえそこに身体が現前していない所でも,われわれはそこにその振動を発生させた身体を想定してしまう.その意味で音楽は非常に生々しい芸術といえるのである.In the long history of artistic systems, music and dance have not always enjoyed a high status, due to the fact that all physical activities were performed by slaves in ancient Greece. In Europe, businesses involving the body were considered lowly. Music and dance as art forms are strongly tied to bodily motions. When a composer writes music, he or she visualizes the various postures of the body. The notes, therefore, must also be understood as corresponding to physical postures. Among the different ages, composers and styles of music, there are implied and shared physical postures that are considered appropriate for certain music. When a musician follows the notes, he or she will be playing with these tacitly understood postures in mind. In music, the vibrations of the body, sound and air are interconnected. So a listener can imagine the posture which caused the vibration, without witnessing the actual posture in advance. In this sense, one can say that music is a very vivid form of art.
著者
田口 哲也[司会] 萩原 健次郎[詩朗読] ソルト ジョン[解説]
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.[25]-31, 2008-03

講演これは2007年10月11日(木曜日)に同志社大学室町キャンパスで開催された「大野一雄フィルム・フェスティバル at 同志社」においてなされた、ハーバード大学ライシャワー日本研究所のジョン・ソルト博士による暗黒舞踏と大野一雄に関する講演録である。ゲスト詩人、萩原健次郎による朗読詩も掲載されている。This is the full transcription of a lecture given by Dr. John Solt, associate in research of Edwin O. Reischauer Institute of Japanese Studies, Harvard University on the occasion of Kazuo OHNO Film Festival at Doshisha University, October 11, 2007, with the full text of the poem the honorable guest poet Kenjirou Hagiwara read at that time.
著者
田口 哲也 ソルト ジョン
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-42, 2007-03

2006年1月28日にタイのナショナル・アーチスト(日本の人間国宝に相当する)である伝統音楽家、ジャエン・クライシトン氏とのインタヴューを世界で最初に行った。これはそのときの模様を忠実に再現した記録である。インタヴューを行ったのはマハチューラロンコン大学、タマサート大学などで比較宗教学や哲学を講じた経験のあるハーバード大学ライシャワー研究所のジョン・ソルト博士。通訳を担当したのはバンコクのイタリア大使館勤務、ソムスリ・ポップピプグトラ氏で、同志社大学文化情報学部の田口哲也が同行した。ジャエン氏はどのようにして伝統音楽の道を選ぶようになったのか、また、どのような経緯でナショナル・アーチストの栄冠を獲得したのか、また、珍しいヨーロッパ、アメリカ公演のときの模様、タイの伝統音楽の特徴、さらには現在の音楽状況などについて詳しく語っている。