著者
原田 信之 Nobuyuki Harada 岐阜大学教育学部
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.51-68, 2006-03

ドイツでは、TIMSSやPISAなどの国際学力調査において、ドイツの生徒の学力低下とともに、60年代から取り組まれてきた「教育の機会均等」の理念の実現も立ち遅れている制度的課題も映し出された。また、地方分権国家のドイツでは国家的教育スタンダードによるカリキュラムの標準化が進行する一方、教科の再編・統合化の動きがみられる。そして新たな自由競争原理に根ざした改革と同時に、格差是正と平等性の保障が政策ターゲットとして掲げられている。米英型の「新自由主義政策」対独仏型の「社会的不平等の是正に重点を置く政策」という新たなるイデオロギーの対立が生じている情勢にあって、学力向上を目指すドイツのカリキュラム政策はどのような展開をみせているのか、その政策意図(政策ターゲット)と課題を本稿では明らかにするとともに、現代社会に求められる学力モデルについて考察する。
著者
野田 富男 Tomio Noda 九州情報大学 経営情報学部 経営情報学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.25-38, 2012-03

わが国の航空機産業は、陸海軍の主導によりその発展を遂げた。このことは日本だけでなく第一次世界大戦で初めて飛行機が航空兵力として登場し、有効性を世界中に認識せしめた時から、同様な現象がヨーロッパの先進国間でも生じていた。大戦後、飛行機の研究・開発競争はフランス・ドイツ・イギリスなどの国々を中心に展開され、僅か10年の間に目覚しい進化を遂げていった。飛行機の開発後進国であったわが国では、技術に詳しい陸海軍関係者を通してヨーロッパやアメリカにおける最新の情報が航空機メーカーにもたらされていた。1920年以降、そうした情報を基礎にしてエンジン・機体の模倣と改良を繰り返しながら、20年間の研究努力を重ねて独自の技術を確立するに至った。その象徴がゼロ戦であり、そうした技術開発の蓄積により多くの優れた陸海軍機が作り出されて行くことになった。本稿では、陸海軍航空技術廠と民間飛行機メーカーにおける技術開発のプロセスを追うとともに、実戦に参加した多くのパイロットを養成した陸海軍飛行学校の内容についても検討を加えた。
著者
坂上 宏
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.69-87, 2006-03

ソ連は、1979年の第二次コイヴィスト内閣の組閣にあたって、保守の国民連合党の入閣に反対した。ソ連は、同党が入閣することによってフィンランドが西側に接近することを懸念したのである。また国民連合党が入閣できなかったことについて、ヴィロライネン国会議長は、それがケッコネン大統領による対ソ配慮に基づく措置であったことを示唆する発言をした。この発言をめぐり、両者の間で軋轢が生じ、権力闘争にまで発展するのであった。これは、1982年大統領選挙の帰趨にも影響を及ぼすものであったのである。
著者
全 彰煥
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.57-72, 2011-03

本稿は、司馬遼太郎が40年前書いた「韓のくに紀行」の中で韓国と韓国人に対する直接的表現だけをまとめて彼の対韓認識の特徴を分析するのに目的がある。紀行の旅程は古代日本と関係の深い朝鮮半島の南地域で、徹底的な準備下に行われた歴史踏査の旅であった。特に、朝鮮に帰化した沙也可の跡地訪問と彼の文集に対する調査は当時としては稀なことであった。司馬の観点は、古代日本と関わりのある加羅と任那、百済に集中し、歴史的な人的物的交流に基づいた百済文化との同質性を確かめているが、新羅に対しては否定的立場を持っている。朝鮮ノ役以来日韓合併に至る歴史的事件・戦争に対しては比較的に客観的視覚を保っている。韓国と韓国人については、半島国家の地理的特性を理解しながらも、儒教文化の弊害による文化と民族性の短所を厳しく指摘していて、この点においての韓国人の反論、反発は当然のことであろうが、個人的には概ね共感すると共に、韓国側の冷静な再考が要ると判断される。慕夏堂文集、平済塔、当時韓国農村等に関する感想と分析においては、資料中心ではない客観性不足と当時韓国の政治、経済に対する現実的状況認識の問題が提起できる余地があると考えられる。
著者
桑野 裕文
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.93-102, 2011-03
被引用文献数
1

大学では建学の精神・教育理念をもとに、ディプロマポリシ-(卒業認定・学位授与に関する方針)・カリキュラムポリシ-(教育課程の編成方針)・アドミッションポリシ-(入学者受け入れ方針)を内外に示し、PDCAサイクルの手法を用い教育を行っている。一方、文部科学省では、就職内定率の落ち込みが続くなか、大学生・大学院生の「就業力」の向上を目指し、今年度平成22年度(2010年度)より「就業力育成支援事業」をスタートさせた。この事業はキャリア教育に積極的な大学・短大を財政支援するもので、具体的には「職業について考える講座、企業へのインタ-ンシップと組み合わせた授業、学生への履修相談・助言への取り組み」などを想定している。各大学における就職指導・就職教育は従前より就職課を中心に行われ、最近ではキャリア教育(資格取得講座を含む)として全学体制で積極的に取り組んでいる。一部には大学がキャリア教育に力を入れることに対して「職業学校化する」・「大学は専門学校ではない」等々懸念する声がある。しかし、就職氷河期の現実を直視してかキャリア教育、とくに「初職に就くための就業力」の向上に積極的な大学が後を絶たない。そこで大学人の一員として、今回大学教育におけるキャリア教育について特に正課保健体育の役割について自問自答した。結果、キャリア教育に欠かせない「集団とコミュニケ-ション」は正課保健体育の目的であり方法であること、正課保健体育は、大学キャリア教育に欠かせないことを再認識した。
著者
国狭 武己 Takemi Kunisa 九州情報大学経営情報学部非常勤
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.95-106,

本研究の結果を以下のように要約する。まず、TQM と MOT の初期接点の契機を明らかにした。それは、1980 年NBC 放映の「If Japan Can… Why Can't We?」である。これによりアメリカでデミングと日本的TQC が脚光を浴びることになり、アメリカのTQM の萌芽が始まる。また、その直後の1981 年にMIT スローンスクールでMOT コースが開講された。これを契機にTQM と MOT の三つの初期接点が出現する。第一の接点は、1985 年に発表された産業競争力委員会(1983 年設立)の報告書「ヤング・レポート」である。これは技術重視を主張し、その後のMOT の展開に大きく影響している。また、これはすぐ後に制定されるMB 賞法に大いに影響したと判断できる。第二の接点は、1987 年に制定されたMB 賞法である。これは、TQM の確立に直接関与しているだけでなく、MOT にも大きく影響していると思われる。それは、MB 賞評価基準等から読み取れる。最後の第三の接点は、1989 年に発表されたMIT 産業生産性調査委員会(1986 年発足)の調査報告書Made in America である。これも「ヤング・レポート」と同様、技術重視を主張するが、より詳細である。品質向上や継続的改善等にも言及しているので、MOT だけでなくTQM の発展にも大きく貢献したと判断できる。
著者
内田 寛樹
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-46, 2007-03

開国以降、衰退の一途を辿った長崎港と、対外貿易で繁栄した横浜港の貿易構造を、明治前期の産業構造や交通体系の変化から考察する。さらに両港の居留地における邦商の商権回復運動の動向を考察し、結果として長崎が近代的な新産業資本の確立を行い得ず、「日本の」長崎から「九州の」長崎へと地位を落としたこと、横浜は対照的にそれを行いえて、日本を代表する貿易港に成長したという、両港の明暗を分けた要因を探る。
著者
南 俊朗 大浦 洋子 Toshiro Minami Ohura Yoko 九州情報大学 経営情報学部 情報ネットワーク学科 九州情報大学 経営情報学部 情報ネットワーク学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.39-50, 2012-03

大学生の学力低下が指摘されて久しい。現在入学してくる学生達は, いわゆる「ゆとり教育」世代であり, しかも大学全入時代でもある。十分な学力がなくても大学に入学できる。それを受けて, 大学はリメディアル教育を始め, 初年次教育を充実させるなど対策を充実させてきた。それにも関わらず, 教育現場での授業担当者の目から見ると学生の質が向上してきている実感がない。むしろ毎年低下してきている印象さえ受ける。その根本原因は学力以前の問題, たとえば学ぶことへの意欲, 知的好奇心, 将来へ向けた目的意識など, にあるもののように見える。本稿の目的は, このような現状認識の下,学生の目的意識や学習意欲を高め, その心的自立を促し, その結果学力も向上するというシナリオを実現することを目指して, 学生に対する学習支援のありかたを議論し, 解決策を模索することである。この目的に向かっての1 つのアプローチとして, 本稿では特にデータ解析を利用した学生理解法について議論する。このアプローチを取ることにより, データによる裏付けのある知見を得, それに基づき学生一人一人へのアドバイスのできる仕組みを確立したい。このような手法の発展は, 学生の学力不足という大問題に対する根本的な対策への第一歩となるであろう。
著者
進藤 康子
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.77-88, 2014-03

江戸時代後期の博多の歌人大隈言道(おおくまことみち)は寛政十(1798)年生まれ、慶応四(1876)年没、七一歳。先祖は清原姓で、天武天皇第三皇子舎人親王の子孫であることを誇りとし、家集『草径集』には、清原言道とも記す。黒田藩士二川相近(ふたがわすけちか)のもとで、書や和歌を学ぶ。家業を弟に譲り、専ら和歌の師として福岡今泉の自宅「ささのや」にて門下歌会を開き活動する。日田の広瀬淡窓にも師事する。『草径集』を出版するため大坂に登り、そこで緒方洪庵、萩原広道、中島広足、広瀬旭荘らと交流する。門下には野村望東尼など。本稿において、門下歌会に於ける添削指導の実態を明らかにし、門人への書簡資料や、新たに見つかった月ヶ瀬の宿帳の資料等から類推できる大坂での活動を新出資料として示した。また、言道の歌集出版前後の歌稿資料や、『ひとりごち』『こぞのちり』などの歌論をもとに、年譜形式で言道の事蹟を記し、文事を顕彰、言道の年譜を足掛かりとして、更に幕末歌壇の動向と展望を知る基礎資料として示した。
著者
甘 長青 Changqing Gan 九州情報大学 経営情報学部 経営情報学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.29-40, 2013-03

この頃、中国経済の先行きに内需と輸出の両面で不安が広がっている。不公平な富の分配や、貧弱な社会保障による国民の将来不安が消費拡大を妨げる一方で、政府債務問題に起因する欧米経済の不振が中国の対外輸出にブレーキを掛けている。また無人島を巡る日本との緊張が続き、外資の生産拠点が東南アジアなどに移る動きが加速すれば、雇用や消費にも影響が出かねない。成長減速傾向が鮮明になったことを受け、中国当局は金融緩和やインフラ投資のスピード認可など景気の下支えに動き出したが、地方政府絡みの不良債務が再び増加に転じる恐れもある。長期化の様相を見せる欧米債務問題は中国経済に2、3次的な影響を及ぼした場合、かつて同国の新華社が皮肉するところの「財政赤字中毒症を患ったように見える」アメリカを始めとする西側諸国と一線を画することができるのか。本稿では、欧米の債務問題は長期化する中で、中国政府の財政リスクを考察してみる。
著者
甘 長青 Changqing Gan 九州情報大学 経営情報学部 経営情報学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-12, 2014-03

中国では、1994年に導入された「分税制」と呼ばれる基本的な税財政制度の枠組みの中で、国家権益の保護やマクロ・コントロール機能を持つ税目は中央税、経済発展に直接関わる主要税目は共有税、地方の徴収管理に適する税目は地方税、と位置付けられている。しかし、その後、中央も地方も分税の本旨をそっちのけに財源を奪い合ってきた。中央や省政府は自らの財政収入を増加させるため、様々な手管を弄してきたことも判明した。結果的に、本来政府間で税目を分けるはずの分税制が変容し、共有税化が加速度的に進んでいる。歯止めかからぬ共有税化の動きには、分税制を共有税が支えると言う皮肉さえ感じられる。分税制の導入から二十年間の歳月を経た、現在の共有税システムについて言えば、94年当時と比べて有利な扱いを獲得したのは、中央や省のような上位政府層である。羊頭狗肉の現行分税制を改め、本物に近付けるための取り組みは待ったなしと言えよう。
著者
竹石 洋介 Yousuke Takeishi 九州情報大学 経営情報学部 経営情報学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.75-84, 2012-03

本研究は、日本の「伝統」を教えるための「相撲の教材研究」のひとつの試みである。江戸時代後半から衰退し始め、近代日本においてその存続を危ぶまれた相撲は、「国内に向けたナショナリズム」と「国外に向けての倫理主義」を前面に押し出すことで、近代日本の「国技」として存続し発展してきた。その際、近代相撲にはじめて現れた「天覧試合」「国技館」「品位・礼節」などは、「創られた伝統」として「内に向けたナショナリズム」と「外に向けての倫理主義」を象徴するものだったのである。つまり、相撲における「品位・礼節」は、近代になって発明された「伝統」に過ぎず、それを教える意義は、少なくとも、「伝統」の教育としてではない。では、学校体育で教えるべき相撲の「伝統」とは如何なるものか。「身体」に焦点化しながら考察する。
著者
全 彰煥 Chang Hwan Jeon 九州情報大学 経営情報学部 経営情報学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.63-74,

本稿は、司馬遼太郎氏の朝鮮(韓国)関連紀行文の3 部作 - 「韓のくに紀行」「耽羅紀行」「壱岐・対馬の道」- 研究の一環であって、朝鮮関係の表現を中心に司馬氏の朝鮮認識について探ってみるのに目的がある。その内容は、1) 日本神道の原型は対馬にあり、対馬の古神道は朝鮮に定着した古代大陸信仰の影響を受けていたと見ていること 2) 「遣新羅使」の存在確認と単発性・無成果であった役割の分析 3) 豊臣の朝鮮出兵の無謀さと日韓合併の間違いの指摘 4) 中西氏の山上憶良の百済流民説への賛同 5) 古代朝鮮半島の文字(イドゥ等)が存在していないことへの残念な遺憾表明 6) 元・高麗連合軍の日本侵略過程説明 7) 朝鮮儒教文化の前近代性と閉鎖的弊害の指摘等である。このような内容において、 1) 日本の古神道の原型が対馬 ⇒ 朝鮮半島 ⇒ 大陸北部の経由であると主張している司馬氏の立場はいつも一貫している。 2) 「遣新羅史」に関する言及は、その歴史的存在自体がほとんど知られていない韓国側としては意外であるが、統一新羅の華やかな発展とは別に、日本側に積極的外交政策と国際感覚があったのを反証していると考えられる。 3) 豊臣の朝鮮出兵と日韓合併について、司馬氏は否定的批判の立場を堅持している。 4) 中西氏の主張を引用した山上憶良の百済流民説に対して賛同している。 5) 古代朝鮮の文字が不明であることに遺憾の意を表している。 6) 高麗末期は日本の倭寇勢力に蹂躙されて滅亡への決定打を受けていたことに対する司馬氏の認識は見当たらない。 7) 朝鮮儒教に対して否定的認識をもっていたのが分かる。
著者
南 俊朗 Toshiro Minami 九州情報大学経営情報学部情報ネットワーク学科 Kyushu Institute of Information Sciences
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-17,
被引用文献数
1

今後、ネット世代と称される図書館利用者が増加する。彼らは、インターネット接続可能な携帯電話などの情報端末を用いて、必要なときに必要な情報を入手したり、友人などと連絡をとることを当然のことと考えている。そのような人達が構成するネット社会において図書館はどのような役割を果たすべきであろうか?本稿では、利用者が必要とするときにいつでもどこからでもサービスを提供できる図書館とはどのようなものかを考察する。また、多くの携帯で読み取ることのできる2次元コードを利用した蔵書管理およびそれを利用したサービスを提案することにより、ネット世代向けに有効であろう図書館サービスについても考察する。The number of library patrons who are called "Net Generation" is increasing. They think it is natural to access to the necessary information whenever they need. They always carry PDAs and/or cell phones that are able to connect to the Internet. What role should libraries play in such a network society which consists of such people? This paper discusses what libraries should be like in order to provide services for these people who would ask for help to the libraries whenever they need help. It also proposes and discusses new library services for such people of net-generation by using 2-dimentional code that can be read by most cell phones.
著者
秋吉 浩志 Koji Akiyoshi 九州情報大学 経営情報学部 経営情報学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.47-53,

現代の大学教育において、すでに学力のみを問うような大学教育は求められておらず、社会人基礎力、ならびに入社後の人材を育成する即戦力的な人材育成までもが大学のような高等教育機関には望まれる時代に突入している。そこで、九州情報大学のマーケティングゼミナールにおいて「産学連携型ゼミナール」の運営を通じてどのように学生を、学力も含めて、まず、社会人基礎力を養成する試みについて紹介したい。その中で重要なことは一般的なインターンシップのような社会人基礎力、応用力等を養成するだけでなく、産学連携のもと、本学のマーケティングゼミナールにおける企業や団体、組織との産学連携「ソーシャルメディアミックス事業」での試みを紹介し、産学連携事業型としてのゼミナール活動のなかで社会人力と学力を同時に養成をする重要性を主張したい。
著者
竹石 洋介
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.75-84, 2012-03

本研究は、日本の「伝統」を教えるための「相撲の教材研究」のひとつの試みである。江戸時代後半から衰退し始め、近代日本においてその存続を危ぶまれた相撲は、「国内に向けたナショナリズム」と「国外に向けての倫理主義」を前面に押し出すことで、近代日本の「国技」として存続し発展してきた。その際、近代相撲にはじめて現れた「天覧試合」「国技館」「品位・礼節」などは、「創られた伝統」として「内に向けたナショナリズム」と「外に向けての倫理主義」を象徴するものだったのである。つまり、相撲における「品位・礼節」は、近代になって発明された「伝統」に過ぎず、それを教える意義は、少なくとも、「伝統」の教育としてではない。では、学校体育で教えるべき相撲の「伝統」とは如何なるものか。「身体」に焦点化しながら考察する。
著者
国狭 武己
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.95-106, 2012-03

本研究の結果を以下のように要約する。まず、TQM と MOT の初期接点の契機を明らかにした。それは、1980 年NBC 放映の「If Japan Can… Why Can't We?」である。これによりアメリカでデミングと日本的TQC が脚光を浴びることになり、アメリカのTQM の萌芽が始まる。また、その直後の1981 年にMIT スローンスクールでMOT コースが開講された。これを契機にTQM と MOT の三つの初期接点が出現する。第一の接点は、1985 年に発表された産業競争力委員会(1983 年設立)の報告書「ヤング・レポート」である。これは技術重視を主張し、その後のMOT の展開に大きく影響している。また、これはすぐ後に制定されるMB 賞法に大いに影響したと判断できる。第二の接点は、1987 年に制定されたMB 賞法である。これは、TQM の確立に直接関与しているだけでなく、MOT にも大きく影響していると思われる。それは、MB 賞評価基準等から読み取れる。最後の第三の接点は、1989 年に発表されたMIT 産業生産性調査委員会(1986 年発足)の調査報告書Made in America である。これも「ヤング・レポート」と同様、技術重視を主張するが、より詳細である。品質向上や継続的改善等にも言及しているので、MOT だけでなくTQM の発展にも大きく貢献したと判断できる。
著者
南 俊朗 大浦 洋子
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-16, 2013-03

多くの大学において教師達は,学ぶ意欲が十分ではない学生を相手に如何に教育効果を上げるか日々努力を続けている。学力の低い学生達を観察すると,彼らは学力以前に学ぶことへの動機づけが十分でなかったり,学ぶとはどういうことかを意識していなかったりと,学びの基礎となるべき知識に対する好奇心,ノートを作成したり復習や予習をしっかりやるなどの心の姿勢に問題がある場合が多い。本稿では,学生の学ぶ力やその基礎となる学びへの意欲などを授業データに基づいてモデル化することを試みる。授業データとしては平常点の基礎となる出席や宿題提出状況などや試験の採点データ,そして学期末に実施された学生自身と授業への評価アンケートの結果を用いる。これらのデータを基に,学生の努力・成果・評価の相互関連を分析する。個々の学生に対する主観的な印象情報に加えて,このようなデータに基づく客観的な知見を併用することによって,より精密な学生モデルを得ることができ,ひいてはより良い授業改善に繋がることが期待できる。