- 著者
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落合 いずみ
- 出版者
- 国立大学法人 琉球大学島嶼地域科学研究所
- 雑誌
- 島嶼地域科学 (ISSN:2435757X)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.33-45, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
ブヌン語イスブクン(Isbukun)方言は次末音節にアクセントを置く語が多く(次末型),タキトゥドゥ(Takituduh)方言などは語末音節にアクセントを置く語が多い(語末型)。これらブヌン語方言におけるアクセント位置は,Huang[2008]により最適性理論の枠組みにおいて制約の優先順序を交替することにより最適な出力候補を導くことによって説明されている。本稿は次末型に属するタキバカ(Takibakha)方言を対象にし,最適性理論に頼らずとも,モーラと音節,そして二重母音の関わりからブヌン語方言のアクセントが導けることを述べる。次末型では,次末モーラを含む音節にアクセントが置かれるのであり,母音連続ai, ia, au, ua, ui, iu が生じる場合は母音連続が語末に生じるか非語末に生じるか,母音連続が二重母音に変化するかどうかの違いによってアクセントに差異が出る。非語末の母音連続ai とau は二重母音と見なされ,非語末の二重母音ia とua は音位転換の後に二重母音に変わり,さらにe とo に変化する。母音連続iu とui は二重母音化しない。