著者
吉田 真 吉田 昌弘 横山 茜理
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学生涯スポーツ学部研究紀要 (ISSN:18849563)
巻号頁・発行日
no.9, pp.111-120, 2018

背景と目的:多くの競技者は膝前十字靭帯再建術(ACLR)後9〜12ヶ月で競技復帰する。受傷前と同じレベルで競技復帰が成功する者もいる一方で,競技復帰後に不幸にも再受傷する者もいる。本症例報告の目的は,反対側のACLRに続いて2回目のACLRを経験した女子バスケットボール選手における競技復帰までのアスレティックリハビリテーションの過程を再考することである。症例情報:20歳女子バスケットボール選手は2年前,18歳の時,ハムストリングスの自家腱を採取した右ACLRを経験した。今回の受傷は2回目のACL損傷であり,2on2の練習中ステップ動作で急激にストップ動作をしようと左足を接地した瞬間に発生した。2回目のACLRもまた同側の半腱様筋と薄筋の自家腱を用いたSTG法で施術された。症例の目標は,膝を気にせず全日本大学バスケットボール選手権に出場することであった。術後3ヶ月の時点で,ランニングが許可され,ジャンプ,ステップ,アジリティ,プライオメトリクスエクササイズのようなアスレティックリハビリテーションは,難易度,反復回数,強度に関して徐々に展開された。選手はACLR 後9ヶ月でバスケットボール競技に完全復帰した。アウトカム:等速性筋力測定がACLR後の競技復帰における客観的指標の一つとして行われた。これらのデータでは,ハムストリングスの筋力低下やHQ比が0.6未満であったことが示された。考察:2回目のACL断裂の原因は不明である。機能的なパフォーマンスや等速性膝筋力測定の結果から,3回目のACL断裂の可能性を否定できない。そこで,再受傷予防のために,両側のハムストリングスの筋力強化,大腿四頭筋とハムストリングスの急速な筋収縮能力の向上,そして神経筋制御能力の改善が必要である。
著者
山本 敬三 松澤 衛
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学生涯スポーツ学部研究紀要 (ISSN:18849563)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-10, 2011

本研究の目的は,1)スキージャンプのシミュレーション・テイクオフ動作をバイオメカニクス的に分析し,2)分析結果を基に力学的な観点からトレーニング方法を提案することである。動作分析では,3次元動作分析と床反力計測を行い,下肢3関節(股・膝・足関節)の力学的な動作戦略について分析した。被験者は女子スキージャンプ選手2名とし,実験室内において,シミュレーション・テイクオフ動作を課した。試技はフォースプレート上で行い,離床後は選手の前方に設置した緩衝用マットに着地させた。各選手5試技の動作を計測した。分析では,下肢3関節の屈伸方向の関節モーメント,重心位置,床反力作用点(COP)および床反力を算出し,項目間の相互関係について検討した。結果,動作の初期に足関節の底屈モーメントをゆるめることで,COP が後退する現象が観察された。重心の床面への投影点とCOP の位置をずらすことで,ジャンパーは前回りのモーメントを得ていた。また,動作の中盤から後半にかけて,下肢3関節の伸展および底屈モーメントを急激に増加させて,重心を上昇させ,フライト姿勢を形作ることが分かった。この分析結果を基に,力学的トレーニング方法を提案した。トレーニングの提案では,バランスWii ボードを活用した運動評価方法について述べ,上記の力学的戦略を行うにあたって,動作評価のできるトレーニングを提案した。
著者
吉田 昌弘 吉田 真 盛 智子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学生涯スポーツ学部研究紀要 = Bulletin of Hokusho University School of Lifelong Sport (ISSN:18849563)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.63-69, 2011

一般的にコアと呼ばれている腹横筋,内・外腹斜筋などの腹筋群は,収縮により腹圧を高める機能を有することから,スポーツ動作における体幹の安定性に関して重要な役割を担っていると言われている。コアの機能が重要視される一方で,これらの機能を定量的に評価する手法は十分に確立されていない。本研究では,コアの機能を定量的に評価する手法を確立することを目的に,腹部引き込み動作であるDrawin による腹横筋および内・外腹斜筋の筋厚変化を超音波画像診断装置を用いて調べた。男子大学生48名を対象に,安静時およびDrawin における内・外腹斜筋の筋厚を超音波画像上で計測した結果,腹横筋と内腹斜筋では,安静時と比較してDrawin 時に有意な筋厚の増大が認められた。本研究結果から,腹横筋と内腹斜筋は腹圧を高める動作であるDrawin において形態が変化し,この形態変化は超音波画像上で筋厚を計測することにより定量的な評価ができることが示唆された。