著者
大場 聖司 池ケ谷 篤 中根 健 黒林 淑子 櫻井 毅彦 勝見 優子
出版者
静岡県農林技術研究所
巻号頁・発行日
no.6, pp.57-64, 2013 (Released:2014-01-16)

静岡県を代表する特産品である温室メロンの香気成分について,ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS),匂いかぎガスクロマトグラフ(GC-O)およびアロマ抽出物希釈分析法(AEDA)を用いて分析するとともに官能評価を行い,特徴的な香気成分を明らかにした。抽出した香気濃縮物をGC-MSにより分析し,171成分を同定した。また,AEDA法により香気貢献度(FD値)の高い31の香気成分を明らかにした。そのうち,7つの香気成分はFD値25以上であり,温室メロンの香りを特徴付けるものであると考えられた。温室メロン香気成分は,総量としてはethyl acetate,2-methylbutyl acetate,isobutyl acetate,butyl acetate等のエステルが多いものの,実際の香りに寄与する成分としては,成分量が2%以下と少ないmethyl 2-methylbutyrate,ethyl butyrate,ethyl 2-methylbutyrate等の甘くフルーティーな香り,花の様な香りの2-phenylethyl acetate,キュウリ様のtrans-2,cis-6-nonadienol,こがし砂糖のような甘い香りのhomofuraneol,バニラ様のvanillin等,比較的低濃度の多成分で構成されていた。追熟段階による香気成分および官能評価との関係についても検討したところ,果肉硬度とGC-MSのトータルイオンクロマトグラム(TIC)積分値との間には高い負の相関関係がみられ,追熟段階が進むとethyl acetateを始めとするエステル類が増加した。官能評価においては,追熟の進行により果肉が軟らかくなり,風味が全体的に強まるという傾向はGC-MSによる分析の結果と一致したが,風味の強さと嗜好において適熟と過熟の差は判然としなかった。
著者
山本 茂弘 山田 晋也 袴田 哲司
出版者
静岡県農林技術研究所
雑誌
静岡県農林技術研究所研究報告 森林・林業編 (ISSN:18828264)
巻号頁・発行日
no.4, pp.87-94, 2011-03

絶滅危惧種であるナガボナツハゼの個体消失に備え,保護・保全に資するため,腋芽を用いた組織培養による個体増殖条件を調べた.伸長に適した培地のpH,植物ホルモンの種類,各個体の継代培養の可能性・シュート増加数の違いを調べた.発根については,培地に添加する糖の種類と濃度,植物ホルモンの添加効果,培地支持体の種類及び個体による発根率の違いを調べた.また,幼植物体の野外への順化条件を調べた.その結果次のことがうかがわれた. 1 腋芽からのシュー卜伸長には培地酸度としてpH5.3が適する可能性がうかがわれた. 2 シュート伸長にはゼアチン0.5又は1.0mg/Lの添加が適する可能性がうかがわれた. 3 ゼアチン0.5mg/Lを添加した培地で多くの個体の継代培養が可能であった. シュートの増加数には個体による違いが見られた. 4 シュー卜の発根期間を早めるには卜レハロースが,発根率を高めるにはショ糖が適する可能性がうかがわれた. また,トレハロースの濃度により発根率が異なることが示唆された.5 IBA O.5mg/LとNAA O.02mg/Lの添加により発根率が高まり、植物ホルモンを含まない発根培地では、発根期間が早まる可能性がうかがわれた. 6 発根培地の支持体としてはバーミキュライト又は鹿沼土が適すると思われた. 鹿沼土では発根期間が短縮されるものの,基部にカルスが形成され,順化効率の低下に繋がる傾向がうかがわれた. 7 幼植物体の順化は,湿度の調整などにより2週間で容易に行えた. 8 本試験で供試した16個体のうち,14個体で継代培養が可能で, 12個体で幼植物体が再生でき,組織培養による個体の確保・保存に役立つことが示された.
著者
稲葉 善太郎
出版者
静岡県農林技術研究所
雑誌
静岡県農林技術研究所研究報告 (ISSN:18828264)
巻号頁・発行日
no.5, pp.23-30, 2012-02

マーガレット育成系統'00-4-1'の自然交雑実生から白花・一重咲きの'ホワイトジュエル'を育成した。'ホワイトジュエル'は2007年3月2日付けで品種登録された(品種登録番号:14873)。マーガレット'ピンクサザンキャンドル'を種子親に育成系統'04-17-1'の花粉を交配して得た実生から桃花・一重咲きの'ピーチサザンキャンドル'を育成した。'ピーチサザンキャンドル'は2011年3月15日付けで品種登録された(品種登録番号:20552)。
著者
稲葉 善太郎
出版者
静岡県農林技術研究所
雑誌
静岡県農林技術研究所研究報告 = Bulletin of the Shizuoka Research Institute of Agriculture and Forestry (ISSN:18828264)
巻号頁・発行日
no.2, pp.9-16, 2009-03

マーガレット'ホワイトジュエル'を種子親に、'アーリーホワイト'の花粉を交配して得た種子を2004年に播種し、実生個体から'サザンエレガンスホワイト'を選抜した。本品種は、2007年3月に品種登録を出願し、2007年8月3日に出願公表、2008年10月16日付けで品種登録された(登録番号:17047、http://www.hinsyu.maff.go.jp/)。'サザンエレガンスホワイト'は、10月から開花する白花で、'在来白'並みの花型で、草姿のバランスが良い特徴がある、生産者には、生育が良い、草丈が高くなる、開花が早い、花型が良いことが評価された。南伊豆地域から出荷している主力市場において、切り花品種としての市場性が認められた。
著者
稲垣 栄洋 済木 千恵子 松野 和夫 市原 実
出版者
静岡県農林技術研究所
雑誌
静岡県農林技術研究所研究報告 = Bulletin of the Shizuoka Research Institute of Agriculture and Forestry (ISSN:18828264)
巻号頁・発行日
no.6, pp.65-69, 2013-03 (Released:2014-01-16)

欧米では,寄生蜂等の土着天敵の生息地となるバンカープラントとして,ブドウ畑や野菜畑等の周辺にソバを栽培する例が見られる.そこで静岡県の耕作放棄地で栽培されるソバを対象として,寄生蜂を含む訪花性ハチ目相を調査した.その結果,ヒメバチ科,コマユバチ科,コンボウヤセバチ科,トビコバチ科,ヒメコバチ科,コガネバチ科,アリヤドリコバチ科,オナガコバチ科,タマゴクロバチ科,アリガタバチ科,ツチバチ科,コツチバチ科,アナバチ科を含む多くの寄生蜂を観察した.この結果から,日本においてもソバが寄生蜂の蜜源となっていることが明らかとなり,寄生蜂の供給源としてソバを栽培することも有効であると推察された.
著者
袴田 哲司 山本 茂弘
出版者
静岡県農林技術研究所
巻号頁・発行日
no.2, pp.75-80, 2009 (Released:2011-03-05)

準絶滅危惧種サクラバハンノキと治山用樹種ヤマハンノキの良好な苗木生産をするため、稚苗への根粒を形成させる方法を検討するとともにその生育状況を調査したところ、以下のことが明らかになった。サクラバハンノキ成木から採取した根粒の裂片や根片をサクラバハンノキ稚苗の根元に埋め込み処理したところ、根粒形成稚苗が確認され、根粒と根片を合わせて処理した場合にその個体数が多くなった。根粒形成稚苗は、根粒非形成稚苗と比較して、根長は短かったが、苗高と葉長は同程度であり、葉数が多かった。また葉緑素計の数値も高かった。サクラバハンノキ成木から採取した根粒粉砕物の懸濁液をヤマハンノキ稚苗の根元に処理したところ、根粒形成稚苗が確認された。それに加えてリン酸カリウム水溶液を処理すると、葉数、葉長、葉緑素計数値が大きくなった。サクラバハンノキの根粒を処理したヤマハンノキに根粒が形成されたことから、これらの菌類はフランキアである可能性が示唆された。