著者
木村 正則
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. foreign language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.21-43, 2016-07-29

本稿は、外国語科目を担当することが採用条件となっている常勤教員の公募情報に着目し、教員ポストの供給量をもとに、現在の日本の大学ではどのような外国語が広がりを見せているのか、その動向を探ろうと試みたものである。調査対象としてJRECIN-Portal を利用し、2012 年4 月から2015 年10 月までの3 年6 ヶ月間に同サイトに公開された外国語教育関連の常勤教員ポスト2,431 件の求人情報を収集し、分析した。その結果、英語教員および留学生を対象とした日本語教員の公募件数が顕著に多いことが確認された。その一方で、これまで伝統的に学術言語として広く普及してきた仏語および独語の需要は低く、これに替わって中国語の需要が高いことが確認され、外国語教員の供給サイドの動向からも日本の大学における外国語教育に偏りがあることが指摘された。さらに、言語別および大学の設置機関別で雇用形態にも異なる傾向があることが示唆された。
著者
木村 正則
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-42, 2022-07-31

[要旨]本稿はResearch Map情報を利用し、大学で英語関連科目を担当する正規雇用教員295名について、どのような学校歴を有し、現在の大学に勤務しているのかについて考察を試みた。調査の結果、次の二点が示唆された。第一は、アカデミック・インブリーディングについてである。国公立大学に勤務する英語教員には国立大学を卒業・修了した者が多くいた。特に、本稿で区分した7 つの大学群のうち、設立時期が古い大規模国立大学群および一部の私立大学群においては、同じ大学群内での教員の再生産率が高いことが示唆された。一方、それ以外の大学においてはさまざまな大学群から人事採用を行っていることが示された。第二は、大学卒業・大学院修了後の地理的移動についてである。英語教員は、学士課程で在籍した大学と同じ地域に所在する大学院に進学し、当該地域を中心に就職する傾向が強いことが示唆された。
著者
北田 沙織
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-32, 2020-07-31

[抄録]Oscar Wilde の“The Happy Prince”(1888)は今なお読み継がれる名作童話でありながら、同性愛を称揚する物語とも解釈されてきた。しかし本論は、王子のジェンダーの揺らぎや両性具有性に注目し、「有用性(usefulness)」という概念に縛られていたつばめが王子との出会いによりその価値観を揺るがされ、同性・異性の枠組みを超えたより深い純粋な愛に身を投じる物語として本作品を捉える。本論では男性性と女性性を明確に区分しようとした19 紀末英国において、因襲的な「男性らしさ」と「女性らしさ」のジェンダーの境界を侵犯することで、固定化された性の在り方に異を唱え、異性愛/同性愛という区別や階層関係を否定する新たな愛の形をワイルドが模索していたことについて考察する。
著者
佐藤 美奈子
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.15-38, 2019-11-30

[要約]本研究は,ヒマラヤの小国ブータン王国における英語教授言語を主題とする.ブータンは,国語であるゾンカ語を含め19もの少数言語を擁する多言語社会である.1961年の普 通教育導入に際し,英語を教授言語として選定した.現在ブータンにおいて英語はゾンカ 語と並ぶ全国的な共通語として機能し,英語を第一言語とする世代も登場している.本研 究では現地調査をもとに,教授言語に対する人びとの認識とその変化を検証した.その結 果,教育による平等な社会の実現を目指した初期の政策から,その後ゾンカ語を核とする 国家アイデンティティの育成へと比重を移した教育政策上の転換が人びとの教育観や言語 観に反映され,「望ましい教授言語」の認識にも変化が生じていることが明らかになった.
著者
有馬 麻理亜
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.57-74, 2018-11-30

[抄録]本稿では、1920 年代におけるアンドレ・ブルトンの写真論を論じ、それが20 年代の代表作である『ナジャ』に対してどのような影響を与えたかを分析した。まずは多くの先行研究が前提とする「自動記述=思考の写真」というある種の定理そのものを再検討することから出発し、1920 年代における彼の写真に関する言説を分析した。その結果、ブルトンが写真の効果に限界を設けており、それを乗り越えるためにコラージュ論や詩的イメージ論を探求したことがわかった。『ナジャ』はまさしくこのイメージ理論の成果であり、読むという行為をつうじて、語り手のコラージュとしての肖像写真を「見る・見せる」構造を備えた作品であることを明らかにした。
著者
松本 望希
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.33-46, 2020-07-31

[抄録]本論は、バーナード・ショー『医師のジレンマ』(1906)における医師たちの表象に注目し、ショーが医療において生じるジレンマ、すなわち「命の価値を医師が恣意的に決めてしまうこと」に対して、そうしたジレンマを感じてしまうこと自体が誤りであると考えていることを明らかにするものである。さらにショーは、当時英国社会において、賛否両論を巻き起こしていた動物の生体解剖論争を通して、舞台空間と現実社会の問題を接合することを試みた。「悲劇」という副題をもつ本作品は、従来その皮肉めいたプロットから、ショー流の諷刺が利いた「喜劇」的なもの、すなわち悲喜劇として解釈されてきた。一方で本論では、作中で取り上げられる医療倫理の問題そのものは「悲劇」的なものであることについて検討する。
著者
ジョシュア コーエン
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kinki university center for liberal arts and foreign language education journal. foreign language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.43-56, 2015-11-30

This study investigated the effectiveness of dictation as a means of improving listening comprehension in a second language. The treatment group (n = 18) received weekly dictations of about 10 minutes for 12 weeks. At the same time a control group (n = 16) received placebo lessons of 10 minutes on minimal pairs in pronunciation. Two measures of listening comprehension were used to pretest and posttest the students. After 12 weeks of experimental sessions, no significant difference was found in the students’ scores on the first posttest; however, a significant difference was found in the students’ scores on the second posttest. The results indicate that dictation has the capacity to improve listening comprehension in a second language, but this is demonstrated to varying degrees in the two measures. The discussion looks carefully at potential causes for these differences and ways to address some of the problems encountered in this small study.
著者
西垣 佐理
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.1-13, 2019-11-30

[Abstract] The Secret Garden (1911), a masterpiece in children’s literature crafted by Frances Hodgson Burnett (1849-1924), is a story of healing and resurrection. It starts with images of illness and depression engulfing the world. The protagonists, Mary Lennox and her cousin Colin Craven, are abandoned by adults, and they both become spoiled and selfish. Their physical and mental healing process is the turning point of the story, and it is shown through the regeneration of an abandoned garden in Misselthwaite Manor in Yorkshire. This process is a recurrent theme in the nursing narratives during the Victorian era; Charles Dickens’s novels are striking examples of this narrative style. In this paper, I will elaborate on the characteristics of a nursing narrative by children by comparing them with typical narrative patterns in Victorian literature and focusing on the depictions of healing in the story.
著者
赤羽 仁志
出版者
近畿大学全学共通教育機構教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kindai university center for liberal arts and foreign language education journal. Foreign Language edition (ISSN:2432454X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.37-57, 2017-11-30

[抄録]英語の形容詞と対比される日本語の形容詞(および形容動詞)の統語意味的特徴についてChomsky(2013, 2015)の標示の理論により説明を試みる。Nishiyama(1999)における日本語形容詞・形容動詞の形態統語的分析に対して批判を加え、標示の理論に基づく代案を提出する。フェイズ主要部となる範疇決定要素と語根の対併合によって前者が不可視になるというChomsky の主張を再定式化し、日本語の形容詞に適用する。これにより、主要部a が不可視となる日本語の形容詞が英語のそれと異なった振る舞いをするようになることを述べる。また、形容詞が語尾を欠く断片文から日本語の形容詞句がフェイズになることを裏付ける。