著者
原田 眞澄 西尾 敏子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.119-124, 2005-06-16

保育学生2年次生155名を対象に,アンケート調査を行った。約半数の学生は,ボランティアや実習で園児のプライベートゾーンに関する言動や行動を体験していた。これは,幼児に性の健康教育をする絶好のチャンスであるが,保育学生にはそういう意識が乏しく適切な対応ができにくいことがわかった。近年,幼児期から性の健康教育を始める必要性が認識されている。保育士は幼児期の子どもと密接な関わりをもつことから,その養成課程で今日的な性の健康教育のあり方について教育を行う必要性を感じた。
著者
宇野 保子 近藤 信子 中川 早苗
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-8, 2006-06

身体装飾行為とファッション意識との関連性を検討するために,質問紙調査を実施した。調査は,平成15年12月に広島在住の大学生社会人200人を対象に,ヘアカラー,ピアスの装着,眉剃りの3つの身体装飾行為について行った。その結果,ヘアカラーの採用者は,現在と過去の経験者を合わせて約77%で, 髪を染める理由は,「気分,雰囲気を変えたい」「イメージチェンジをしたい」という変身願望につながる理由であることがわかった。ピアスの装着経験者は,38.5%にのぼり,採用の理由は,「服装,髪型に合わせて,おしゃれを楽しみたい」であり,ファッションに対する積極的な態度を見て取ることができた。一方,眉剃りについては約85%が経験しておりその理由は,他の身体装飾行為とは異なり「イメージチェンジ」や「気分を変える」ためではなく「身だしなみとして」であった。このように,今回調査したヘアカラー,ピアスの装着,眉剃りの3つの身体装飾行為は「変身願望」「おしゃれを楽しむ」「身だしなみ」とそれぞれ異なる意味合いを持ってファッションの中で採用されていることがわかった。
著者
長廣 真理子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.91-96, 2005-06-16

本研究は,4,5才児の子どもたちが集団ゲーム「オーケストラの指揮者」をどのように遊び,そして,その中でどのような知的側面の発達をとげていったかを明らかにしたものである。本研究の結果,「オーケストラの指揮者」における知的発達の内容には空間的思考,時間的思考,社会的思考の3つの知的側面の発達が関与していることが明らかになった。空間的思考は,指揮者では身体のどの部位からどの部位に動きを変えるか,鬼がどの方向に向いている時に動きを変えるかということがわかるようになること,また,鬼では子ども達が見ている方向に指揮者がいるということがわかるようになることに関係している。時間的思考は,指揮者の場合には,いつ動きを変えたらよいか,鬼の場合では指揮者は一番早く動きを変える人であることがわかること,子ではすばやく動きを変える人であることの理解に関係している。社会的思考は,指揮者や子が鬼は自分と対立する意図を持っていることや,指揮者と子は協力的な関係であることがわかることに関係している。本文に示された事例からも明らかなように,「オーケストラの指揮者」には,空間的,時間的,社会的思考の発達を促す多様な内容が含まれていることが明らかになったが,本研究の成果はまた,幼児の教育は「遊びを通して」行う幼児教育の本質に鑑みて,保育者が遊びの中で子どもがどのような知的関係づけをしているのかを知る手助けとなり,個々の子どもの発達課題に即した指導を行うための手がかりにすることができると考えられる。
著者
宇野 保子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.29-38, 2007-06

ジーンズは,19世紀後半,ゴールドラッシュに沸くアメリカ,カリフォルニアで,丈夫な労働着として誕生した。日本では1960年代後半に国産のジーンズが生産され,70年代に普及期を迎え,当時のアメリカの生活文化と共に急激に受容されていった。その間,アパレル産業の興隆と共に,高い品質と技術に支えられ,様々な素材によるシルエット,パターンが生まれた。また,ジーンズ独特の洗いとその後の加工技術の研究開発により,次々と新しいモデルが発表され,ジーンズは新たなファッションの世界を創り出した。この間のジーンズメーカーの企業努力,若者の感性が,ジーンズを大きく進化させ,世界の人々とともに共感できるカジュアルファッションにまで育て上げた。本報では,このジーンズファッション変遷の過程をたどる。
著者
原田 眞澄 谷本 満江
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.131-135, 2006-06-16
被引用文献数
1

乳幼児期は基本的な生活習慣を確立していく段階であるが,夜遅くまで起きている習慣がつく子どもが急増してきている。保育所・幼稚園などでも園児の夜ふかしが問題視され,保育者は家族に早寝早起きするよう働きかけてはいるが,期待した成果が得られていないのが実状と思われる。早寝早起きの意義は大きく理想ではあるが,時代的背景を考慮すると限界も感じてしまう。それよりも,家族がおかれている環境の中で実現可能なことから改善していくという柔軟さも必要なのかもしれない。そこで,現代の子育てにおいて,子どもに少しでも良質な睡眠を提供するための手立てとはどのようなものかを検討したいと考えた。岡山県の保育所・幼稚園の5〜6歳児260名を対象に,2週間連続の睡眠リズムと就寝時の過ごし方に焦点をあてて,質問紙によるアンケート調査を実施した。睡眠リズムは週末に崩れやすく,就寝時までの過ごし方はテレビやビデオから光刺激を多く受けている特徴が明らかになった。今後は,こうした点にも着眼した保健指導を行う必要性が示唆された。
著者
小倉 毅 須貝 静 小倉 譲
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.7, pp.21-29, 2008-06

いきがい対応型デイサービス利用者140名に調査をした結果,前期高齢者に旅行希望が多く,国内外に関係なく観光ツアーに希望が多かった。また,国内旅行においては,夫婦や家族と旅行するより,「気のおける友人」と楽しい旅行をしたいという要望が強い。逆に海外旅行では,夫婦や家族といった身内との旅行を望んでいる。また,オーダーメイドの手作り旅行や目的地のみを設定する旅行では,兄弟や親戚,ご先祖様の供養にお墓参り,思い出の地に行きたいといった希望がある。旅行日程は「2泊3日」が最も高く,次いで「1泊2日」,「日帰り旅行」である。旅行中の心配事については,「目的地までの移動時間・手段を考えると体力に不安,荷物を運ぶのが不安,トイレが近いので,休憩回数・時間がきになる。また,後期高齢者になるほど,付き添い者がいてほしい」という結果がでた。これらの結果をもとに,「長崎に単身赴任中の息子に会いに行きたい」と願う89歳(男性)のエスコートヘルパー旅行を実施した。長崎で息子に会えた喜び,観光,希望のかなった食事に満足して,「一生懸命遊び,人生を楽しむことこそ生きがいである」という本人の人生観に基づいた旅行が実施できた。今後の課題として,旅行先の移動手段,お手洗いの整備状況,入浴・食事の手配と介助方法,疾患状況を把握するためのアセスメント技術,さらには,旅行者の「生きがい感(人生観)」を理解する技術,車いすの操作方法,準備物の運搬方法を確立する必要がある。
著者
名定 慎也
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.20, pp.91-100, 2021-06

本研究では,「介護福祉士養成における適切な教育」及び,「介護現場における適切な介護の実践」の向上を目的とし,介護保険制度導入前と現在の介護実践に変化はあるのか,また,介護現場で実際に行われている生活支援技術と介護福祉士養成課程で学ぶ生活支援技術に相違はあるのかを比較した。特に今回は,ベッドを使用する介護技術に焦点を当てた。方法は,特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで介護福祉実習に携わる施設職員にアンケート調査を実施した。その結果,介護保険導入前と現在を比較すると,①介護施設の介護ベッドは,「手動ベッド」から「電動ベッド」に移行していること,②ベッドを使用した介護技術(ベッドメイキング,オシメ交換)に関しては,ベッドの高さを調節し腰痛予防に留意する介護技術が促進していること。③介護現場の実践方法と介護福祉士養成教育内容の差異については,介護職員の意識や介護知識・技術のレベルの違い,体格の違い等状況により実践方法が変わるため差異を明確にするには至らなかったが,介護職員から「人によって介護方法が違う」という結果が明らかになったことで,基本の実践(介護技術)が定着していないことも示唆された。
著者
有道 惇 津上 崇
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.183-193, 2007-06

今日,我が国の子どもたちが歌っている歌は非常に多様である。それらは,ポップス調,民謡調,わらべうた,唱歌,童謡そしてアニメソング等と,歌の種類は非常に幅が広く,全国各地に広まっている。これには,昭和24年に始まった「歌のおばさん」1)等のマスメディアの力による影響が大きく,このような傾向は今日まで継続している。一方,これら多様な「子どもの歌」は,明治以降における西洋化の影響と,これに沿って取り組まれた,西洋的な歌を作るという国の方針とが相俟って,多数の唱歌や童謡が誕生してきた。ところが,この国の方針にも関わらず,誕生してきた歌は,日本語の抑揚にも起因して,伝統的な「わらべうた」,「子守歌」,「民謡」等にみられる「ヨナ抜き音階」の側面が今日まで尾を引いているものも少なくない。そこで,明治以降の「子どもの歌」を分析検討することで,いわゆる西洋音楽(以下,洋楽と略)の受容がどのように行われて,伝統的な音楽(以下,和楽と略)が「子どもの歌」にどのような影響を及ぼし,両者がどのように融合してきたかを検討する。
著者
木村 東吉
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.51-60, 2007-06

筆者は,絵本を鑑賞する立場から,宮沢賢治童話絵本において,画家によってテキストが再生・変容されていく様を,解釈の拡がりとして捉えるとともに,歴史的にも跡づけてみたいと考えている。本稿はその手始めとして,「よだかの星」を事例とし,既存の絵本八編を取り上げ,その特徴を分析・確認しておくものである。論者の研究動機は小林敏也の『画本宮澤賢治よだかの星』(パロル社版)にふれたことにある。この絵本では,よだかの生き方を「賢治ワールド」のなかで捉え直しており,現在の主流の作品解釈が反映されている。これに対して,『よだかの星』をはじめて絵本化した工藤甲人の日本画風の手法による福武書店版では,画家の視点がよだかの被害者意識に寄り添っており,山火に地獄図の業火のイメージを与え,よだかの星に仏像の光背を与えていて,比較してみれば,絵本における作品解釈に歴史的変化の跡が確認される。福武書店版の2年後に成立した伊勢英子による講談社版は,油絵によるデザインによって,画家の個性を強く感じさせるのだが,現世に茨のしがらみを見ている点で,現世のとらえ方に工藤と共通するものが見られる。また,村上康成の抽象画による岩崎書店版では,絵が本文を説明するのではなく,絵が読者に積極的に謎をかけ,本文への興味を誘うとともに,本文による読者の解釈に想像の余地を残す点で,効果をあげている。
著者
古谷 俊爾 板野 敬吾
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.20, pp.37-44, 2021-06

かつてイギリスは大英帝国と称され,覇権国家としてその地位を謳歌していた。その繁栄の背景には,世界中の植民地・自治領から得る利益と,世界に先駆けて実現した産業革命による工業化があった。しかしながら,産業革命では後発国であったアメリカ合衆国やドイツがその後の経済発展により台頭し,それまでのイギリスの地位は安泰とは言えなくなった。このような状況下,イギリスは海外の植民地等を保全し,後発国に対する経済的・軍事的な優位性を確保するよう,19世紀中葉に実用化された電気通信を利用した。 本稿では,新たな通信手段である電信技術に焦点を当て,19世紀から第一次世界大戦までの時期において,イギリスはどのように電信技術を利用したのかを検証する。
著者
佐々木 公之
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.17, pp.269-277, 2018-06

本稿は,岡山市補助金事業である「平成29年度 大学生まちづくりチャレンジ事業(以下,本プロジェクト)」についての報告である。平成29年12月,岡山市紙屋町(表町商店街)にて「クリスマスイルミネーション,クリスマスイベント」を実施した。本稿では,その内容の紹介に加えて,両イベントに参加した学生・生徒(大学生・専門学校生・高校生)らを対象に実施したアンケートの結果とコメントより,本プロジェクトの成果と教育効果について考察する。
著者
國田 祥子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.15, pp.87-93, 2016-06

電子メディアと従来の書籍では,文章の読みやすさや印象に違いはないのだろうか。國田(2015)はiPadを用いた読みと文庫本での読みを比較し,iPadで読む場合は書籍で読むよりも読み時間が長くなり,文章に対する印象が異なる傾向が示されたと報告している。このような差が見られた原因として,ディスプレイの大きさによる視点移動の多さや目の疲労感が考えられる。そこで本研究では,より小型のディスプレイを持つiPad miniおよび目に対する負担が少ないとされるe-inkディスプレイを搭載したKindle Paperwhiteを用い,大学生に電子メディアと文庫本で同一の文章を読ませ,読み時間を計測した。さらに読了後,文章の読みやすさ評定と印象評定に回答させた。その結果,読み時間および読みやすさ評定はいずれも文庫本と差がなかった。このことから,ディスプレイの大きさに配慮することで,電子メディアでの読みやすさが書籍と同等になることが示唆された。一方,印象評定はiPad miniと文庫本の間でいくつかの差が見られた。iPad miniは操作性やディスプレイ表示の質感などがスマートフォンと類似しており,その馴染みが読みの特性を変化させたのかもしれない。Kindle Paperwhiteと文庫本の間にほとんど差が見られなかったのは,ディスプレイ表示の質感が紙に近く,そのため書籍で読んだ場合と印象があまり変わらなかったためではないだろうか。
著者
藤代 昇丈
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.16, pp.247-257, 2017-06

大学において,教養共通科目として学ぶ講座「英語Ⅱ」において,外国語学習のための動機づけを高め,インプット強化を図るタスクとして,日本人アーティスト・西野カナの日本語の楽曲とその歌詞に対応した英語カードを用いたグループ対戦ゲームを実施し,学生の情意面に及ぼす影響を調べた。事後の自由記述アンケートの回答内容を計量テキスト分析用ソフトウェア「KH Coder」により分析した結果,回答内容は「活動の親しみやすさ」「歌詞の英語表現」「絵による視覚補助」「活動の難しさ」「やる気の醸成」「楽曲を用いたグループワーク」「表現使用への意欲」「英語学習の楽しさ」の8つのクラスターに分類され,回答の97.1%に「英語学習の楽しさ」に関連する語が出現し,中心クラスターである「英語学習の楽しさ」は「活動の難しさ」と「楽曲を用いたグループワーク」と結びつきがあり,「表現使用への意欲」と強く関連していることが分かった。
著者
宋 娘沃
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.13, pp.71-79, 2014-06

現在,モバイル産業を取り巻く国際競争が熾烈になっている。モバイル産業の中でも携帯端末のOSをめぐって,一段と競争が激化し,新たに第3勢力としてTizenやFirefoxなども登場している。携帯端末のOSはスマートフォン時代に入り,そのOSをオープン化するのか,クローズドするのかという企業の戦略の違いがあるものの,現時点では,アップルのiOS とグーグルのAndroidの2大体制が軸になっている。アップルはiPhoneにおいて,アプリケーション開発環境を公開するとともに,自由にアプリケーションを流通させる仕組みを構築することによって,これまで通信事業者の支配力の強かったモバイルアプリケーションの市場を開放した。しかし,このビジネスモデルは,アップルが端末からアプリケーション・コンテンツまでを垂直統合的に管理する制限的なものである。これに対して,グーグルはAndroidのソースを完全オープン化し,これを望む企業に活用できるシステムを構築している。Androidソフト群は,既存のオープンソースを元にグーグルが改編,公開したものであった。グーグルの場合,公開義務のあるソフト部門にのみソース・コードを公開している。さらにグーグルの自社サービスのブラウザー,グーグルマップ,Gmail,YouTubeなども一緒に利用できるようにし,オープン化を推し進めている。
著者
斉藤 真奈美
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.10, pp.19-27, 2011-06

1990年代にアメリア・アレナスによって提唱された対話型鑑賞教育は,その後まもなく日本にも紹介され,美術館,学校現場が一体となった取り組みがなされている。この取り組みがそれまでの鑑賞教育と最も異なっているのは,美術の知識を一方的に教えるのではなく,ひとりひとりが作品と向き合い,意見を述べ合い,考察を深めていくところにある。 大学生を対象として,講義の一環として対話型鑑賞教育を取り入れる際には,幼い子供たちに対する場合とは違った配慮が必要となる。小論では,「まなざしの共有」というエッセンスを損なうことなく,すでにある程度の知識を身に着けた鑑賞者をどのように対話型授業に参加させてゆくかについて考察を試みる。
著者
佐生 武彦
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.61-67, 2008-06

本稿では,最新のオリジナル作品である"Kasa Jizo : The Stone Buddhas With The Straw Hats"(以下「カサ地蔵」)での幾つかの新しい試みを紹介しながら,前稿(2007)に引き続いて,英語劇のシナリオ作成と舞台作りのためのヒントを提示したい。シナリオ作成に関する新しい試みとしては,「二人三脚」及び「一人舞台」と筆者が呼ぶものがある。前者は,ナレーターに「突っ込み」を入れる役を配置し,二人の掛け合いで物語りを展開させて行く手法である。後者は,文字通り役者が一人で舞台に立ち,一回の発話で大量のセリフを発するものを指す。今回の作品中では,主人公のお爺さんによる地蔵を相手にしたモノログがこれに当たる。また,原作には存在しない「それらしい話」を創作・挿入する「部分創作」というものについても新しい視点から少し論じておきたい。舞台作りに関しては,地蔵にまつわる事項について検討する。