著者
小野 理 藤掛 一郎
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.221-237, 1993-12-24

利用規則を定めることで利用客の行動を規制しようとしているレクリエーション利用地は多いが、規則が十分に守られない例もある。ここでは、利用客の過去の経験と利用規則の知識との相関を見ることで、利用規制の方法を考察した。その結果、利用者の過去の訪問経験や、この論文で間接経験と呼ぶ自然体験や自然に対する関心の高さなどが、その人がレクリエーションの利用規則の内容を判断するのに影響を与え、正しい判断を促すことが示された。また、規則の内容を知るだけでなく、規則内容の利害関係や因果関係を理解することが規則への同調行動を促すと考えられる。その際、間接経験はレクリエーション行動の意志決定過程にも影響を与え、間接経験が豊かな人は利害関係や因果関係の情報が与えられない場合でも規則の内容に合致した行動をとる確率が高い。したがって、レクリエーション利用を研究する上で間接経験の影響を重視する必要があると考えられる。
著者
岡野 竜馬 赤尾 健一 藤原 三夫 坂野上 なお
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.154-172, 1991-12-20

本研究では, 素材供給者および素材需要者両方の経営行動の分析を通じて, 京都の素材市場構造を明らかにした。分析結果は, 第一に, 素材生産業者数の減少とその雇用労働者の高齢化が進行しているが, まだ彼らは地域内の素材生産を担うだけの経営能力を有しており, その中心的位置を占めること。第二に, 原木市売市場は集出荷時力を増大させており, 素材流通過程において素材生産業者との分業体制を確立していること。そして第三に, 素材需要者としては, (1) 買方数は多いものの多様な樹材種の素材を小量づつ需要する地元京都府の製材業者と, (2) 買方数は少なく仕入れ樹材種も限定されているものの, 素材を安定的にしかも大量に仕入れる奈良県桜井市をはじめとする府外の製材業者 (および転売業者) がみられる。そして, 地域産材の流通のためには後者の存在が不可欠となっている。全国的傾向とは異なり, 先進林業地である北桑田郡周辺で近年, 素材生産量が維持されてきたのは, このような流通体制が維持されているからである。とはいえ, 経済的に合理的で効率のよい木材生産・流通, 加工体制を整備し, 国内の森林資源の活用を図るという課題は, 依然残されている。
著者
赤井 竜男
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.68-87, 1972-12-25

三浦実験林は木曽御岳山の南斜面, 標高1, 200 - 1, 500mの準平原にあらわれる湿性ポドゾル地帯における森林造成の指針をもとめるために, 1966年11月, 事業的規模で設定された。本研究はこの実験林で行なわれているヒノキの各種天然下種更新試験のうち, 設定後3 - 4年を経過した帯状皆伐, 皆伐母樹法, 択伐更新試験地の更新状態についてとりまとめたものである。天然生ヒノキ林の平均樹高の2倍, 約50m幅に伐採帯と保残帯を交互に組み合せた帯状皆伐更新地には, この地域に普通あらわれるササを除草剤で枯殺した帯と残した帯が作られた。ササは多いところで地上部乾重が約6ton/haもあり, その中の地床の相対照度は1 - 2%できわめて暗く, また地温もササ除草地に比較して低い。30 - 60m間隔に3 - 10本ずつ群状に母樹を残した (保残率4%) 皆伐母樹法更新地と, 約50%の単木ぬきぎりを行なった択伐更新地はすべてササが除草されている。A_o層の堆積は各試験地ともきわめて厚く, 乾重でほぼ40 - 60ton/haと推定され, 更新上の大きな障害となっている。帯状皆伐更新地における保残帯やササの成立する帯では稚樹の発生が少ないが, ササ除草を行なった伐採帯には著しく多い。しかも林縁付近が常に多く, 実験林設定後発生した2 - 4年生の稚樹が平均7本/m_2以上に達した個所もあるが, 伐採帯の中央付近になるほど少なくなる傾向が認められた。皆伐母樹法更新地ではほぼ全面にわたって稚樹がよく更新しているが, 母樹群付近とか種予の散布が重なり合うようなところに特に多い。択伐更新地はササが除草され, 林床も比較的明るくなっているのに, せっかく発生した稚樹のほとんどは年内に消失してしまうようであった。各更新面の状態別にまとめた稚樹の大きさの頻度分布や年平均生長量から判断して, 密生したササは稚樹の発生ばかりか生長に対しても悪い影響を与えていると思われた。稚樹の根元直径 (D_o) に対する稚樹高 (H) の相対生長関係はバラツキが大きく, また更新面の状態のちがいによってほとんど分離しない。そして同じ単位にしたH/D_o=100の値より小さいものが多かった。ササ除草地に更新している稚樹の各部分量間の相対生長関係からみて, 林内稚樹の同化部乾重や地上部乾重は相対的に少ない傾向が認められる。しかし葉面積あたりの葉乾重は林内外ともほとんど差がない。以上のことからヒノキ天然生林の成立する高冷地の湿性ポドゾル地帯において, 早期に稚樹の発生, 生長を期待するならば, 母樹を樹高の2倍間隔以内に残し, ササのような地床植生をできるだけ除去することがとりあえず必要であると思われた。
著者
瀧本 義彦 佐々木 功
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.258-267, 1986-01-31

振動障害の防止を目的として開発されたツインチェーンソーを実際に伐採現場で使用した場合, 機械としての耐久性と振動加速度値がどのように変化するかをしらべるため, 1984年6月から10月まで岐阜県の石原林材株式会社の伐採現場で広葉樹小中径木の伐倒・玉切り・枝払い作業, スギの間伐作業, ヒノキの伐倒作業等に使用していただき, 使用前・使用後の振動加速度値および使用上の問題点や故障個所について調査した。使用前と使用後の振動加速度の変化は, 常用回転数である7000 - 9000rpmではほとんど見られなかったが, 6000rpm以下では, 前ハンドル上下方向・後ハンドル上下方向と左右方向で増加が見られた。しかし, その値は小さく他の回転数での振動加速度値を超えるものではなかった。また, この期間での使用による防振ゴムの劣化による振動加速度値の変化ははっきりしなかった。使用中に, いくつかの故障が発生したが機械として致命的なものではなく, 簡単な修理でなおった。今後, 改良型のツインチェーンソーについても同様の試験を続けて行きたい。