著者
長谷川 路子 稲福 善男
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.92-98, 2019 (Released:2020-09-05)
参考文献数
3

本稿では,地域の実態を検証するための方法,および,全国で展開されている地域づくりの調査・研究を横断的に一つの規矩で整理し直し,比較を通して,その共通性や特異性を浮き彫りにし,根元的な課題に迫るための思考形式などを試論した。論考は現実での妥当性を得て正鵠を射る。証左をある農村集落での適用に求めた。結果,同集落の状況はもとより,住民の多様な生活の側面,あるいは伝統と変化の許容という地域精神を立体的に描き出すことができた。また,その結果による同地への説明は住民にも改めて地域を見直すことができるとの反応を得た。さらに簡明な説明とフレーム図として準備を整え,各地域の検証例を確保し,所期の研究を進めていきたい。
著者
木村 雅敏 岩坪 友義
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.49-55, 2010 (Released:2011-02-04)
参考文献数
22

コーヒーは,各々の特性によりレギュラーコーヒー,インスタントコーヒーならびに缶コーヒーの3タイプに分類され,さまざまなシチュエーションで飲用されている。本論文では,生産販売の実績データや財務諸表を基にした業界および企業の分析を行うとともに,消費者評価がコーヒー製造企業の経営行動に与える影響について,アンケート調査により主要企業の当該市場における位置付けを行った。それらの結果,主要企業をそれぞれ「ガリバー型」,「製品品質重視型」,「コアブランド重視型」,「自動販売機偏重型」等に分類・位置付けし,企業実績等により各社の優劣を考察した。
著者
福田 康典
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.8-14, 2016 (Released:2017-03-09)
参考文献数
13

本研究の目的は,企業による使用文脈データの利用が消費者の知覚する不快感に及ぼす影響の実証的な考察を通じて,マーケティング・リサーチが抱える新たな倫理的問題の輪郭を描くことである。サーベイ・データに対する統計解析の結果,収集された使用文脈データがどう利用されるかによって知覚される不快感の程度が異なること,そのなかでも特にデータの第三者への譲渡は不快感を大きく増大すること,譲渡の事前告知や譲渡先企業の信頼性がそうした不快感の増大を緩和することなどが示された。IoTなどを通じて,消費者が何かを使用することが企業のデータ収集に直結するようになってきた最近の状況を考慮すると,こうした知見は,データの取り扱い方に関する健全性が企業の経営診断の項目に含まれるべきであり,それに関連した診断指標が開発される必要があるという点を示唆していると思われる。
著者
髙村 清吾 高野 研一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.75-81, 2017 (Released:2018-12-20)
参考文献数
15

本研究は,過去の倒産企業に共通した組織風土を導き出すことを目的としている。このため,公開されたデータベースから,対象とする倒産企業76社を抽出し,企業倒産に至った根本原因(本源的な倒産原因)を突き止める「根本原因分析」を行うとともに,倒産原因の本源的な問題である経営者問題(倒産要因におけるハザード)を中心に,「数量化III類」を適用し,本質的な問題である経営者問題に関係する企業の組織風土について考察を行った。考察の結果,「傲岸不遜,士気低下,私利私欲」の経営者問題に係る「腐敗堕落」型の組織風土が倒産企業に共通する根本原因との結論に至った。
著者
平安山 英成
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.91-96, 2019-09-27 (Released:2019-09-27)
参考文献数
15

本研究では,従来マスメディア広告の主たる効果とされた説得や補強とは全く異なるアジェンダ設定機能について議論する。この機能は,消費者反応プロセスの認知段階に作用し,アジェンダを設定することを通じて「いかに何らかのテーマを設定し,その範囲を限定するか」を目的としている。さらに,質的側面に着目した「属性アジェンダ」について考察を行った。この議論では,諸属性がどのように送り手から受け手に転移したのか,また受け手はどのように転移した諸属性を基にして頭のなかで対象を構築したのかを解明することが可能であり,より効果的なアジェンダ設定やそれを前提とした広告物作成のための指針が得られる有意義な議論だと考えられる。
著者
横山 淳一 山本 勝
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-84, 2010-02-15 (Released:2011-01-20)
参考文献数
4

本論文において,著者らは個人の生活習慣に関心を喚起するための生活行動記録システムを提案し,携帯電話で利用できるシステムのプロトタイプを開発した。生活行動記録システムは,食事や飲酒といった生活習慣に関わる行動について,利用者がそれらの行動を行う度にボタンを押すことで,時間および行動内容を記録するものである。本論文では,11名の大学生を対象に生活行動記録システムを利用する11日間の実証実験を行った。その結果,システム利用前と利用後で健康に対する関心および生活習慣に対して有意な向上が見られた。以上のことから,本システムが個人の生活習慣を見直すきっかけとなる有効性が示唆された。
著者
庄司 真人
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.151-156, 2011 (Released:2012-06-22)
参考文献数
22

本発表はチェーン組織をとる小売業に対するアンケート調査を基にして,顧客関係管理と市場志向との関係について考察するものである。市場志向尺度についてはさまざまな議論があるが,顧客関係管理と関連性が高いと考えられる「情報発生,情報伝播,対応」に関する尺度を利用し,それらと顧客識別,顧客重視,データ活用,従業員教育,それから関係成果との関係について考察している。これらの関係を統計的に分析した結果,市場志向と顧客関係管理には高い関連性が見られることがわかった。
著者
田原 静
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.48-54, 2017 (Released:2018-12-20)
参考文献数
8

電子書籍サービス等のデジタル・コンテンツ提供サービスでは,従来の有形グッズの所有とは異なり,利用者は所有対象に対する所有権を持たない。本研究では,これらのサービスが作り出す不安定な所有の状況に対する消費者の意識と反応,またサービスの一環として提供される,所有権を伴わない消費対象に対し所有意識を持つケースがあることを明らかとした。この結果は従来のデジタル・コンテンツおよびアクセス・ベース消費の研究を補完し,サービスの価値や利用者の満足度に関する経営診断に新たな知見を与える可能性を開く。
著者
永吉 実武 川端 勇樹 中村 潤
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-7, 2014 (Released:2015-06-10)
参考文献数
10

1990年代以降の不景気の中で業績が悪化した経営コンサルティング会社には,従来の中核であった経営診断ビジネスよりも情報システム構築ビジネスの割合が大きくなりつつあるところがある。本稿では,そのビジネスシフトのメカニズムが,経営コンサルティング会社などのプロフェッショナル・サービス・ファームの業績管理指標を一要因に,バリュー・ネットワークと呼ばれる価値意識により組織ネットワークが支配され,そして組織における同型化圧力が作用することによりビジネスシフトが発生しているのではないか,との議論を行う。
著者
上原 義子
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.164-169, 2011 (Released:2013-03-02)
参考文献数
15

近年の多くの研究では,付加価値戦略としてブランド付与や経験価値,物語性の付与を行う重要性が説かれている。だが,例えば,伝統的商品である椿油にはこうした戦略が見られない。本稿では,こうした商品に対する消費者の視点に接近することで,新たなマーケティングの方向性を探索している。具体的には,近年になって改めて注目されている伝統的商品に着目し,それに関する消費者の着眼点への接近を試みた。調査では,インターネット口コミサイトに集められている椿油の感想に対してテキストマイニングを実施した。
著者
永吉 実武
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.92-98, 2012 (Released:2013-06-29)
参考文献数
8

本論文では,小規模小売業の店舗数拡大時における業務改善事例を取り上げ,得られた効果を既存研究の理論に当てはめることにより,業務改革と効果獲得との間の因果関係メカニズムについて考察を行った。小規模企業が事業の拡大を行う際に,さまざまな課題や問題が発生し,それに対して,経営者は適切な対応策を講じていく必要がある。その際に業務改革や情報システムの導入を実施する企業が多いが,「プロセス志向」の醸成が重要である。これらは,業務改善に取り組む企業に有用な示唆を与えるだけでなく,既存理論が小規模小売業の店舗数拡大時の業務改善策が効果を獲得するに至る因果関係の考察にも有用であることを示すものである。
著者
菅原 浩信
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.91-96, 2008 (Released:2009-06-08)
参考文献数
11

本稿では,商店街組織と外部組織の協働活動について分析を行った。その結果,(1)商店街組織は,外部組織との協働活動により,地域コミュニティからの信頼を獲得し,地域コミュニティにとって必要とされる存在になる,(2)地域コミュニティの人々が商店街組織に関わりをもつことによって,商店街組織が活性化され,大型店等との差別化を図ることが可能となる結果,商店街組織の存続可能性が出てくるという2点が明らかとなった。さらに,こうした協働活動を推進していくにあたり,商店街組織は,地域コミュニティを構成する様々な外部組織の間に,橋渡し型ソーシャル・キャピタルを形成していくことが必要であることも明らかとなった。
著者
小島 貢利 田村 隆善
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.98-102, 2010-02-15 (Released:2011-01-20)
参考文献数
26

ジャストインタイム(JIT)は,「必要なものを,必要なときに,必要なだけ生産する」思想として,特にものづくりの分野で,高品質,低価格,迅速な生産を実現する上で,大きな影響を与えてきた。自動車業界において,JIT 生産システムを採用した企業が世界の頂点を極めた。さらに,JIT はものづくりの分野に限らず,先端技術を応用した製品,サービスや社会システムなど,様々な分野に応用されている。本研究では,JIT の観点で必要とされるであろう,製品やサービスなどに関して紹介し,JIT の応用分野や今後の発展性に関して説明する。さらに,JIT を推し進めることで,今後顕在化するであろう,社会的な問題に関しても言及する。
著者
小島 貢利
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-163, 2008 (Released:2009-06-08)
参考文献数
17

本研究では,まず,日本経済の今後の推移について説明し,円が今後強くなる可能性は乏しいことを指摘する。さらに,外国為替証拠金取引(FX)の特徴に関して紹介し,投資家がFXにより気軽にグローバル投資を行うことができることを示す。また,株式市場とFXとの比較を行い,FXは,一年中,平日24時間取引可能であり,イベントリスクに対して,より迅速に対応可能な取引システムであることを説明する。最後に,円資産に固執することのリスクを,日本人は強く認識すべきであり,将来の円下落や国内低金利継続に対して,FXは有効な資産保護対策になりうることを主張する。
著者
中丸 宏志
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.20-26, 2011 (Released:2011-10-20)
参考文献数
9

近年のエレクトロニクス製品において,自社の革新技術を基に顕在的ニーズを満たす「技術的イノベーション」ではなく,異業種に埋もれた既存技術を寄せ集めて製品開発をマネジメントし消費者の潜在的ニーズを創出する「ポットラック・イノベーション」による製品が現れた。そのアーキテクチャを考察すると「設計インテグラル・組立製造モジュラー」という特徴が見られ,水平的・垂直的な業界内の取引によるものではなく,製品を構成する主要な既存技術が普及段階に入る前のタイミングで異業種など非関連企業から採用されている。考察より,多額の投資を必要としないポットラック・イノベーションの製品開発戦略における意義を提言する。