著者
桜井 芳生
出版者
鹿児島大学
雑誌
人文学科論集 (ISSN:03886905)
巻号頁・発行日
no.51, pp.25-58, 2000

社会学(者)の視点から,昨今の非協力ゲーム論・進化ゲーム論の発展を高く評価し,感謝しつつも,それに不満を感じ,その不満の克服をめざすフレームワークを構想した。社会ゲーム論と暫定的に呼んでみる。ゲーム論に対する大きな不満の第一は,選好関数の所与性である。第二の不満は,意味的事態の軽視である。われわれは,この不満の克服をめざす過程において,通常のゲーム論とは,異なるフレームワークを採用することになった。これは,既存の人気のある社会学諸理論に対しても,あまり類似的でない。われわれのフレームワークはおもに以下のような主要仮説に基づく。「長期効用関数の存在」「社会状態の,非協力ゲーム(ないし,進化ゲーム)的メカニズム(ナッシュ均衡)(ないし,ESS)による,「かなりの程度」の決定」「しかし人間は,選好によるゲーム論的メカニズムでまったく安心してしまうほど「ふつきれた」マシンではない」「すなわち,人間のゲーム・マシンとしての非安心』性」「その非安心性による,いくつかの問題の生起」「問題1,選好の自己不明証性」「問題2,均衡の非一意`性」「問題3,教育における,一見自明な規律,の発生」「問題をごまかすための「自他弁証」としての「意味」の生起」「意味の相互承認としての「物語」の生起」「ゲーム論と社会ゲーム論との検証可能な差異」「短期効用関数のシフトによる,ゲーム論的「均衡」値の移行」「新均衡値へのたおやかな移行が,物語・意味によって,障害せられる場合の存在」「その場合における,新「意味」「物語」の構築作業としての意味間闘争」「世代間「意味・物語」ギャップの生起場合の存在」「世代間文化闘争の,「非論理的」「時間的」決着」。おもに以上である。
著者
細川 道久
出版者
鹿児島大学法文学部
雑誌
人文学科論集 (ISSN:03886905)
巻号頁・発行日
no.60, pp.185-210, 2004
著者
桜井 芳生 サクライ ヨシオ SAKURAI Yoshio
出版者
鹿児島大学
雑誌
人文学科論集 (ISSN:03886905)
巻号頁・発行日
no.48, pp.47-77, 1998-12

文化的希少性の理論の-各論として「美」にかんする理論を構想する。まず,カントの議論をヒントにして,美についての二つの問題を提起する。さらに美にかんする探求をするにあたって,「美人」の問題を糸口とする。美人(美人コンテスト)をめぐって,三つの問題が存在することを指摘する。まずは,この三問題に回答をあたえることを第一の目標とする。「携帯決断機」「流動性選好」などを参考にして,「選好の自己明証性不安」と「選択回避性向」などの仮説を提起する。これらの仮説にもとづいて,ミスコンの三つの問題への回答が提起される。後半において,この前半の議論をふまえて,美にかんする一般的な視点が提起される。おもにカント美学における二つの主張にたいする代替案として,われわれの見解が述べられる。最後に「美とはなにか」という問題に関して,必要性も十分性も満たさないが「いい塩梅のモデル」であるとわれわれが考える命題が提起される。すなわち,美とは,無関心性と,ある程度の普遍性(他者による承認の普遍性)があるかのように見せかけることによって,選好の自己明証性不安と選択回避性向を慰撫するようなコト・モノである,と。