著者
古川 敦子
出版者
共愛学園前橋国際大学
雑誌
共愛学園前橋国際大学論集 (ISSN:2187333X)
巻号頁・発行日
no.17, pp.147-155, 2017-03-31

日本語を学び始めた外国人児童と、その児童を迎え入れる在籍学級の児童が、互いに相手の言葉を使ってコミュニケーションを取るための多言語会話集「はなしてみよう-きになるあの子となかよくなろう-」について報告する。この会話集は、前橋国際大学の日本語教育実習を履修した学生が、授業の課題の一つとして作成したものである。小学校の日本語教室で外国人児童を支援した体験をもとに、児童同士がよく使うと思われる表現を選び、各表現を日本語・英語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語・タガログ語で表記してイラストとともに提示した。本稿では会話集の作成経緯、ねらい、内容、そして実践での使用例について記述する。研究ノート
著者
佐藤 髙司
出版者
共愛学園前橋国際大学
雑誌
共愛学園前橋国際大学論集 (ISSN:2187333X)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-12, 2023-03-31

本論文は、大学における方言の保存・継承活動の1つのあり方を具体的に提示した実践報告及び考察である。方言の保存・継承活動は、方言が各地で異なるようにその地域や教育機関によって異なる様々な課題を有する。本実践における方言かるた制作の過程・手法では、群馬県という地域であることを考慮し小規模私立大学という研究機関に応じた工夫を施すことで課題の解決を試み実践が可能になったと考えられる。本論文では「ぐんま方言かるた」制作の過程を示したうえで、環境(言語・文化)、資金、連携・共同の面から制作の課題を示しその課題解決について方言研究や大学教育との関係から考察を行った。環境(言語・文化)面では、読み札の制作において方言辞典が存在しないことを群馬県方言研究の今後の課題としてとらえる一方で、かるたが盛んな群馬県特有の県民文化や志向が本企画・制作に優位に作用したと考察した。資金面では、その工面が最大の課題であるとし、本制作においてはその目的に地域教育への貢献と学生主体の活動への支援を掲げることで、地域共生と学生主体をモットーに掲げる私立大学において支援が得られやすくなり企画の実施・完成にまで至ったと評価した。連携・共同面では、方言かるたの商品化において異なる研究分野間の連携・共同は欠かすことはできないものであり、それゆえ研究者間の教育観の相違などが課題ではあるものの、小規模大学ならではの密な教員関係を生かした研究者間の連携・共同により課題解決に至ったと考察した。方言の保存・継承を目的とし、方言かるたを制作して商品化する学生プロジェクトを教育界や社会が受容するかということ自体が、方言教育や方言研究にとっては課題である。その意味で本実践は地方の小規模大学からの小さな挑戦とも言えるが、方言を楽しんだり方言に価値を認めたりする現代社会や多様化の時代が、本実践を根底で力強く支えてくれたと考える。
著者
呉 宣児 大沼 久夫 徐 相文
出版者
共愛学園前橋国際大学
雑誌
共愛学園前橋国際大学論集 (ISSN:2187333X)
巻号頁・発行日
no.17, pp.71-90, 2017-03-31

植民地期(日帝強占期)に、日本人が韓国に渡って集住し、日本人町を形成していた。植民地解放(終戦)後、日本人は突然日本に戻ることになり、そこには韓国人が入り住むことによって、日本的な雰囲気は自然に色褪せたかわざと壊してきた経緯がある。しかし、近年韓国では「暗い歴史も歴史として直視する」という考え方を持ち、かつての日本人集住地区や日本的な建築物を修理・復元して観光や教育の素材として活用する動きが出てきた。代表的には、西海岸の群山市と東南部海岸の浦項市の九龍浦地域である。本研究ノートでは、1)慶尚北道の浦項市の九龍浦地域を取り上げ、フィールドワークによって見えてきた現況を整理し、2)かつての日本人集住地区・建築物の再整備について現地の行政と住民が考える意味や議論されている内容を考察することを目的とする。これらの作業は、かつての日本人居留地である九龍浦に住んでいた人々(日本人と韓国人)や現在そこに住んでいる人々にとっての原風景を検討していくための準備過程として意義がある。研究ノート