- 著者
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赤井 竜男
- 出版者
- 京都大学農学部附属演習林
- 雑誌
- 京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, pp.68-87, 1972-12-25
三浦実験林は木曽御岳山の南斜面, 標高1, 200 - 1, 500mの準平原にあらわれる湿性ポドゾル地帯における森林造成の指針をもとめるために, 1966年11月, 事業的規模で設定された。本研究はこの実験林で行なわれているヒノキの各種天然下種更新試験のうち, 設定後3 - 4年を経過した帯状皆伐, 皆伐母樹法, 択伐更新試験地の更新状態についてとりまとめたものである。天然生ヒノキ林の平均樹高の2倍, 約50m幅に伐採帯と保残帯を交互に組み合せた帯状皆伐更新地には, この地域に普通あらわれるササを除草剤で枯殺した帯と残した帯が作られた。ササは多いところで地上部乾重が約6ton/haもあり, その中の地床の相対照度は1 - 2%できわめて暗く, また地温もササ除草地に比較して低い。30 - 60m間隔に3 - 10本ずつ群状に母樹を残した (保残率4%) 皆伐母樹法更新地と, 約50%の単木ぬきぎりを行なった択伐更新地はすべてササが除草されている。A_o層の堆積は各試験地ともきわめて厚く, 乾重でほぼ40 - 60ton/haと推定され, 更新上の大きな障害となっている。帯状皆伐更新地における保残帯やササの成立する帯では稚樹の発生が少ないが, ササ除草を行なった伐採帯には著しく多い。しかも林縁付近が常に多く, 実験林設定後発生した2 - 4年生の稚樹が平均7本/m_2以上に達した個所もあるが, 伐採帯の中央付近になるほど少なくなる傾向が認められた。皆伐母樹法更新地ではほぼ全面にわたって稚樹がよく更新しているが, 母樹群付近とか種予の散布が重なり合うようなところに特に多い。択伐更新地はササが除草され, 林床も比較的明るくなっているのに, せっかく発生した稚樹のほとんどは年内に消失してしまうようであった。各更新面の状態別にまとめた稚樹の大きさの頻度分布や年平均生長量から判断して, 密生したササは稚樹の発生ばかりか生長に対しても悪い影響を与えていると思われた。稚樹の根元直径 (D_o) に対する稚樹高 (H) の相対生長関係はバラツキが大きく, また更新面の状態のちがいによってほとんど分離しない。そして同じ単位にしたH/D_o=100の値より小さいものが多かった。ササ除草地に更新している稚樹の各部分量間の相対生長関係からみて, 林内稚樹の同化部乾重や地上部乾重は相対的に少ない傾向が認められる。しかし葉面積あたりの葉乾重は林内外ともほとんど差がない。以上のことからヒノキ天然生林の成立する高冷地の湿性ポドゾル地帯において, 早期に稚樹の発生, 生長を期待するならば, 母樹を樹高の2倍間隔以内に残し, ササのような地床植生をできるだけ除去することがとりあえず必要であると思われた。