著者
西田 典数
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-22, 2007-06

「メタボリックシンドローム」とともに「喫煙」による健康障害(被害)が国内だけでなく世界中でも大変深刻な問題となっている。WHO(世界保健機関)では,「タバコは,病気の原因の中で,予防できる最大の単一の原因」としている。日本人の喫煙率は特に男性で非常に高く,未成年者や妊婦の喫煙問題も重大である。喫煙は「自傷他害行為」であり,家庭や職場,社会だけでなく学校においても喫煙による直接・間接の健康障害や火事・事故等に対する取り組みが求められており,それがその学校(大学)の評価にも繋がっている。中国学園では,これまでも禁煙活動に取り組んできた。アンケート調査や啓蒙活動,更に職員によるタバコの吸殻を含めた学園内清掃等が今でも毎日根気強く継続されている。筆者(医師)も,平成15年度からニコチン代替・置換療法(ニコチンパッチ)を含めた禁煙医療支援を継続している。今回は平成17年度の取り組みを中心に,その1年後までの経過を含めて概略(評価,問題点等)を述べる。(1)学内の禁煙医療支援によって禁煙成功率は高かった。(2)学生達の場合は若年者であるため喫煙年数が比較的短く,ニコチンパッチは短期間使用で成功する場合が多かった。ニコチンパッチのサイズも「中」以下でも良い場合が多かった。(3)かぶれ,頭部・腹部症状等の副反応が比較的多かったが,薬剤(パッチ)の減量・休止で対処できた。(4)家庭(家族)・職場・アルバイト先・大学(友人)等で喫煙環境から抜け出せない場合は,再度喫煙してしまう場合が比較的多かった。(5)喫煙の根底に精神的に重大な問題を抱えている場合は少なかった。(6)長期的で十分なフォローや禁煙失敗者の再挑戦への十分な支援は難しい場合もあるが,その点が最も大切である。(7)「ニコチン依存」に対してはニコチン代替療法を,「心理的依存(習慣)」に対しては行動療法(後述)を併用する事で禁煙成功を高めることができた。
著者
富田 昌平
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.127-138, 2007-06

本研究では,乳幼児期における移行対象(毛布やタオル,ぬいぐるみなどへの愛着)とその先駆物としての指しゃぶりの出現の実態について,3歳から6歳の子どもを持つ保護者261名への質問紙調査をもとに検討した。調査の結果,(1)移行対象の出現率は31%,指しゃぶりの出現率は24%であり,そのうち両者が同時に現れたケースは9%であった。(2)移行対象と指しゃぶりは一人っ子,長子,末っ子において同程度に出現し,中間子において少なかった。(3)指しゃぶりは生後6ヶ月以前に出現し,生後6ヶ月から36ヶ月でピークを迎えるのに対し,移行対象はより遅れて生後24ヶ月から60ヶ月がピークであった。また,ぬいぐるみや人形などの二次性移行対象は,毛布やタオルなどの一次性移行対象よりも出現が遅かった。(4)移行対象と指しゃぶりは入出眠時に多く必要とされ,その他テレビ視聴時や退屈な時に必要とされた。それらは子どもを落ち着かせ,安心感を与えると保護者に解釈されていた。(5)対応については無理にやめさせようとした者は少なく,多くはいつか子ども自身で手放すだろうという予測の元に,自然ななりゆきに任せていた。
著者
小野 文子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.125-129, 2006-06-16

音楽の原点は,言葉を話すのと同じように自分の思いを音にのせ,人と人が繋がることであろう。人は「聴く」ことから音楽体験を始め,聴いた曲を「歌う」ことを試みる。「歌う」ことは音楽活動の基本である。
著者
藤本 義博 上島 孝久
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.89-95, 2004-06-16
被引用文献数
1 2

20世紀に入って世界各地で人間の活動による生物種の急速な減少が起きており,我が国も例外ではありません。従って,生物の多様性に及ぼす人間活動の影響を明らかにし,かつ「種」の絶滅を防ぐための実際的で,効果的な方策を開発することが重要な課題になってきています。この様な状況のもとで,学術的に極めて重要で、わが国の特別天然記念物に指定されていて、現在は日本と中国の極く一部にしか生息していないオオサンショウウオも、その生存が危ぶまれている生物種の一つです。オオサンショウウオの保護は、わが国にとっては勿論のこと、その主要な生息地である岡山県にとっても、文化財保護の面からばかりでなく環境保全の面からも重要な対策の一つであるといえます。岡山県真庭郡内の湯原町,川上村,八束村,中和村はすでに昭和2年に全国で唯一全地域(土地)がオオサンショウウオの生息地として国の「天然記念」指定を受け,文化庁,教育委員会による保護下にあります。それにも拘わらず,平成9年度7月から平成10年12月までの河川調査では,23年前の「昭和50年度オオサンショウウオ緊急調査委員会報告」と比較してその生息確認河川数が激減していることが示されました。本論文では河川構造物とオオサンショウウオの生息状況との関係を明らかにすることを目的にしました。
著者
谷本 満江
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.23-28, 2007-06

筆者の体育講義内容は,健康分野を中心としている。我々は講義すること,受講させることは簡単であるが,実際に皆が健康なからだで,健康な日常生活を送ることが重要と考えている。現代社会では,夜型生活の傾向があり,特に大学生に於いては,親元を離れて生活をしたり,サークル・アルバイト活動が多いなど,いろいろな面で自己管理しなければならない。しかし,多くの学生は不規則な日常生活を送りやすいと考えられる。本学の学生に対しては,これまでの生活習慣をいかに行動修正・行動変容させるかは筆者の責任と考え,講義している。最初に学生の体脂肪率測定を行い,これまでのライフスタイルを生活に関する調査でチェックした。そこで,まず自分の身体とライフスタイルを確認し,興味・関心を持つこと,そこからの出発なので学生の中に講義内容が浸透しやすかった。健康の3本柱である《食事》《休養》《運動》に於いて,最低気をつけたい具体的目標をかかげた。《食事》(1)朝食を摂る(2)三食きちんと取る《休養》(1)平日と休日の起床・就寝時刻を同じにする(2)その日の内に寝る《運動》(1)日常生活での姿勢に気をつける(2)できるだけ歩く…これらは簡単そうに思えるが,実はこれを実行し,継続することは意外と大変である。しかし,体育講義受講後はダイエットしようと考えていた学生も間違った方向に行かないように考えていた。そして,各自可能な内容を1週間,2週間と行動修正し,継続できた者が結果的にダイエットに繋り,更に精神的にも前向き・意欲的になり,他学生にも報告し自他共に認めていた。また,9割の学生は少なくとも何らかの形で,健康に気をつけて生活できるようになったと記述していた。今後もこれが行動変容として習慣化されることを願っている。
著者
近藤 信子 冨氣 久江
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.13-19, 2008-06

1990年(第1回調査)と2007年(第2回調査)に女子学生を対象に行った質問紙調査の結果を比較しながら,和服の現状と今後の在り方について検討した。調査内容は和服に対するイメージと評価である。和服に対する評価についてはファッション性・審美性・実用性・社会性の次元で項目を設定した。和服に対するイメージについては,1990年の調査結果では「好感」「女性的上品さ」「華やかさ」の3因子が抽出されたが,2007年調査の分析結果からは「儀礼性」「好感」「静的」の3因子が抽出された。女子学生は,和服の審美性について高く評価しており,和服への関心も高いことが明らかとなった。この結果については,調査年による大きな差異はみられない。ファッション性については,和服の個性的な着付けや新しい組み合わせを工夫したいとする者が2007年調査結果では多かった。和服の実用性についての評価は高くない。民族服に対する意識は1990年調査より2007年調査のほうが有意に低かった。
著者
寺山 節子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.95-99, 2008-06

本稿はボランティアがもつ教育効果について1症例を基に報告したものである。本来ボランティアがもつ特性,その活動をとおしての主体性の確立と,対人との係わりの中で培う豊かな心の芽生えが本稿の対象とした学生に顕著に現れた。そのことは,本人が質問紙の中で,ボランティア活動を行ったことで自分の道が開けたから「青空のような青だ」とその色をたとえている。本人が20日のボランティア体験で自信と明るさを手にしたことと,その教育効果をこの報告で伝えたい。
著者
尾崎 恭子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.4, pp.61-67, 2005-06
被引用文献数
2

幼児教育において「絵本」は重要な保育内容の1つとして位置づけられているが,絵本は幼児の精神発達にどのような役割を果たしているのだろうか。本研究の結果は,幼児の絵本体験における発達を根底から支えているのが,"想像力"であり,しかも,それらの想像力が創造性や発明,発見へとつながっていくことが明らかになった。また,絵本を通して子どもたちの想像力を思いっきり飛翔させ,"感動"する心をくり返し体験させるためには,読み手である保育者の感動とともに,すぐれた絵本の絵と文が子どもたちの想像力を豊かにするための大きな役割をになっていることが分かった。そうした観点から,保育者はどのように絵本を選んだらよいかについて,文については5つのポイント,絵については10のポイントを具体化した。さらに,絵本の読み方をどのように工夫すればよいかについては,9つのポイントを具体化した。最後に,「ぐりとぐら」の絵本の実践例から,絵本を通して生活体験をより広げ,絵本の楽しみをより深めるための保育者の言葉かけや手立てを明らかにした。
著者
大橋 典晶
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.89-96, 2007-06

公立小学校への英語学習への導入を成功させるには適切なカリキュラムを構築することが必要である。そのために,まず目標の検討を行った。直接的な目標として「国際コミュニケーション力」を設定し,その育成には,「母語のメタ認知」を可能にすることと,より良き母語使用者を育てることが必要であることを指摘した。同時に,英語を教材として使用することの適切さについても検討し,日本語と英語の違い,コミュニケーションスタイルの違いが大きいことと,利用可能なリソースが豊富であることが英語を学習する利点とした上で,個別言語間に優劣がないことを意識させることが重要であると指摘した。
著者
尾崎 恭子 加藤 泰彦 長廣 真理子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.69-77, 2005-06-16

『幼稚園教育要領』および『保育所保育指針』において,乳幼児期の遊びは重要な学習であり,遊びを通して総合的に指導する重要性が述べられている。しかし,子どもたちの発達を促すためには具体的にどのような言葉かけや手だてをすればよいのかについては,はっきりしないのが現状であり,実際の遊び場面における言葉かけと手だての内容を明らかにすることが重要である。そのような視点から,本研究は「物と関わる遊び」を取り上げ,カミイら(1985)の研究にもとづいて,その指導法を明らかにすることにした。本研究ではまず,理論的な観点から指導上の原則を明らかにし,さらに,遊びの導入場面,遊びの展開場面,遊びの終わりの場面にわけて具体的な言葉かけと手だてを示した。最後に,それらの具体的な指導法にもとづいて,5歳児のボーリング遊びにおける言葉かけと手だてを考察し,保育者の望ましい言葉かけと手だての内容をまとめた。
著者
寺山 節子 畑 晶子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.215-219, 2007-06

本稿は,岡山県内の「訪問介護」サービスとして登録のあった(2007年2月28日現在)472事業所の中から無作為に抽出した57事業所(訪問介護員308人)を対象に,「生活と生命を支える訪問介護員の疲労」と題してアンケート調査を実施し,その疲労の実態を把握したものである。結果,全体の約7割(68%)の訪問介護員が疲労を感じていることが把握できた。しかし,疲労を感じながらも仕事を辞めたいと思っている人は少なく全体の1割(7%)もいないことが示唆された。
著者
松畑 煕一 中野 宏 名合 智子 橋内 幸子 垣見 益子 佐生 武彦 佐藤 大介
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.49-58, 2006-06-16

本学で開講した「中国学園小学校英語活動支援講座」に関して受講生を対象にアンケート調査をした結果,講座の回数,長さ,時間帯,時期,会場・設備,配付資料のいずれの項目においても,満足のいくものであったという回答が全体の8割を超えていた。ほぼ2週間おきの土曜日開講については,前述の項目に比べて満足度がやや下がったものの,全体の7割近くが支持をしている。特に役に立つ内容としては,ゲームやチャンツのような実践的指導スキルが最も多く挙げられており,続いて,クラスルームイングリッシュなどの英語力強化内容,模擬授業などの実践,年間計画などの順であった。以上の結果から,本講座は,受講生のニーズに十分に応えたものであったといえる。
著者
垣見 益子 橋内 幸子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-18, 2003-06-16

本稿は,卒業生を対象に実施したアンケート調査の最後の報告である。本学英語系学科の卒業生の多くは,仕事,家庭,社会,その他,様々な場面において,英語を使用する機会がある。主に必要とされる英語の技能は,英語を使用する場面によって異なっている。本学における英語教育に関しては,「話す力」,「聞き取る力」,「コミュニケーション能力」の養成に力を入れて欲しいという意見が最も多かった。設問に対する回答や自由記述を通して,本科の卒業生が,英語教育と同様に,実務教育の必要性を強く実感していることが浮き彫りにされた。