著者
須藤 廣
出版者
北九州市立大学都市政策研究所
雑誌
都市政策研究所紀要 (ISSN:18814107)
巻号頁・発行日
no.1, pp.31-41, 2007-03

観光地は非日常性を求める観光客と日常性を生きる住民との交換関係で成立している。前近代においては具体的で互酬的であった観光客と住民の関係性は、近代以降の観光においては観光商品として一般化された取引の中に解消され、民族文化や風習その中での人間関係までもが消費の対象となる。タイの「首長族」の観光化はその特徴を典型的に持ったものとして理解できる。このような現代観光文化における「まなざし」の非対称性を十分理解した上で、本来あるべき観光客と住民の相互的なコミュニケーションのあり方の再構築が求められている。
著者
須藤 廣
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.11, pp.39-55, 2013-03

アジアの山岳少数民族における観光化と文化変動について、ベトナム・サパの例と中国・麗江の例を比較しながら、主にその共通点について考察した。行政の関与の程度に差があるものの、両方に共通する点は、少数民族の主体的関与の欠如であり、結果現れた裏舞台の表舞台化であり、またさらなる裏舞台の人工的創出という事態である。こうして、少数民族の文化は人工的に再構成され、観光に適合するものだけが展示され、観光に適合しない文化(主に生活文化)は排除されてゆく。
著者
須藤 廣
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 = CIEE journal, the University of Kitakyushu (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.12, pp.187-199, 2014-03

東京ディズニーランドの文化やシステムは、虚構を虚構として消費するポストツーリズムの原型である。またそれらは、「他者性」へと向かう解放的な力と、「他者性」をコントーロールし抑圧する「柔軟な権力」の両義的な特徴を持っている。
著者
神田 孝治 遠藤 英樹 須藤 廣 松本 健太郎 吉田 道代 高岡 文章 藤巻 正己 藤木 庸介 濱田 琢司 鈴木 涼太郎 山口 誠 橋本 和也
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,近年におけるツーリズム・モビリティの新展開に注目し,それを特定の地域に焦点をあてるなかで検討するものである。その際に,「科学技術の進展とツーリズム」,「ダークツーリズム」,「サブカルチャーとツーリズム」,「女性とツーリズム」,「アートとツーリズム」,「文化/歴史遺産とツーリズム」という6つのテーマを設定している。本年度は初年度であったが,各テーマに関連するいくつもの成果が生み出された。特に,「科学技術の進展とツーリズム」に関わるものは,神田孝治・遠藤英樹・松本健太郎編『ポケモンGOからの問い─拡張される世界のリアリティ』(新曜社, 2018)を筆頭に,多数発表されている。本研究課題の成果が,モバイルメディアがもたらす新しいツーリズムに関する研究を牽引するものとなっていると考える。また,研究会も積極的かつ有益な形で実施された。第1回研究会は,観光学術学会や人文地理学会地理思想研究部会と共催するなかで,Durham UniversityのMike Crang氏による“Traveling people, things and data: borders and global flows”と題した講演とそれを受けたシンポジウム「ツーリズム,モビリティ,セキュリティ」を実現した。第2回研究会は,観光学術学会との共催によるシンポジウム「おみやげは越えていく―オーセンティシティ・ローカリティ・コモディティ」と,和歌山大学・国際観光学研究センターのAdam Doering 氏による“Mobilities for Tourism Studies and “beyond”: A Polemic”と題した講演会を実現した。こうした取り組みが,モビリティに注目した先端的な観光研究の知を,広く関連する研究者に提供する役割を果たしたと考える。