- 著者
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若井 絹夫
富山 栄子
- 雑誌
- 事業創造大学院大学紀要 (ISSN:21854769)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.1, pp.99-114, 2021-04
国内の地域通貨は、町井・矢作[2018]によれば、地域商店街の活性化の方策として各地で取り組まれるようになった経済的効果を目的とするものとコミュニティの再生や人のつながりを目的に市民団体が主体となって取り組んだものの2つの流れがある。2005年から新たな発行主体による電子地域通貨の発行が増えている。本稿では飛騨信用組合の導入した「さるぼぼコイン」と気仙沼地域戦略の「気仙沼クルーカード」の事例から地域の課題と密接に関連する事業主体が導入した電子地域通貨の目的と運営及び機能の変化を明らかにし、2 つの地域社会の資金流通と電子地域通貨の役割について考察した。その結果、金融機関と地方自治体が発行主体となることで、地域の課題解決が地域通貨の目的となり独自の工夫や顧客情報の活用を行っていることを確認できた。さらに地域の資金流通の構造と電子地域通貨の運営に整合性があること、利用者数と利用額の推移から電子地域通貨の効果について確認した。