- 著者
-
村上 祐介
- 出版者
- 日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
- 雑誌
- トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.56-70, 2011 (Released:2019-08-28)
本稿の目的は、「子どものスピリチュアリティ研究」 の、近年の動向を紹介することである。第一に、子 どものスピリチュアリティが注目を集めている背景 として、人生の意味やつながりの感覚に焦点をあて ることの重要性の認識や、発達の段階理論への反論 などがあることを論じる。第二に、本領域の最近の 研究動向を概観し、(a)20世紀後半では宗教体験や ピーク体験など子どものスピリチュアルな体験に、 (b)近年では、「関係意識」(Hay & Nye, 2006)に関 心が向けられ、これらの研究の多くは、成人への回 想法や子どもへのインタビューなど質的研究に依拠 していることを明らかにする。第三に、子どものス ピリチュアリティに対する、従来の心理学からの懐 疑的見解を概観する。最後に、本領域における研究 手法や定義づけの問題や、わが国における今後の方 向性として、質的研究方法の精選、尺度開発、東洋 思想における子ども観についての文献研究を挙げる。