著者
中島 俊介 楠 凡之
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要, 人間関係学科 = Journal of the Faculty of Humanities, Kitakyushu University.Human Relations (ISSN:13407023)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-29, 2008-03

本研究は,森田療法理論(森田 1960)に基づいて大学生における「健康な自己愛」を検討するための新たな尺度を作成することを目的とした。研究1では健康な自己愛の状態を測定するための尺度項目を検討した。その際には、現在の自己愛理論の「2種類の自己愛」の枠組み(中山ら 2006)を参照しながら,これに自己愛の健康性を示す視点として森田療法理論の「自己へのとらわれ(我執)」(北西 2001)の知見を加えて新しい視点からの自己愛尺度の作成を試みた。これを大学生217名に施行し,因子分析を行ったところ,3つの下位概念に対応する3因子が得られた。研究2では大学生150名を対象として,今回作成した自己愛尺度の信頼性と妥当性を検討した。アルファ係数,再検査信頼性係数などの結果から高い信頼性が確認された。また,NPI(自己愛人格目録)・シャイネス尺度・自尊心尺度などの関連から妥当性が確認された。以上の結果から、本邦大学生の「健康な自己愛」を検討していくための新しい尺度の信頼性と妥当性が確認されたと考えられる。