著者
南 俊朗 馬場 謙介
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-25, 2014-03

図書館が学習グループの構成支援サービスを提供することにより図書館は利用者にとっての"ソーシャルメディア"になることができる。これはネットワーク時代の図書館における新規サービスへの1つの試みとしての意義があり,また近年の大学図書館において利用者が長時間図書館に滞在するような環境づくりの切り札的存在となっているラーニングコモンズ(LC) 空間の有効活用にも寄与することになる。このような背景の下,本稿は図書館の貸出記録に基づいた学習グループの構成という手法について議論し,1つの方法を提案する。本手法においては,学習グループのメンバは貸出記録から定義される利用者の興味分野の類似性や専門度等に基づいて選定される。このような目的やアプローチによる研究はこれまで十分なされておらず,本論文の議論も未だ初歩的レベルにはあるものの,将来の図書館サービスとして大きな潜在的重要性をもつ。
著者
坂上 宏
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-42, 2005-03-22

1982年フィンランド大統領選挙で、マウノ・コイヴィスト(Mauno Koivisto)が当選を果たしたことは、前任者ケッコネン大統領(Urho Kekkonen)の25年に及ぶ長期支配に名実共に終止符を打ったという意味において、フィンランド政治史上大きな転換点となった。コイヴィストが大統領の座を手中にするための大きな一歩となった出来事は、彼が1979年5月に二度目の首相に任命されたことであった。本稿では、まず第二次コイヴィスト内閣編成の経緯について概述した。次に彼の首相就任をめぐる政治状況について、ケッコネンを始めとする有力政治家の利害関心、隣国ソ遠の姿勢、さらに世論の動向などを取り上げて議論した。
著者
進藤 康子 Yasuko Shintou 九州情報大学経営情報学部非常勤
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.134-126, 2013-03

万葉集の変(かえ)字法(じほう)から、対句を中心として、筆録者の言語意識に基づく、用字意識、表記意識を考察する。万葉集の表記法は、実に変化に富み、単に音声を形に写して表わすだけでなく、変字法による文字の可視的な領域での意味の拡充が、多種多様に意図されていることを論じ、万葉集のこの極めて特異な用字法の一端を明らかにした。
著者
進藤 康子
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.107-112, 2012-03

井原西鶴の『諸艶大鑑』の一節「心の綺麗なる事ばかりあらはし」を手掛かりとして、その手法の考察を論じる。この一節の持つ意味を詳しく解き明かすことにより、西鶴の作品作りの鍵となる部分が明確となると思われる。その鍵となる部分の考察には、遊女の「実」「誠」「粋」の持つ趣きを、丁寧に掬いあげることが解明の鍵となるであろう。西鶴は、遊女の世界を借り、遊女の次元から遊女の事を描いてはいるが、実は普段の人間一般に相通じる「綺麗なる心」の普遍性を描き切る、という西鶴の構想および自負と情熱が、執筆方針の出発点であったことを中心に論を進めていきたい。
著者
秋吉 浩志
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12, 2010-03

「ネットワーク外部性」 が存在する市場には、多くの特徴がある。その中でもっとも検討しなくてはならない特徴は、「スイッチングコスト」と、それにともなう「ロックイン効果」である。「スイッチングコスト」は「消費者が財の購入元を変更する際に変更しないときと比べて労力や資源を余分に投入する必要がある場合、その余分な労力や資源」 である。とくに情報通信関連産業では、この問題に必ず直面する。 また、それを利用して、関係するステークホルダーを囲い込み、既存のネットワークに加入していた消費者が、新規のネットワークに参加するときに「スイッチングコスト」が発生し、サンク・コストの壁ができると、その利用者を既存のネットワークに拘束する方向に作用することになり、そのネットワークから移動することが、困難になってくる。このような現象を「ロックイン効果」と呼ぶ。この両方の概念は、今後
著者
南 俊朗
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-30, 2007-03
被引用文献数
1

従来の図書館は紙などの物理媒体を資料としてきた。現在は、ディジタル化された電子媒体を資料としネットワーク経由で提供する、電子図書館化の動きが起こっている。しかし、すべての図書館資料が電子化されるのは遠い将来のことであり、かなりの期間、図書館は、物理および電子媒体の両方を資料とするハイブリッド図書館として利用者サービスを提供していくことになる。本稿は、ハイブリッド図書館において、資料などの利用データを自動収集し、それを解析することにより、利用者の要求にあったサービスを提供する図書館マーケティングに関して、その仕組みを考察し、また、その重要性を示す。今後、図書館のハイブリッド化を進めていくためには、本稿で提案するような図書館マーケティングや、それを活かした利用者サービスの提供が極めて重要になっていくものと考えられる。