著者
南 俊朗
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.18-27, 2013-09

大学にとって最も重要な課題は教育力の向上である.大学の一部署である大学図書館にとっても学生支援は大きな課題である.昨今は少子化などの社会的変化に伴い入学してくる学生の多様化が進んでいる.我々はデータに基づいてこのような学生の実像を把握する研究を行ってきた.図書館データとしては特に貸出記録に注目し,授業データとしては出席,宿題,試験,そして学生の自己・授業評価アンケートを用いる.本稿では,大学の教育力向上,特に社会人・職業人としての教育力の観点からこれらの研究結果を総括し,今後の方向性を議論する.
著者
南 俊朗 大浦 洋子
出版者
九州情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は授業や図書館において得ることのできるデータ解析を通じて学習者としての学生の学びへの姿勢に関するモデル構築を目的とした.通常のアンケート解析による直接的な統計解析ではなく図書館の貸出データなどから間接的な手法により潜在的な姿勢の把握手法の開発を目標とした.研究においては対象者の学習姿勢に関する情報を発見するための新しい指標の提案とデータ適用および考察を行った.その結果,図書館データ解析より,法学部系の学生が文系の典型例となっていることなどの発見があった.授業データ解析からは学ぶ内容に対する広い視野をもった学生の成績が良いことが見い出された.研究成果は国際会議・雑誌等で周知を図った.
著者
柳 炳章 南 俊朗
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.1-10, 2009
被引用文献数
1

インターネット経由で入手できる情報が膨大になり,また,情報を探しだすための検索エンジンが高度化したことにより,Web を使って情報を入手するのが一般化した.電子ブックなどの図書館資料を自宅で閲覧することもできる.これからますますディジタル情報への需要が高まっていくであろう.図書館におけるディジタル資料の重要性と比重も同様に大きくなると考えられる.図書館は従来の紙資料とディジタル資料の両方を扱うハイブリッド図書館化への道を歩んでいる.今後ますます図書館に出向かずに図書館を利用する傾向が強まるであろう.一方,図書館には資料の提供以外に学習の場,コミュニティの人々の交流の場を提供するなどの文化的社会的役割もある.今やハイブリッド化した図書館における"場"のあり方を根本的に見直すべき時期にある.すでにLearning Commons などの形で利用者個人やグループでの学習を快適化する努力が大学図書館を中心に進められている.本稿ではハイブリッド図書館に対する場の構築策としてワンストップサービスの実現を提案する.館内をテーマ別のレイアウトに再構成することにより利用者は同一エリアに滞在しつつハイブリッド資料や人的サービスを享受することができる.このようなサービスの統合化により,利用者の図書館への関心をより一層高めることができる.
著者
南 俊朗 大浦 洋子 Toshiro Minami Ohura Yoko 九州情報大学 経営情報学部 情報ネットワーク学科 九州情報大学 経営情報学部 情報ネットワーク学科
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.39-50, 2012-03

大学生の学力低下が指摘されて久しい。現在入学してくる学生達は, いわゆる「ゆとり教育」世代であり, しかも大学全入時代でもある。十分な学力がなくても大学に入学できる。それを受けて, 大学はリメディアル教育を始め, 初年次教育を充実させるなど対策を充実させてきた。それにも関わらず, 教育現場での授業担当者の目から見ると学生の質が向上してきている実感がない。むしろ毎年低下してきている印象さえ受ける。その根本原因は学力以前の問題, たとえば学ぶことへの意欲, 知的好奇心, 将来へ向けた目的意識など, にあるもののように見える。本稿の目的は, このような現状認識の下,学生の目的意識や学習意欲を高め, その心的自立を促し, その結果学力も向上するというシナリオを実現することを目指して, 学生に対する学習支援のありかたを議論し, 解決策を模索することである。この目的に向かっての1 つのアプローチとして, 本稿では特にデータ解析を利用した学生理解法について議論する。このアプローチを取ることにより, データによる裏付けのある知見を得, それに基づき学生一人一人へのアドバイスのできる仕組みを確立したい。このような手法の発展は, 学生の学力不足という大問題に対する根本的な対策への第一歩となるであろう。
著者
馬場 謙介 南 俊朗 伊東 栄典
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.60-67, 2009

インターネットやそれを利用したサービスが普及するに合わせて図書館資料も従来の紙資料からディジタル資料へと比重を移してきている.インターネットの利用が非常に進んだ国としてよく知られている韓国の図書館はこのような変化の中でどのようなサービスを行っているのかを調査するために2010年3月初旬ソウル市内にある先進的な図書館を訪問した.本稿は我々の訪問先である恩平区立図書館,正讀図書館,ソウル大学図書館,および韓国国立図書館などにおける図書宅配サービスや図書電子化に関する調査結果を報告し,また,それを踏まえて次世代の図書館サービスの在り方を考察する.
著者
織田 充 南 俊朗 有馬 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.98, no.437, pp.33-40, 1998-12-01
被引用文献数
3

Web文書検索において, 自分の求めている文書を指定するのに適したキーワードを思いつけないことがある.そのような利用者に対して, 利用者達による過去の検索履歴を用い, 利用者の検索意図との関連が高いと推定されるキーワード(群)を指示することで, 利用者は候補の中から自分の意図に近いものを選ぶだけで検索を進められる.本発表では利用者の検索発想力を高めるための支援を行うSASSシステム(Searching Assistant with Social Selection)の設計思想及び概要を述べる.システムは, 蓄積された検索キーワード列を基に, 現在の状況との関連度を計算し, それに基づき推薦を行う.情報の提供者ではなく利用者による実績に基づく点が本方式の特徴である.
著者
南 俊朗 Toshiro Minami 九州情報大学経営情報学部情報ネットワーク学科 Kyushu Institute of Information Sciences
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-17,
被引用文献数
1

今後、ネット世代と称される図書館利用者が増加する。彼らは、インターネット接続可能な携帯電話などの情報端末を用いて、必要なときに必要な情報を入手したり、友人などと連絡をとることを当然のことと考えている。そのような人達が構成するネット社会において図書館はどのような役割を果たすべきであろうか?本稿では、利用者が必要とするときにいつでもどこからでもサービスを提供できる図書館とはどのようなものかを考察する。また、多くの携帯で読み取ることのできる2次元コードを利用した蔵書管理およびそれを利用したサービスを提案することにより、ネット世代向けに有効であろう図書館サービスについても考察する。The number of library patrons who are called "Net Generation" is increasing. They think it is natural to access to the necessary information whenever they need. They always carry PDAs and/or cell phones that are able to connect to the Internet. What role should libraries play in such a network society which consists of such people? This paper discusses what libraries should be like in order to provide services for these people who would ask for help to the libraries whenever they need help. It also proposes and discusses new library services for such people of net-generation by using 2-dimentional code that can be read by most cell phones.
著者
喜田 拓也 南 俊朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.172, pp.151-156, 2005-07-07

多くの図書館において所蔵文献の検索にはOPAC (Online Public Access Catalog)が用いられている.しかしながら, 歴史の長い図書館では古い資料の書誌データが電子化されないままであり, そのような資料はOPACで検索することができない.すなわち, 利用者は図書目録カードが入った引出しの前まで出向き, カードを一枚一枚めくりながら目的の資料を探さなければならない.このような状況を打開する手段として, 図書目録カードのすべてを画像データ化し, Web上でカードを検索できるシステムを我々は提案してきた.本稿では, 新たに改善された本システムの概要について述べる.
著者
南 俊朗 大浦 洋子
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-16, 2013-03

多くの大学において教師達は,学ぶ意欲が十分ではない学生を相手に如何に教育効果を上げるか日々努力を続けている。学力の低い学生達を観察すると,彼らは学力以前に学ぶことへの動機づけが十分でなかったり,学ぶとはどういうことかを意識していなかったりと,学びの基礎となるべき知識に対する好奇心,ノートを作成したり復習や予習をしっかりやるなどの心の姿勢に問題がある場合が多い。本稿では,学生の学ぶ力やその基礎となる学びへの意欲などを授業データに基づいてモデル化することを試みる。授業データとしては平常点の基礎となる出席や宿題提出状況などや試験の採点データ,そして学期末に実施された学生自身と授業への評価アンケートの結果を用いる。これらのデータを基に,学生の努力・成果・評価の相互関連を分析する。個々の学生に対する主観的な印象情報に加えて,このようなデータに基づく客観的な知見を併用することによって,より精密な学生モデルを得ることができ,ひいてはより良い授業改善に繋がることが期待できる。
著者
南 俊朗 馬場 謙介
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-25, 2014-03

図書館が学習グループの構成支援サービスを提供することにより図書館は利用者にとっての"ソーシャルメディア"になることができる。これはネットワーク時代の図書館における新規サービスへの1つの試みとしての意義があり,また近年の大学図書館において利用者が長時間図書館に滞在するような環境づくりの切り札的存在となっているラーニングコモンズ(LC) 空間の有効活用にも寄与することになる。このような背景の下,本稿は図書館の貸出記録に基づいた学習グループの構成という手法について議論し,1つの方法を提案する。本手法においては,学習グループのメンバは貸出記録から定義される利用者の興味分野の類似性や専門度等に基づいて選定される。このような目的やアプローチによる研究はこれまで十分なされておらず,本論文の議論も未だ初歩的レベルにはあるものの,将来の図書館サービスとして大きな潜在的重要性をもつ。
著者
南 俊朗
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.9-18, 2010

今後とも図書館が利用者ニーズを正確に把握し,より適切な利用者サービスを提供して行き続けるためにはデ ータマイニングなどの解析手法を用い,その結果をマーケティング活動に活用することが欠かせない.その方向 に向かっての試みとして,本稿では九州大学附属図書館中央図書館の2007 年度貸出データの解析例を示し,その 過程で得られた知見を示す.図書館マーケティングは現在初歩的段階にあるものの,本稿のような具体的事例を 蓄積していくことにより,将来は,有効性が高く,多くの図書館で導入可能な自動化された手法へと展開してい くことが期待できる.
著者
南 俊朗
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.19-28, 2009

我々が現在享受している生活の質を保持しつつ持続可能な成長を続けて行くためには,新しい技術の開発や我々の生活スタイルの変革などに関する新しいアイディアが必要であり,それを生み出すためには高い知的水準を持った人々からなる知識社会を構築していくことが欠かせない.図書館はこれまで社会の知的水準の向上や文化的生活を支えるのに貢献してきたし,今後も貢献していく必要がある.一方図書館は出版社や作家などの一部から「無料の貸本屋」などと揶揄されることもある.しかし,図書館の社会的役割を考える時,出版社などの企業は図書館を自らのビジネスの障害になる存在としてではなく,むしろ,自分たちのビジネスを補佐する存在として捉え,両者にとって利益のあるWin-Win 関係を築くべきである.本論文では,知識社会を発展させるために,このような図書館を仲介者とした企業と社会(地域住民)の協力関係を構築することの重要性を指摘し,またそのための概念モデルを提案する.企業が図書館との協力関係を深めていくことは我々利用者にとって,また我々の社会にとっても大きな益となる.このような観点に立つと,本稿で提案するモデルは図書館や利用者,企業の全てにとってのWin-Win-Win 関係構築に役立ち,またこれからの知識社会構築のための図書館の新サービスとして重要な第一歩であると言える.
著者
詫間 沙由香 兵藤 健志 牧瀬 ゆかり 南 俊朗 井上 創造 金 銀子
出版者
九州大学附属図書館研究開発室
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.46-55, 2008

2009年2月下旬,ソウル市内外にある2つの大学図書館(ソウル大学校図書館および成均館大学校図書館)と2つの公共図書館(国立中央図書館・国立デジタル図書館および議政府市図書館)を訪問した.これらの図書館では,ICタグなどの最新技術を導入した設備やインフォメーション・コモンズなどの利用者へのサービス空間としての機能の整備状況を見学することができた.図書館をめぐる日本と韓国の環境には社会の仕組みや背景となる文化の相違などがあるものの,多くの類似点もある.韓国の先端的図書館の新しい動きは,これからの日本の図書館の進むべき方向を示唆しているのではなかろうか.
著者
南 俊朗 廣川 佐千男 伊東 栄典 池田 大輔
出版者
九州情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ICT技術の進展を受け図書館は様々な取り組みを行ってきた.Webサイトを開設し外部に向けた情報発信を積極的に行い,Web経由での蔵書検索を可能とし,貴重図書のディジタルデータの公開,電子ジャーナルの充実などを行ってきた.本研究は,図書館における次なる段階として評価情報などを利用した図書推薦システムに着目し,そのシステム要件や運用に関する基礎的な検討を行い今後の実用化への道しるべを与えることを目的に実施された.このような図書推薦システムの実現には,(1)評価情報などの収集,(2)情報の解析,(3)結果の提示,などが必要となる.これらに関する次のような研究を行い,また,その成果を国際会議などで発表した.(1)収集:評価情報への基礎データには,図書館外部情報,図書館サイトで収集された情報,図書館内収集の資料利用データなどがある.この認識の下,特定トピックに関するWebページを収集するトピッククローラーを開発しWebページからの情報抽出技術を研究した.また,RFID技術を利用したインテリジェント書架による館内での図書利用データの収集技術を研究し予備的実験を実施した.(2)解析:図書の評価情報を含む幅広いメタデータを対象とした解析技術を研究した.書評リストや音楽のプレイリストも対象とした.評価データ抽出へ適用するために,大量の項目リストから類似項目を発見する技術も研究した.またインテリジェント書架で収集された利用データを解析し,図書館や図書館利用者にとって有益な知見を得る手法を研究した.(3)提示:図書推薦サービスはそれだけで独立したものではなく,図書館ポータルサイトにおける利用者インタフェース全体の問題との認識の下,検索結果を鳥瞰して提示する技術を研究しWeb情報の統合化に関する研究成果を学内ポータル構築に適用した.これらの研究成果は,今後図書館で普及すると考えられる利用者への個別(Personalized)サービスなどに有効であるものと期待される.
著者
南 俊朗
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-30, 2007-03
被引用文献数
1

従来の図書館は紙などの物理媒体を資料としてきた。現在は、ディジタル化された電子媒体を資料としネットワーク経由で提供する、電子図書館化の動きが起こっている。しかし、すべての図書館資料が電子化されるのは遠い将来のことであり、かなりの期間、図書館は、物理および電子媒体の両方を資料とするハイブリッド図書館として利用者サービスを提供していくことになる。本稿は、ハイブリッド図書館において、資料などの利用データを自動収集し、それを解析することにより、利用者の要求にあったサービスを提供する図書館マーケティングに関して、その仕組みを考察し、また、その重要性を示す。今後、図書館のハイブリッド化を進めていくためには、本稿で提案するような図書館マーケティングや、それを活かした利用者サービスの提供が極めて重要になっていくものと考えられる。