著者
寺田雅之 竹内大二朗 齊藤克哉 本郷節之
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.224-233, 2014-07-02

集計データのプライバシーを差分プライバシー基準に基づいて保護する上で,データの統計的正確性と計算効率に着目した手法を提案する.差分プライバシー基準は,安全性に対する数学的な裏付けが保障されているものの,(1)非負データが負の値となってしまう場合が生ずる,(2)広範囲のデータの集計値において真値からの偏差が大きくなる,(3)疎なデータ分布を密なデータ分布へと変化させることにより計算量の著しい増大を招く,などの実用上の課題を持つ.本報告では,これら三点の課題を解決する手段として、Wavelet 変換とTop-down 精緻化処理と呼ぶ方法を組み合わせた,差分プライバシー基準を満たす新たなプライバシー保護方式を提案し,国勢調査データを用いた提案手法の評価結果を示す.
著者
角康之 松村耕平 権瓶匠
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1394-1399, 2014-07-02

本研究は、博物館や学会における展示見学者同士の気づきや興味の共有を促すことを目的とする。本研究の特徴は、見学者同士の何気ない会話の中から得られる、展示に対する気づきや面白さを、展示会場に常駐するロボットが収集し、新たな見学者に提示することで、展示空間内での気づきや知識を流通させることである。見学者の気づきや見学者同士の会話の収集には、PhotoChatと呼ばれる、写真撮影とその上への書き込みによって他のユーザと気軽に「会話」できるモバイル端末システムを利用した。PhotoChatシステムは、本来、コミュニケーション促進を目的として人同士が利用することを想定しているが、今回は、展示空間に常駐するロボットが見学者の興味対象や見学者同士のコミュニケーションの様子をセンシングする手段としても利用した。具体的には、ユーザの滞在場所をセンシングし、写真や書き込みデータを展示エリアと紐づける仕組みを開発した。また、蓄積された写真データを、書き込みの量や写真間のリンク数などの特徴から自動的に分類する枠組みを開発した。見学者への情報提示を行うロボットについては、見学者の行動状況、つまり、特定の展示エリアでの滞在時間やPhotoChat写真の撮影数に応じて、過去のPhotoChat上の会話シーンを提示する仕組みを開発した。さらに、見学者への語りかけのシーン(他の展示エリアを推薦する等)に応じて、ロボットの発話や身ぶり動作を設計・実装した。展示会ワークショップにおける提案システムの動作実験を行い、ロボットの身ぶりによる空間情報提示の効果を確認した。また、ロボットの語りかけによる見学者同士の会話の発生など、興味深い現象が観察された。これらの観察から得られた知見を基に、ロボットの社会的メディアとしての価値について議論する。
著者
伊藤誠悟
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1792-1799, 2014-07-02

本論文では,3次元距離センサ付きスマートフォンを携帯して,屋内環境を移動する状況を想定し,ランドマーク,フロアプランおよび無線LANを用いた位置推定手法を提案する.提案手法による位置推定では,無線LANを用いた位置推定により数メートル程度の精度で位置推定を実施した後,3次元距離センサから抽出するランドマークとビジュアルオドメトリを用いて更に精度の高い位置推定を行う.実屋内環境において提案手法の評価実験を実施し,無線LANおよび3次元距離センサをそれぞれ個別に用いた場合の位置推定手法より位置推定精度が向上することを確認した.
著者
小倉孝夫 森川郁也 安田雅哉 長谷部高行 新崎卓 津田宏
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1995-2000, 2014-07-02

生体認証をインターネット上で実現することで,本人確認性の高い様々なサービスを容易に利用可能にするシステムを開発した.ネットサービスで生体認証を利用する際の課題として,クラウド上に生体情報を預ける不安がある.また,最近ではサービス事業者の代わりに認証サービスおよびユーザ個人のデータを預かるIdP(Identity Provider)も現れ,ユーザはサービス事業者へユーザ個人のどのようなデータを提供するか制御したいという要求がある.前者に対しては,手のひら静脈から抽出したバイオ特徴コードを,準同型暗号で保護したままサーバに保存および照合することにより,インターネット上であっても安全に生体認証を実現することで解決する.また,後者に対しては,認証・ID連携の標準的な技術であるOpenID Connectと組み合わせ,サービス等に応じて匿名レベルを選択できることで,不要なユーザ個人のデータをサービス事業者へ提供しないようにする.これらの技術をクラウド上で試作・性能評価し,さらにデモンストレーションシステムを構築した.
著者
有住なな 丹生智也 南和宏 丸山宏
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.823-827, 2014-07-02

近年,インターネット上では様々な位置情報サービスが提供されており,多数のユーザーの間で位置情報の共有が実現されている.しかし位置情報はユーザーのプライバシーに関する行動に深く関連するため,位置情報の公開は適切に制限される必要がある.そこで我々はこれまでユーザーの識別子を仮名に置き換える仮名化方式を検討し,「ミックスゾーン」と呼ばれる複数ユーザーが出会う場所でランダムに仮名を交換する方式を考案し,各ユーザーが取り得る代替経路の不確定性に基づきプライバシーの概念を定式化した.本論文では、このミックスゾーンを用いたプライバシー保護技術において効率的に安全性を検証するアルゴリズムについて考察する.
著者
村田翔太郎 屋良朝克 金田一将 五百蔵重典 田中博
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1608-1613, 2014-07-02

筆者らはナビゲーション,ロボットの自動走行などへの適用を目標に10cm以下の測位誤差を実現できる超音波を用いた屋内測位システムを開発してきたが,測位対象に専用の超音波送信機を所持・装着する必要があり,一般ユーザ利用展開への課題になっていた.そこで,一般に広く普及し,携帯性も高いスマートフォンを送信器として利用するシステムの検討を行った.しかし,スマートフォンから超音波は発生できないため,発生可能な非可聴音を用いて同様の屋内測位システムの開発に着手した.まず,スマートフォンから非可聴音を発生させるプログラムを作成し,その動作を確認した.次に非可聴音に対応する受信機を試作し,送信信号取得に必要な検波閾値の決定と測位計算に用いるタイマカウント値の取得実験を行った.それらを踏まえて測位実験の環境を構築し,測位実験を行った.その結果,非可聴音で高い測位精度が得られることと,フィルタを用いることで騒音環境でも測位が可能なことを確認し,スマートフォンを用いた測位ステム実現の見通しを得た.
著者
古橋知大 大村廉
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.138-143, 2014-07-02

看護や介護において,ベッド上での患者の状態を把握することは非常に重要である.例えば,ベッド上で長時間同じ姿勢でいることは褥瘡を発生させる原因となり,一日のうち長時間をベッド上で過ごさなければならない患者にとって非常に大きな問題となる.また,医療の質の向上には,ベッド上での異常な動きの検出による迅速な対応や,患者の動作の支援などが必要不可欠である.本研究では,Microsoft Kinectセンサを用いて患者の姿勢を取得するシステムの開発を行い,医療分野へ応用していくことを目的とする.本システムでは外れ値にロバストなモデルフィッティング手法として知られるRANSAC法(Random Sampling Consensus)によってベッド平面を推定し,距離画像から除去して,そこから人体認識を行う手法を提案し,ベッド上の患者の姿勢を取得する手法を提案する.実装したシステムについて,4名の被験者を対象に,仰臥位,側臥位,腹臥位の姿勢で実験を行った.出力から,すべての姿勢においてベッド平面の推定,除去,人体骨格の抽出に成功したことを確認した.
著者
志津野之也 濱川礼
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.646-656, 2014-07-02

本研究では,写真撮影時に自動的に構図を検出する事で,専門的な知識・技術を必要とせず,魅力的な写真撮影を可能にする構図マッチング手法を用いた,自動構図決定法について提案する.近年デジタルカメラの普及に伴い,写真を一般ユーザが撮影する機会が増えている.しかし,専門的な知識・技術が無い初心者にとって構図を考えながら魅力的な写真を撮影することは困難である.そこで本研究では,専門的な知識・技術を必要とせずに魅力的な写真を撮影する支援として,特徴点抽出やクラスタリング手法を用いて被写体を認識し,認識された被写体と被写体に適した構図をマッチングする手法を提案する.また本手法を用いた実システム『E-cose』を開発した.『E-cose』は被写体に適した構図を自動で決定してユーザに示唆,ユーザはその構図に合わせて撮影することで魅力的な写真撮影を可能にする.評価として愛知県豊田市周辺(屋内30種類,屋外70種類)で撮影された被写体100種類について各々5構図と構図無考慮の計6枚撮影し,魅力的に感じる1枚を被験者に選出してもらい,『E-cose』の選んだ構図と一致するかの比較評価を行った.対象は大学生26名である.